第10話 姉須戸・トンプソン・伝奇とアーヴィック
「おや、湖ですね」
『結構きれいな湖だな』
『透明度が凄い』
『ダンジョンじゃなければ観光スポット』
姉須戸がダンジョン第二階層である森を探索していると、巨大な湖にたどり着く。
視聴者達もその湖の透明度と景観に感嘆の声を漏らす。
「シャアーッ!!」
「おっと!」
姉須戸が湖の水面を覗き込もうとすると、牛サイズのビーバーによく似たモンスターが襲いかかる。
姉須戸は咄嗟にバックステップでモンスターの攻撃を回避する。
牛サイズのビーバーモンスターは攻撃が外れたことを理解すると、湖にUターンして水面下を回遊して姉須戸の隙を伺う。
『びびった!』
『なにいまのっ!?』
『めっちゃでかいビーバー!?』
「今のはアーヴィックと呼ばれる水陸モンスターですね。外見は牛サイズのビーバーで、水辺に近づいた獲物を不意打ちで水中に引きずり込みます」
配信視聴者コメント欄では、突如現れたアーヴィックの不意打ちに驚いたコメントが書き込まれていく。
姉須戸は乱れた衣服を整えながら、アーヴィックについて解説を始める。
「主な攻撃方法は爪と牙です。かなり力も強く、過去の記録では軽自動車すら引きずり込んだとか」
『車すら引きずり込むとか、人間とかイチコロじゃん』
『下手に重い鎧きてたらヤバいな』
『泳いでる影見えるけど、かなり速いよな? 泳いで逃げれそうにないぞ』
ドローンカメラは上昇して、湖を上空から湖を見下ろすように撮影する。
すると、湖にはアーヴィックと思われる影が姉須戸が近づくのを待ち構えるように回遊していた。
「簡単な対処法としてはアーヴィックが生息する水場に近寄らないこと。アーヴィックは水場から滅多に出ることがなく、追いかけようともしません」
『ほうほう』
『逃げるのは簡単なんだ』
『でもドロップ品とか欲しい時はどうするんですか、姉須戸先生?』
空撮してるドローンカメラを見上げながら姉須戸が解説していると、視聴者から討伐方法の質問が書き込まれる。
「逆にモンスターの習性をこのように利用するのです。
姉須戸が魔法を唱えると、水辺に姉須戸の立体映像が現れる。
アーヴィックはそれを本物と誤認したのか一目散に陸へと近づき、虚像の姉須戸に襲いかかる。
アーヴィックの攻撃は、魔法で作られた虚像でしかない姉須戸の体をすり抜けて地面を削るだけだった。
だがアーヴィックはそれが偽物だと理解できないのか、何度も虚像の姉須戸を爪で引き裂こうとしたり、噛みついたり、のし掛かって押し潰そうとする。
「アーヴィックの獣毛は金属のように固く、物理攻撃が効きにくいですので、魔法で倒します
「ギャビッ!?」
姉須戸が魔法を唱えると、アーヴィックの頭上に巨大な氷柱が形成され、アーヴィックの頭部に落下して貫通し、アーヴィックは絶命する。
「アーヴィックのドロップ品で売れるのは毛皮です。撥水力も高く、金属のように固く、それでいて軽いので革防具やマントの素材として重宝されます」
『姉須戸先生、魔法が使えない場合は撤退した方がいいですか?』
『確かに近接ではやりあうにはリスクが高いな』
姉須戸は絶命して霧散化したアーヴィックのドロップ品について解説していると、配信視聴者が質問してくる。
「そうですね、事前にアーヴィックと戦う前提でダンジョンに挑むのなら、人の形をしたマネキンを使うのも手です」
『え? それ通用するんですか?』
『あー、疑似餌的な感じ?』
『結構単純なんだな、アーヴィックって』
姉須戸が質問に答えると、視聴者達は困惑したり納得したりと三者三様のコメントを書き込む。
「爆発物を扱えるなら、マネキンに爆弾仕込んで食べさせて、内部から破壊も手ですね」
『なるほど』
『うーん、爆薬コストとドロップ品売却で利益出るかな?』
『絶対にドロップ品欲しいとかでない限りは俺はスルーかな』
そんな話を視聴者としながら姉須戸は第二階層の探索を再開した。
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