第24話 姉須戸・トンプソン・伝奇とアルネウラとアラニス


「皆様おはようございます。本日は千葉の方にある森タイプのFランクダンジョンにきております」


『配信始まった!』

『おはようございます、姉須戸先生!』

『今日は別のダンジョンか』

『一つのダンジョン最後まで攻略しないの?』


 姉須戸がドローンカメラに向かって挨拶し、何処のダンジョンにいるのか説明する。


「私としては様々なモンスターを見てみたいので、あまり一つのダンジョンを集中してというのはないですね、すいません」


『気にしないでください』

『モンスター学の先生だからか、攻略より知識やサンプルデータ優先なのかな?』

『今日はどんなモンスターでてくるのかな?』


 姉須戸が配信視聴者の質問に答え終えると、ダンジョン探索を開始する。


「早速モンスターを見つけました。あれはアラニスと言う昆虫型のモンスターです」


『いきなり虫かあ』

『サイズ的にキモいな』

『私探索者じゃないけど、森ダンジョンは無理かも』


 姉須戸が指差す方向には、大型犬サイズの蜘蛛の胴体に枯れたパイナップルがくっついたような臀部、頭部は大きな花が咲いており、中心部には触覚が二本生えてうねうねと動いていた。


「あの触覚が目の役割をしており、音波や熱などを感知して周囲を認識しております。触覚を排除すれば盲目状態といえます」


『あまり近づきたくない外見』

『わかっていても狙うの躊躇するな』


 姉須戸は杖で触覚を指して解説する。


「触覚を攻撃するときは素早くしてください。戸惑っていると、あんな風になります」


 姉須戸は足元にあった石を拾い、アラニスの触覚を狙って投げる。


 するとアラニスは、触覚に石がぶつかると全身を緊張させたようにビクッと反応し、頭の花が閉じる。


「アラニスは攻撃を受けるとあのように防御します。花を閉じると少々固くなるので倒しにくくなります」


 姉須戸は解説しながらアラニスの様子を伺う。


『姉須戸先生、モンスター倒さないの?』

『あのモンスターも中立よりとか?』


「あ、そうじゃないです。アラニスも肉食系モンスターで、獲物を認識すれば積極的に襲ってきます。ただ、感知範囲が狭いです。あと、アラニスには別のモンスターを見つけてもらいたいので放置です」



 姉須戸がモンスターを攻撃しないのを疑問に思った視聴者達から倒さないのかとか、モンスターがノンアクティブなのかと質問が書き込まれていく。


 姉須戸は一つ一つコメントを確認しながら質問に答える。


『ふーん。ところでアラニスの攻撃方法は?』

『ドロップ品もお願いします』


「はい、アラニスの攻撃方法は前足の爪による斬りや刺し攻撃がメインです。ドロップ品は目玉やキチン質の殻などです。お、目的のモンスターを見つけたようです」


 姉須戸がアラニスの攻撃方法やドロップ品について解説していると、アラニスが突然地面を掘り出す。


『地面を掘ってる?』

『地面に隠れてるモンスター?』

『何がでるのかな?』


 少し離れた場所からアラニスが地面を掘る様子を伺う姉須戸と配信視聴者達。


 三分ほどアラニスが地面を掘り続けていると、突如地面から白い手が飛び出てアラニスの花弁の頭を掴む。


『うおあああっ!?』

『びびったー!』

『急にホラーやめろ!!』


 突如現れた白い腕に視聴者達が悲鳴を上げる。

 アラニスは掴まれた両腕から逃れようと暴れる。

 地面から生えた腕はアラニスが暴れる力を利用して地面から這い出できた。


『大根?』

『大根だな』

『人面大根だ』


 配信視聴者達が言うように、アラニスに引っ張られて地面からでてきたのは人間の子供サイズの大根。

 大根の胴体に顔が描かれ、手足がはえていた。


「あれはアルネウラですね。アラニスとアルネウラはお互いを餌と認識して争いあっています」


『え? アルネウラ?』

『嘘ですよね? アルネウラって女性の姿をした植物じゃ?』

『うぞだ!!!!!!』


 姉須戸が大根のモンスターをアルネウラと呼ぶと、配信視聴者達の一部が嘘だと叫ぶように書き込んでいく。


「あー、一般的なファンタジーのアルネウラは女性の形をした花ですが、ダンジョンモンスターの方はあの大根です」


『神は死んだ!』

『神:その程度で殺さないでくれます?』

『ききとうなかった』


 そんな阿鼻叫喚にもにたコメントが書き込まれていく中、アルネウラとアラニスは争いあう。


「アルネウラですが、特殊能力はなく、普通に殴る蹴る噛みつくだけです。火炎弾ファイヤーボール!」


 姉須戸が魔法を唱えると、バスケットボールサイズの火の玉が現れて、争いあうアラニスとアルネウラの元に飛んでいく。


 そして着弾した瞬間、落雷のような轟音と共に爆発してアラニスとアルネウラを巻き込む。


「アルネウラのドロップ品ですが、根子と大根がドロップします。根子は滋養強壮高い漢方薬の元で、大根は一般的な大根より美味しくて栄養満点です」


『アルネウラのイメージが………』

『凄くコレジャナイ感』

『今日の探索はギャグ回とか?』


 爆発が収まると、アラニスとアルネウラのモンスターの姿はなく、ドロップ品だけポツンとあった。


 姉須戸はいつものようにドロップ品を解説するが、配信視聴者達の反応は今一つだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る