第18話 姉須戸・トンプソン・伝奇とアドヴェスバ
「おや、次の階層への階段ですね。早速おりてみましょう」
Eランクダンジョンの探索を続けていた姉須戸は次の階層へ続く階段を見つける。
Eランクダンジョンの第二階層は、例えるならアメリカのグランドキャニオンを連想するような岩山や渓谷が広がる高原だった。
『おー、絶景!』
『モンスターがいなければ観光名所になりそう』
『空と太陽があるけど、あれって擬似的な何かなんだよね?』
『モンスターを何とかして、ダンジョンに住む難民計画も昔あったな』
ドローンカメラは空気を読んだのか、上空に高く上昇すると、360度回転してパノラマのように第二階層の風景を配信する。
「さて、この階層ではどんなモンスターがいるんでしょう………おっと、もう来たようです」
姉須戸が視聴者に向かって語りかける最中、上空を見上げる。
姉須戸の視線につられるように、ドローンカメラもファインダーを上に向けると、姉須戸に向かって上空から何かが急降下してくる。
「あれはアドヴェスバですね。人間の顔のような頭部を持つ巨大蜂です」
姉須戸に向かって飛んできたのは、アドヴェスバと言う人間サイズの蜂モンスター。
蜂の胴体に人間の女性のような頭と言う姿だが、目は虫らしく複眼で、口も昆虫独特の口だった。
ヴヴヴヴと独特の羽音を鳴らして、前足で姉須戸につかみ掛かろうとする。
「アドヴェスバの攻撃方法は獲物を掴み上げて、臀部の針を何度も突き刺します。かなり力が強いので、捕まらないように気をつけてください!」
姉須戸は横に飛び退いてアドヴェスバの掴みかかりを回避する。
アドヴェスバは掴みかかりが避けられると、また急上昇して攻撃のチャンスを伺う。
『この地形的に飛べるモンスターが有利だな』
『第一階層なら天井があるから、飛行モンスターも対処できるけど、こういう野外はきつい』
『別のモンスターだけど、延々と空を飛び続けてこちらの攻撃当たらなくて困った』
『荷物になるけど飛び道具持ち歩け』
アドヴェスバのヒットアンドアウェイ攻撃をみた配信視聴者達が思い思いにコメントを書き込む。
「因みにアドヴェスバの針には麻痺毒があり、刺されて動けなくなると巣に連行されて、肉体に卵植え付けられて苗床になるので、もしもの時は覚悟してください」
『そんな情報いらねー!』
『昆虫系モンスター、これがあるから嫌なんだよなー>苗床』
『ホラーじゃん』
姉須戸がアドヴェスバの毒について話すと、視聴者達からは悲鳴などのコメントが書き込まれていく。
「対処法としては、急降下にあわせてカウンターか、射撃武器で迎撃ですかね。アドヴェスバは昆虫系モンスターの割には耐久力が低いので、攻撃さえ当たれば以外と簡単に倒せます。
姉須戸が杖を銃に見立てて魔法を唱えると、杖の先端からエネルギー状の矢がアドヴェスバに向けて放たれる。
アドヴェスバは軌道を変えて自分に向かって飛んでくるエネルギー状の矢を回避する。
外れたエネルギー状の矢は大きく弧を描いてUターンすると、アドヴェスバの背中を穿つ。
追尾能力があると思っていなかったのか、アドヴェスバは魔法の矢を受けた瞬間驚愕の表情を浮かばせ、きりもみしながら地面に激突する。
「アドヴェスバのドロップ品で人気なのがハチミツです。あと、レアドロップ品でロイヤルゼリーがあり、百グラム一万円で取引されています。残念ながら今回はハチミツもロイヤルゼリーもありませんでしたね」
姉須戸が墜落したアドヴェスバの元に向かうと、アドヴェスバは霧散化してドロップ品だけになっていた。
「魔石と毒針ですね。毒針は扱いに気をつけてください。うっかり刺さると麻痺しますよ」
『ドロップ品の収納も考えないと、中でぐちゃぐちゃになって価値が下がる事故があるんだよな』
『どのドロップ品を持ち帰るか、誰が持つかも重要』
『お金に余裕があればポーター雇うのもアリなんだよな』
視聴者がそんな話をコメントに書き込んでいる間、姉須戸はドロップ品を回収して、探索を再開した。
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