本能

それを手に持ったとき俺は誰かに囁かれているように感じた。

ライドーによると気にしない方が良いらしい。

「じゃあ、準備はいいな?」

そういうとライドーはまた大鳥の姿になり、俺を吊り下げて飛んだ。

彼は、街に中央にある、一際目立つ大木のような建物へ向かった。

中に入るとすぐに出迎えがいた。

「待っていましたよ。あなたたちならここへくると思っていました。」

彼はうなぎのような奇妙な形の剣を持っていた。

俺の返事を待たずに低い姿勢で走り出し、俺の脚に斬りかかった。

「ぐ...!」

痛みを感じて本能が動き出した。

真っ白になった頭に脈が宿る。

槍が空間を滑り、刀から身を守る。

二つの脅威が互いに死を押し付けようと、乾いた音を鳴らす。

勝負は拮抗してると思われたが、だんだんを押されてゆく。

このままでは負けてしまうだろう。

「ライドー!!」

「おう!」

俺はわざと槍を捨てて倒れるように前転した。

刀が後頭部スレスレを通り、髪が切れる。

そして、俺の後ろにいたライドーが思いっきり、拾った槍の腹で顔面を叩いた。

クラミツと名乗った男が白目を剥く。

「ロージィはその剣を奪って戦ってくれ!彼一人で守っている訳では無いからね!イヅはおそらく倉庫に閉じ込められてる!」

俺たちは警備員をなぎ倒しながら進んだ。

倉庫の扉の前に見知らぬ男がいた。

「あらま、早かったじゃなーい。貴方達が探してたのはこれでしょー?」

どさ、という音と主に上半身と下半身が足元に転がった。

どす黒い錆が断面から流れ出しており、すでに腐った匂いがした。

「それじゃあアタクシはこれで。」

オカマが消えた瞬間、上半身が話し始めた。

「くっつけて、早く。」

「うお!無事だったのか。」

「さすがにイドスで切られたときは肝を冷やした。」

「こんなに出血して大丈夫なのか?」

「安心なさい。偽物だから。」

イヅが服をめくりあげると、腹は透明な水色の液体のようなもので満たされていた。

その液体同士は近づけるとくっついた。

俺たちが倉庫を出ると、さっきまで気絶していた男が立っていた。

「侵略者ども、このまま逃げられると思わないで下さいよ。外からやってきた生き物は内側から身体を蝕む毒になる。ここで好き放題させる訳にはいかなのです!ある日、故郷を破壊したテクノロジーが自然と動物共に生きてきた村を否定し、全員が効率と時間に縛られることになった。たとえ変えられてしまった場所だとしても、二回も奪われるもんですか!」

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