第11話 姉須戸・トンプソン・伝奇とアーリーフ


 アーヴィックを倒した姉須戸は第二階層の森エリアの探索を続ける。


「ふむ………めんどくさいのがきたようですね」


『え、姉須戸先生がめんどくさいなんて評価するモンスターがいるの?』

『Fランクダンジョンでそんなモンスターいたっけ?』

『ちょっと見てみたいような見てみたくないような』


 森を探索していた姉須戸が何かに気づいたように足を止めると、難しい顔でめんどくさいと呟く。


 配信視聴者のコメントは、姉須戸の呟きに対してのコメントが次々と書き込まれ、姉須戸が言うモンスターを見たがる。


「いました、あれです」


 姉須戸は杖でモンスターがいる方向を指す。


『なにあれ?』

『え? どこ?』

『心霊映像!?』

『うわ、こいつか! 納得だわ』


 ドローンカメラが姉須戸が指す方向を捉えると、森の木々の間に誰か立っているような人影が見える。


 配信視聴者達はその姿が見えたり見えなかったりと困惑したり、その見た目から心霊映像だと騒ぐ。


「アーリーフと言う非実体型のアンデッドモンスターです」


 姉須戸は視聴者にもアーリーフと言うモンスターの姿が見えやすいようにと近づく。


 姉須戸がアーリーフに近づくと、アーリーフの姿がはっきりと目視できるようになる。


 その姿はコートを着た足のない男性のような人影そのもの。

 姉須戸の姿を認識したのか、どうやって発声しているか不明だが雑音のようにぶつぶつと独り言が聞こえてくる。


『まじで心霊映像やんけ!』

『こわっ!?』

『この意味不明なブツブツ声がまじで怖い(ミュート)』

『姉須戸先生、このモンスター何がめんどくさいんですか?』


 配信視聴者達もはっきりとアーリーフの姿を画面越しに確認すると、怖いと言うコメントが連投されていく。


「めんどくさい理由のひとつは、アーリーフは非実体と呼ばれる物理攻撃が効きにくいモンスターです」


『え? どうやって倒すの?』


「魔法攻撃が一番手軽ですが、チームにいない場合はダンジョンで産出される冷たい金属と呼ばれる金属で作られた武器、もしくはマジックシルバーオイルを武器に塗布して攻撃してください」


『今検索したけど、冷たい金属製の武器高くね?』

『ナイフで三十万はちょっと………』

『マジックシルバーオイルも使い捨てアイテムで八万近い値段してる』

『駆け出しには痛手すぎるなあ』


 姉須戸がアーリーフのような非実体型モンスターの倒しかたを解説すると、配信視聴者達はネットで検索して、その値段に悲鳴をあげる。


「そして、アーリーフのめんどくさいところは攻撃方法です。アーリーフの体の何処かと自分の体が触れるとドレインタッチと言う能力が発動して生命力を奪われ、副次効果としてネガティブな感情を送り込んできます。攻撃を食らいすぎると重度のうつ病を発症します」


『嫌すぎる!』

『魔法使える奴いないと、無駄に高いアイテムで対応しないといけなくて、ダメージを受けると鬱病になる? 戦いたくねえ』

『たしかにめんどくさいですねえ』


 アーリーフはブツブツと小声で独り言を繰り返し、姉須戸に触ろうと近づく。


 姉須戸はドローンカメラ目線で解説をしながらアーリーフから距離を取ってライフドレインから逃れる。


「最後に、アーリーフは………倒してもドロップ品が美味しくないんですよ 魔法の矢マジックアロー

「ァァァォ………」


 姉須戸が魔法の矢でアーリーフを倒す。

 断末魔までブツブツと小声だったアーリーフは霧散化して魔石だけをドロップする。


『今アーリーフの魔石買い取り価格見たけど、三千円だった』

『おいおい、オイル使ったら大赤字じゃねえか!』

『遭遇したら戦闘回避一択だな』


 姉須戸の配信動画を見ている視聴者達はアーリーフに対してほぼ満場一致の意見をコメント欄に書き込む。


「アーリーフは足が非常に遅いので戦闘回避は容易でしょう。さて、探索を続けますかね」


『積極的に狩る理由がないな』

『めんどくさい外れモンスターだね』


 姉須戸はアーリーフのドロップ品を回収すると、そう言って第二階層の探索を再開した。

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