第5話 姉須戸・トンプソン・伝奇とアーミーエイプ
『姉須戸先生、質問!』
「はい、何てすか?」
暗殺蔓を倒してダンジョンの森エリアを探索する姉須戸は配信視聴者のコメントを見て足を止める。
『モンスター名って誰が決めてるんです?』
「メインは探索者組合の鑑定スキル持ちがモンスターを鑑定して名前を調べます」
質問者はモンスターの名称を誰がつけているのか質問し、姉須戸は質問に答えたりするのが楽しいのかニコニコしながら答える。
「一昔前は新発見のモンスターを見つけた冒険者が命名権持ってましたが、鑑定スキル持ちがモンスターの固有名称を使うことが多くて廃れました」
『そういえば、古い辞書だとモンスター名称が一致していないのがあったな。誤植か何かと思ってたけど、命名から鑑定名に変わった頃かな?』
配信視聴者と交流をしながら探索を再開する姉須戸。
ある程度歩くとピタリと止まり、木の枝を凝視する。
『ん? 特になにも見えないな?』
『擬態か?』
視聴者達もドローンカメラ越しに異変を探そうとしているが見つからない。
「
「ギギャ!?」
姉須戸が魔法を唱えると、エネルギー状の矢が現れ、とある木の枝に向けて飛んでいく。
すると、何かに命中して悲鳴と共に木から森迷彩柄の大きな猿が落下する。
「むっ! アーミーエイプですね! 皆さんはスピーカの音量を下げてください!!」
『おk』
『りょ』
『なんで?』
姉須戸が木から落下したモンスターの姿を確認すると、スピーカーの音量を下げろと叫ぶ。
姉須戸が叫ぶと同時に森の木々から大音量で猿の鳴き声が木霊する。
『うるせえええ!』
『音量最低にしてこれかよ!』
『みみがーっ!?』
「アーミーエイプの大合唱です。長時間聞いていると恐慌状態に陥る可能性があります。そして、これが攻撃の開始合図でもあります」
「ホッキャアアアアッ!!」
姉須戸の解説の途中、四方八方から森迷彩模様のオラウータンサイズの猿達が姉須戸に襲いかかってくる。
「
『こええええっ!』
『動物系モンスターパニック映画やん!』
『それ以上にそれを防げてる姉須戸先生が凄い』
姉須戸が魔法を唱えると、ドーム型のバリアのようなものが展開され、アーミーエイプの攻撃を防ぐ。
アーミーエイプ達はバリアに群がって、破壊しようと叩いたり引っ掻いたり、バリアの中にいる姉須戸に牙を見せて威嚇する。
配信視聴者達はバリアの内部からその映像を見て悲鳴をあげたりしていた。
「アーミーエイプの攻撃方法は爪や牙による物理攻撃です。その攻撃方法でもっとも気を付けないといけないのはこれです」
姉須戸はバリアを維持しながら、ポケットから生きた鶏を取り出すと、バリアの外に投げ捨てる。
すると、アーミーエイプが群がり、その中の一匹が鶏を抱き抱えて、両腕で押し潰す。
「あの抱きついての締め付け攻撃は絶対に回避してください。市販されている金属の鎧でも容易に圧壊させる腕力があります」
『えっぐ!』
『グロい』
『まだ浅いエリアでこんな強力なモンスターいるのっ!?』
姉須戸はアーミーエイプの攻撃方法を解説する。
「回避方法として、アーミーエイプは絞め殺した獲物の体液を浴びると、あのように毛皮に馴染ませようと乾かします。水など液体をかけて毛皮を濡らすことで、アーミーエイプの締め付けから逃げ出せます」
姉須戸の解説通り、鶏を絞め殺したアーミーエイプは鶏の血を毛皮に馴染ませるように両手で返り血を広げたり、日当たりのいいエリアで毛皮を乾かそうと日向ぼっこを始める。
『他の群れが怒ってるのに、濡れた奴は居眠り始めたぞ』
『そんな方法があったんだ』
『流石モンスター学の先生!』
「それでは、反撃といきましょうか。
姉須戸が魔法を唱えて地面を蹴ると、間欠泉のように地面から水柱が吹き出して、群がっていたアーミーエイプ達を押し退けていく。
『濡れたら満足なのか? さっきまでの狂暴さがなくなって皆日向ぼっこ始めたぞ』
配信視聴者が言うように、姉須戸の魔法の水柱で濡れたアーミーエイプ達がさっきまでの怒りの形相が穏やかな表情になって、体を乾かそうとする。
「
姉須戸が魔法を唱えると、巨大な毬栗のような物が現れて空間に浮かぶ。
姉須戸がパンッと手を叩くと、それに連動するように巨大毬栗が弾けて、四方八方に刺を飛ばす。
「ホギャッ!?」
「キギャッ!?」
刺は身体が濡れて日向ぼっこしていたアーミーエイプ達を次々と串刺しにして倒していく。
「ギキャーーー!!」
辛うじて致命傷を逃れたアーミーエイプ達が甲高い叫び声をあげたかと思うと、生き残り達が逃げていく。
「アーミーエイプの主なドロップ品は、毛皮や爪、あとお肉ですね」
姉須戸は
「特に売れるのは毛皮です。防具になめした毛皮を張り付けると、森限定でカモフラージュ効果があるんですよ。お肉は………食品衛生法の関係で買い取られません。個人で処理してください」
『日本は食料関連のドロップ品に関する法律が厳しいからなあ』
『まあ、何処の国とは言わないが、ご近所でモンスター肉が原因の食中毒やらなんやら発生したからな』
『あれはモンスター肉がというよりは、純粋に国の品質管理が杜撰だっただけのような?』
『でも食料問題のある国とかだとモンスター肉が人気らしいな』
『東南アジアではモンスター肉の屋台があった、意外と旨かった』
姉須戸がモンスター肉に関してコメントすると、モンスター肉に関して配信視聴者達の意見などが次々と書き込まれていく。
「さて、回収も終わったし、探索を再開しますか」
姉須戸はそういうと、インバネスコートの埃を払ってダンジョン探索を再開した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます