時の国
次の日、俺たちが初めに見たのはたくさんの建築物だった。
まるで森のように生えている摩天楼は、雲を切り割き、空を貫かんとばかりに高く天に突き刺さり、視界を埋めつくした。
全て同じような形状で、大量の円柱が重なり歪な一つの塔を作っており、てっぺんには先の尖った三角屋根。
側面は全てが曇った黒いガラスで、明かりは見えるものの中の様子はわからないようになっている。
とても暑く、空気は重く、地上は少し霧のようなモヤがかかって見える。
俺たちはまず生活のために必要なものを揃えることにした。
「見て、これ!」
イヅが見せたのは宙に浮く銀色の球体だった。
「なんだ?それは。」
ライドーは興味深そうに銀球を見つめた。
「アカウントを登録すれば誰でも利用出来る万能の道具らしいの!最近では大人も子供もこれを持ってて、連絡、情報収集、仕事、学習、娯楽まで、全てこれ一つあれば何でも出来て、これなしではここでの生活は不便極まりないんだとか......」
「イヅはそれ使っちゃダメよ。」
珍しく饒舌なイヅルヒに対してアルの反応は非常に冷淡だった。
「えー!なんでよ!」
「だって絶対騙されるもの。」
結果俺とライドーがこの銀球を利用することに決まった。
アルはあまり乗り気でなかったのか、イヅルヒの妨害を受けるとすぐにアカウントの登録を諦め、遊び始めた。
どうやらこの銀球、本当に万能らしい。
起動し検索をしてみると、たくさんの情報が頭の中に流れてきた。
『トキノ国』......非常に長い歴史と、高度な文明を持ち、犯罪が少なく住みやすいことで有名な国。
その秩序は、単一民族国家であるからだと思われるが、それよりも、この国のほぼ全てを管理しているという超人工知能『紅鏡』によるものが大きい。
この国全てを監視し、ネットワークを支配する『紅鏡』の影響力は凄まじく、未然に防止した犯罪は星の数ほどあるのだとか。
「ひとまずこれでいいか。」
その後はしばらくの分の食料品を買って仮の家へ帰った。
食事をとった後すぐに、明日からの打ち合わせが始まった。
「では、私たちは出稼ぎに来た兄弟という設定にする。その中でロージィと私は労働者として働き、アルとイヅは仕事を探している無職として留守番をしてもらう。」
「どうしてそうするのか聞いても?」
俺の問い対して彼はこう答えた。
「なんとなくだ!」
まじかよ...
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