第7話 姉須戸・トンプソン・伝奇とアルケミストビートル
「視聴者の皆さんこんにちは。本日もFランクダンジョンの探索を続けながら、モンスター解説を続けたいと思います」
『こんー』
『こんにちはー』
『姉須戸先生のモンスター講義始まったー』
『戦闘見ながらモンスター解説する配信はここですか?』
『アーカイブから来ました』
姉須戸がダンジョンに潜ると配信が始まり、待機していた視聴者のコメントが書き込まれていく。
「登録者や同時接続者が増えるのは嬉しいですね」
姉須戸が言うように、配信チャンネルの登録者は遂に三桁に到達し、今現在も配信が始まったとチャンネル視聴者の数が増えていく。
「おや、珍しいモンスターがいますね」
『姉須戸先生が言う珍しいってなんだ?』
『レアモン?』
『何処だ?』
『なんだあれ?』
姉須戸が指差す先にはボーリング玉サイズの黒い金属で出来た昆虫が複数いた。
蚊によく似た頭部に蜘蛛の胴体と脚、特徴的なのは蜘蛛の腹の部分がガラス玉になっており、ガラス玉の中には液体が満たされていた。
「あれはアルケミストビートルと言われる機械系モンスターです。主な攻撃方法は蚊の頭部にある口器を獲物に刺して、注射のようにガラス玉の中にある液体を注入します」
『あのサイズで刺されたら重症だろ』
『中の液体もヤバイけど、口器とか不潔そう』
『刺される処想像しただけで鳥肌たった』
姉須戸がアルケミストビートルの解説をしていると、アルケミストビートルも姉須戸の存在に気づいたのか、襲おうと近づいてくる。
『遅いけど、集団で蠢く虫はきつい』
『俺なら悲鳴あげるね』
「さて、アルケミストビートルと戦う時に気を付けないといけないことが一つあります。それは可能な限り距離をとることです。距離を空けないといけない理由は………理由は
姉須戸はアルケミストビートルとの戦闘での注意点を解説しながら魔法を唱える。
すると、エネルギー状の矢が産み出されて、アルケミストビートルの群れの一匹に向かって飛んでいく。
アルケミストビートルの一匹に魔法の矢が命中したかと思うと、アルケミストビートルの腹のガラス玉が破裂して、中の液体が四方八方に飛び散る。
飛び散った液体が別のアルケミストビートルに付着するとジュワっと音を立てて煙が吹き出し、ガラス玉が溶けてまた四方八方に飛び散り、液体から引火したり、漏電したり、凍結したりと連鎖して広がっていく。
「アルケミストビートルのガラス玉は一定の衝撃を与えると割れて、中の液体が四方八方に飛び散ります。アルケミストビートルは自爆を前提にしたモンスターです」
『自爆タイプっ!?』
『殺意たけーな!』
『連鎖して破裂してる中にいたら死ぬな』
『仮に生き延びても重症かと』
『逆に距離空けて攻撃したら、勝手に自滅してくれる?』
『事前情報なかったら、多分近接戦仕掛けてるな、俺』
アルケミストビートルは結局全員自爆に巻き込まれて全滅しており、ドロップ品の魔石が現れる。
「アルケミストビートルのドロップ品は基本魔石のみですが………破裂させることなく倒せたら、液体入りのガラス玉がドロップします」
『いやどうやれと?』
『こう達人みたいな割れないように倒す技術があるとか?』
『姉須戸先生、どうやってガラス玉ドロップさせるの?』
姉須戸がアルケミストビートルのドロップ品について解説すると、配信視聴者の一人が姉須戸に質問を書き込む。
「はい、アルケミストビートルの頭部が起爆装置になっているので、ガラス玉が破裂するより早く一撃で頭部を切り落とすことです」
『理論はわかった』
『でもできる自信はない』
『当たらなければ理論やめてもらえます?』
『できる人いるの? てか、それだけの価値あるの?』
姉須戸がガラス玉を破裂させない方法を伝えると、できるかと配信視聴者からつっこみが入る。
「ええ、売却するには危険物取り扱い免許が必要ですが、液体の量と種別によって価格は変わりますが最低買取価格が六桁です」
『ぶっ!? Fランクダンジョンモンスターで六桁スタート!?』
『あ、わからない人のために言うとFランクの雑魚モンスター魔石一つが四百円前後です』
『やっす!?』
姉須戸がアルケミストビートルのガラス玉の買取価格を伝えると、配信コメント欄がざわつく。
『姉須戸先生が珍しいといったのも、乱獲とかされて個体数が少ないとか?』
「はい、別の国ではアルケミストビートルを専門で狩る探索者もいますよ。さて、回収も終えましたし、探索を続けましょうか」
姉須戸は視聴者達と雑談しながらダンジョン探索を再開する。
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