第20話 姉須戸・トンプソン・伝奇とアローバード
「おや? どこかで雷雨でも発生しましたかね?」
Eランクダンジョン第二階層の高原を探索する姉須戸。
探索中遠くで雷鳴が聞こえて足を止めて、天気を確認するように空を見上げる。
『ダンジョン内なのに雷雨とか発生するの不思議』
『数多くの学者がダンジョンの謎に挑戦しては匙を投げていたな』
『上の階層は灼熱の砂漠、下の階層は極寒の雪国とかあるもんな』
『しかもちゃんと生態系が生まれてたりするしね』
『画面経由でみてる限りでは雷雨とかなさそうだね』
姉須戸が天気の話をすると、配信視聴者達はダンジョン内の自然や生態系についてコメントを書き込んでいく。
「ふむ………少し音の発生源を調べてみますかね」
今でも時折聞こえてくる雷鳴音に向かっていく姉須戸。
「あれはアローバードですね」
雷鳴が聞こえてきた場所にたどり着くと、そこには二匹の巨大な鳥のモンスター達が縄張り争いしていた。
縄張り争いをしていたとのはどちらも同じ種族のモンスターで、全長は約三メートル。
その体は蛇のような胴体で長い首と尻尾、胴体部分に上下に翼が一対ずつの合計二対のXのような翼。
特に特徴的なのは玉虫色に光る碧色の羽毛はその美しさに目を奪われそうになる。
その嘴は鋸のようにギザギザで、嘴の上と下に一対の目があった。
尻尾部分には刺のような物があり、帯電している。先ほどから聞こえていた雷鳴は、しっぽから放たれた電撃の音のようだった。
『でかっ!』
『羽毛が綺麗だな』
『と言うか、モンスター同士争うの?』
「はい、モンスターの中には縄張りをもったり、弱肉強食の生態系を構築したりするのもいます。特にアローバードは縄張り意識が強く、同族でもああやって争います」
配信視聴者の一人が質問すると、姉須戸はアローバード同士の争いを杖で指差しながら解説する。
「ギエエエエーッ!!」
アローバードの縄張り争いは、片方が喉を鋸のような嘴で噛みつかれて絶命し、霧散化したところで決着がついた。
縄張り争いに勝利したアローバードはここで姉須戸の存在に気づいたのか、ギロリと二対の瞳で睨むと、尻尾の先端から雷撃を飛ばす。
「
姉須戸は慌てることなく魔法を唱えて、魔法の盾でアローバードの電撃を防ぐ。
「アローバードの攻撃方法は尻尾からの電撃と、嘴による噛みつきです。電撃にはチャージ時間が必要なので、連続で放たれることはありません。また、前兆として帯電した尻尾をこちらに向けてきますので回避し易いかと思われます」
『わかっていても、電撃って回避できるのか?』
『そこは気合いとタイミング?』
『金属防具つけてる時は、電撃攻撃してくるモンスターとは戦うな(戒め)』
姉須戸が解説している間、アローバードは電撃のチャージ時間を稼ごうとしてるのか、上空を旋回する。
『と言うか、空飛んでる敵どないせえと?』
『基本は射撃攻撃』
『降りてくるのをまつ』
『対空手段の有無で飛行モンスターの討伐難易度って変わるよな』
「さて、電撃の回避方法ですが、魔法防御をもたない方は、こうしましょう」
電撃のチャージが終わったのか、アローバードは旋回をやめるとまた尻尾を姉須戸に向けて、電撃を放つ。
姉須戸は落ち着いた様子で解説しながら、杖を地面に突き刺して飛び退く。
すると、杖は避雷針の役割を果たして雷撃を受け止めて地面に流していく。
「アローバードですが、基本的に彼らは地上に降りることはありません。常に風や浮力を発生して死ぬまで降りないと言われています」
『うげ、それだと射撃武器がないと詰みじゃん』
『射撃武器があっても飛んでる敵を当てるのって難しいんだよね』
『飛行モンスターは低ランクにとって鬼門なんだよな』
姉須戸はアローバードの生態を視聴者に解説しながら隙を伺う。
アローバードはまた雷撃をチャージしようと上昇して旋回を始める。
「魔法が使えるなら、これがお勧めです。
姉須戸は魔法を唱えて地面を叩くと、地面か無数の岩の鎖がアローバードに向かっていき、拘束すると地面に引きずり降ろす。
「こうすればアローバードはほぼ無力になります。
姉須戸が魔法を唱えると、エネルギー状の回転鋸が現れて、アローバードを両断する。
「アローバードのドロップ品はどれも高額です。特に尻尾の発電部位が高く、羽は美術価値もありますが、地に降りることなく飛び続けることから縁起物のお守りとしても人気です。特に受験シーズンは買い取り額が上がりますよ」
『俺も受験の時親が買ってきた』
『航空会社勤務してるけど、神棚に飾ってる』『そういえば相撲取りの化粧まわしにも使われてたな』
絶命して霧散化したアローバードのドロップ品を解説する姉須戸。
配信視聴者のコメント欄ではアローバードの羽のご利益にあやかった人達の書き込みが目だった。
「さて、探索を続けましょうか」
姉須戸はアローバードのドロップ品を回収すると、杖を何度かチョンチョンとつついて帯電してないか確認していた。
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