第19話 姉須戸・トンプソン・伝奇とアヴァランチ
Eランクダンジョンの第二階層である高原を歩く姉須戸。
「モンスターがいなければ本当に自然豊かな観光名所になりそうですねえ」
『ほんとほんと』
『絶景』
『でもモンスターと戦うには色々と大変そうな地形』
時折立ち止まっては方角を確かめながら、岩影で手持ちのメモに周辺地形などダンジョン地図を書き込んでいく姉須戸。
「ん?」
ダンジョン地図を書き込んでいると、パラパラと岩の上から姉須戸に向かって小石が流れ落ちてくる。
「しまった! アヴァランチかっ!!」
姉須戸がハッとした顔でモンスター名を叫ぶと同時に岩影から飛び退くと、姉須戸が先ほどいた地点に小石の土砂が流れ落ちてくる。
『何事っ!?』
『落石?』
『姉須戸先生無事ですかー?』
『なんかモンスターの名前を言ってたような?』
『あかん、土煙で何も見えへん』
小石の土砂によって起こった土煙にドローンカメラが巻き込まれて、視聴者側からは音だけで何も見えない状態が続く。
「
土煙の中、姉須戸は魔法を唱えると風の壁が発生して土煙を飛ばしていく。
『あ、見えた!』
『配信事故にはならなかくてよかった』
『と言うか、なんだあれ? 岩の塊が動いてね?』
『岩でできた蜘蛛?』
「あれはアヴァランチと呼ばれるモンスターです。特殊能力として重低音のノイズで岩など崩して、それを操って獲物を生き埋めにして殺そうとします」
土煙が完全に消え去り、姉須戸に襲いかかってきたモンスターの姿が露になる。
そのモンスターは視聴者が言うようにボーリング玉サイズの岩でできた蜘蛛のような姿だった。
蜘蛛と違うのは頭部に当たる部分からは触手が一本這えており、その触手の先端には一つの目がギョロギョロと動いていた。
姉須戸が説明したようにアヴァランチの周囲には先端が尖った岩が無数に浮き上がり、姉須戸に向けて飛んでいく。
姉須戸は自分に向かって飛んでくる岩の塊を右へ左へ飛んだり、杖で叩き落としたりしてアヴァランチの攻撃を回避していく。
「あの見た目から連想できるように、物理防御力は高いです。剣などの攻撃だと刃こぼれする可能性があるので、鈍器などで叩きましょう」
姉須戸はアヴァランチに近づくと、杖を振り下ろして叩く。
「ギギー!!」
『効いてる?』
『あの手の防御力高そうな敵には鈍器だな』
『刃筋とか考えなくていいのは強みではある』
姉須戸が杖でアヴァランチを叩くと、アヴァランチは岩と岩をこ擦り合わせたような鳴き声を上げ、まるでサーフィンするように土砂崩れに乗って姉須戸から逃げようとする。
「アヴァランチの特殊能力を防ぐ方法は幾つかあります。まず土や岩などがない場所に誘導します」
姉須戸は逃げるアヴァランチを追いかけながら、特殊能力を防ぐ方法を解説する。
『いや、この階層じゃ無理だろ』
『そのモンスターのためだけに隔離エリア作ったり、追い込んだりするのは現実的じゃないなあ』
『モンスターもバカじゃないから、自分が不利になる場所に逃げ込んだりしないだろ?』
配信視聴者達は土がない場所に誘導する手段に対して否定的なコメントを書き込んでいく。
逃げるアヴァランチは何度も石礫を姉須戸に向けて飛ばすが、姉須戸はそれを杖で叩き落としながら追いかけていく。
「アヴァランチの特殊能力ですが、実は能力を発動する条件はあの足がどれか一つでも地面についてることです。
姉須戸は解説しながら魔法を唱え、両手で何かを持ち上げる仕草をする。
すると、まるで透明な巨大な手がアヴァランチを持ち上げたように、アヴァランチが宙に浮かぶ。
「はい、このように地面との接地面をなくすと簡単に能力を封印できます」
アヴァランチの足が全て地面から離れると、アヴァランチを運んでいた土砂や周囲に浮かんでいた石礫が力を失ったように動かなくなる。
『ほほう、そんな手があったのか』
『持ち上げるのに礫を掻い潜って近づく必要があるけどな』
『いや、つり上げ式のトラップとか仕掛けたらいけなくないか?』
魔法で宙に持ち上げられてじたばたするアヴァランチを見た視聴者達が思い思いにコメントを書き込んでいく。
「因みにアヴァランチの腹部分はとても柔らかく弱点なので、そこを狙うと一撃です」
「グギッ!?」
姉須戸は宙に浮かぶアヴァランチに近づくと、杖で腹部分を突き刺す。
杖は容易にアヴァランチの腹部に突き刺さり、絶命したのか霧散化していく。
「アヴァランチのドロップ品で高額なのはこの目玉です。分野が違うので詳しいことはわからないのですが、レーザーの収束率でしたかな? とにかくその分野で高く買い取られています」
『ほー』
『今買い取り関連のサイト覗いたけど、狙いにいくのもありなお値段だった』
『目玉以外にも、胴体部分からはレアアースが出る可能性があるとかで、場合によっては大当たりとか』
姉須戸がドロップ品に関して説明してると、補足するように別の視聴者が胴体部分の価値についてコメントを書き込む。
「補足ありがとうございます。それではもう少し探索を続けますね」
姉須戸は視聴者に向かってお辞儀をすると、ダンジョン探索を再開した。
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