第15話 これからと立会人

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 ボンボニ・エール卿との決闘から一夜明け柱時計の鐘の音で目を覚ますと時刻は昼を回っていた。

「はぁ……」

 あくびをし目蓋を擦りつつベッドの脇に置いてある硝子瓶からコップに水を注ぎ飲み干し水の入った瓶とコップを元の場所に置く

「……ッツリオベル」

 旋律の様な声が聞こえ視線を向ける。

「もうダメ……いい加減疲れた……」

 すると其処には滑らかで透き通る様な美しい肌を露わにしシーツに包まり眠るリゼッタの姿があった。

 あまりにも美しいリゼッタの背中に唾を飲み込み触ろうと手を伸ばす。

「御主人さまお目覚ですか?」

 背後から突然に語りかけるメイドのクロエの声に驚きながらも視線を向けた。

「いつから其処にいた?」

「今さっき来たばかりです」

 本当にそうだろうかと首を傾げているとクロエは頭を下げ話し出す。

「昼食のご用意が出来ておりますので着替えてお嬢様と一緒に食堂までおこしください」

 クロエの言葉を聞くと急にお腹が空いた。

 だから直ぐに行くと返事をしようとした時にメイドのクロエは立て続けに語りかける。

「あとまだシ足りないのでしたら昼食を食べてからせっかくの料理が……」

「直ぐに行く!!」

 顔を赤くし返事を返すとメイドのクロエは暫しの沈黙の後に瞬時にリゼッタに駆け寄った。

「お嬢様も宜しくお願いしますよ?」

「ッツ!?」

「失礼します」

 リゼッタはクロエの言葉に驚き体を震わせる。

 そうしてクロエは呆れた様子で部屋を後にした。

「昨晩は悪かった……疲れていただろ?」

 クロエが部屋を出ていき二人っきりにされる。

 ましてや二人とも下着も身に着けていない生まれたままの姿だ

 気まずい空気にならない方がおかしい。

「いいえ私も戦いの後で興奮して寝れませんでしたし……それに……」

「それに?」

「いつもより激しく求めて頂けて嬉しかったです」

 リゼッタは頬を赤くしシーツで顔を隠しながら彼女は言う。

 正直そんな彼女が可愛くてしょうがない。

「その……ボンボニ・エール卿の事が終わるまでは我慢していて……それで……」

「大丈夫……激しいて言ったけどリオベルの優しさも感じたからそれが嬉しかったの」

「……なら良かった」

 今までリゼッタと何もしなかった訳ではない。

 しかし今まで以上に昨夜はリゼッタの事を求めていた自分がいたのだ。

「……リオベルさま」

 凛としたリゼッタの声が響き視線を向ける。

 すると彼女はシーツを離し近寄ると唇と唇を合わせ優しい口づけを交わした。

「おはようございます」

 微笑みながら言うリゼッタに対して俺は堪らず彼女を抱きしめる。

「あぁ……駄目ですよ着替えて食堂に行かないと……」

「わかってる」

 本当は身体と身体を重ねたいがスッと抱きしめた身体を離してリゼッタに向かって言った。

「おはようリゼッタ」

 リゼッタを見ながら俺は挨拶を返す。

 幸せだ本当に幸せだと喜びを噛み締めた。

「朝からアツアツね?」

「ですね?」

 刀に宿る幼女の精霊『朧』とブローチに封印された黒翼の女神は現界しこっちを見ながら言う

「現界してんじゃねぇよ」

 呆れる二人を見ながら俺は苦言を漏らす。

 そうしてベッドから降りリゼッタと共に着替えるとクロエの言う通り食堂に向かった。

「私が死ぬまでには子息の姿が見れそうです」

「ですね二人とも好き者同士みたいですし……」

 食堂で昼食を食べてある背後で執事のハイゼンはハンカチで涙を拭い隣に立つメイドのクロエは呆れている。

「お前ら使用人の分際で口が過ぎないか?」

「驚きです……この程度の戯れ言で私達を卑下するなんて……」

「リオベル……やめたほうが良いわ私はクロエと言い合いしても勝てた事ないから……」

 リゼッタが静止するほどメイドのクロエは口が立つのだと思いこれ以上の追求を止め昼食を食べる。

 そうして一段落した後にお茶を飲みながらほっと一息つく。

「これからどうなさるんですか?」

「さて……どうするかねぇ……」

 ボンボニエール卿との決闘に勝利し十年前に殺された両親の仇を取った。

 正直その後の事は何も考えていない。

「リゼッタは……社交界に興味はあるのか?」

「社交界ですか……」

 貴族は領地の管理の他に社交界に出る事が仕事である。

 領地間の物品取引の架け橋の為に人間関係を構築するのだ。

「いいえ……義妹のアリアを結婚させる時に散々関わりましたが私の肌には合いませんでした」

「俺もな……今の領地を守って行ければ良いし面倒事はたくさんだ」

「ただ私達が治めていた領地が少し気がかりです」

 此処に嫁ぐ前にリゼッタは実権を握っていた実母を追放し義妹のアリアと共に領地を治めていた。

 しかし飢饉の発生と共にリゼッタの家は家計が回らなくなり隣の領主ルマリ・エールと婚約し領地を統合した経緯がある。

「そうか……気がかりか……」

「別に大丈夫よ私は此処に嫁いだ身……今の領民の為に心を砕くのが貴方の仕事だから……」

「なら良いんだが……」

 正直な所は本当に心残りなのだろう。

 リゼッタの心音を聞けば明らかだ。

「ところでリゼッタ……昨日の事で一つ聞きたい事があるんだけど……」

「なに?」

「昨夜の立会人は知り合いなのか?」

 俺はリゼッタに問いかける。

 昨夜決闘が終わった後に現れたボンボニ・エールの死体を片付けたと言う赤毛の粛清仮面騎士をリゼッタは知っているようだったからだ。


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