第13話 お仕事キター!



 冒険者ギルドからのお金よりも早く、お金になりそうなお仕事発注きましたよ!

 サンクレルのハンザ工務店棟梁のハンザさんからの直でのお仕事キター!


「ハンマーやバール。小型の魔導鋸や魔導ドライバーなんかも収納できそうだな。小さいポケットはビスやナットなんかも入れられそうだ」

「これは大きく作ったんですけど、工具二種類用とか一種類用とかも作ります?」

「オレのところはそういったのは使わないが、日曜大工用なら売れるかもしれんな」


 はわわ、需要アリかも!? 作ります作りまーす!!


「えっとえっと、ハンザさん、ここにベルト通しを付けたタイプとかは⁉ そしたらウェストベルトの長さ調節とかの手間が省けるんじゃないでしょうか?」

「あ~そっちの方がいいな!」


 そんなわけで、ハンザさんと新人さんと一緒に一度サンクレルの街に戻る。

 生地や糸を買い足したいし、マチを補強する留め金とかも欲しい。

 あと、しばらくハンザ工務店さんの人が来るから、お昼ぐらいは用意したいから食材と~あと、家具の補修の材料とかも欲しい。(これは倉庫にもあるけど、一応お店のも見てみたい)

 作業着つなぎのまま、ツールバッグに巾着リュックを担いでハンザ工務店さんにお邪魔すると、従業員、職人さん達がぎょっとした感じでわたしに注目する。

 あ、やばい。みんな好感度が上昇していくのわかる……。


「おい、おめーら、アリスさんが可愛いからって見惚れるのはほどほどにして、オレの話も聞けよ」


 ハンザさんの野太い声に、みんなビシィっと背筋を正す。


「アリスさん、それちょっと外してくれねえか?」

「はい!」


 え~ウェストバッグ(ツールバッグ)外すだけなのに、なんでハートマーク飛びそうになってるのかな?

 魅了スキルのせいか……うん、知ってた。

 ウェストバッグ(ツールバッグ)をハンザさんに渡す。


「アリスさんが自分用に作ってたやつなんだがな、こいつをウチの方でも作ってくれって依頼をかけたんだ。購入希望者を確認したいんだが?」


 ハンザさんがそう言うと、みんなわたしのウェストバッグを手にして、実際に工具とか入れて確認する。

 装着しようとしたけど、ウェスト部分が回り切らなくて、みんな残念そうだけど、ハンザさんがベルト通しをつけてもらうと説明していた。


「うわーなにこれ夢のツールバッグ!」

「これはいいね!」

「欲しいっす! めっちゃ欲しい!!」

「ユジンとバリューのチームは今、外に行ってるが欲しがるだろコレ」


 わいわいとウェストバッグ(ツールバッグ)を囲んで従業員の人達のテンションが高い。

 それを見てハンザさんが、中年の男の人に尋ねる。


「うちの店の人数分でいいか? 経理担当」

「35人分ですね」

「だそうだ、アリスさん」

「は、はひ、う、うけたまわりましたっっ!」


 お金が~とか言ってられないよ、やっぱりお仕事用の生地とか買い足さないと!


「明日は屋根と、いらない残置物整理に人を回しておく。大型家具とかも使わないものはウチのやつらに運ばせろ」

「はいっ、ありがとうございます! じゃ、わたし、生地を買いに行きますので! これで失礼します!」

「ちょっと待った、あと店の窓、今サイズがないからな。この木枠を嵌めておけ。物騒でしょうがねえ」

「あ、ありがとうございます!」


 ハンザさんから窓サイズにカットされた木枠を渡される。そうなのよ、一部、割れてる窓があって、昨日は建物の門扉を始め周辺に物理結界魔法をかけてたんだよね。

 セキュリティに不安はあったけど、自分の結界魔法を信じたのよ。

 わたしはそれをリュックに入れる。


「……なんだそれ、アイテムバッグだったのか」

「はい。なんでも入るので」

「もしかしてだが、そいつも作ったのか?」

「はい作りました」

「アリスさんはあそこで、そういうのを作って、売ってみちゃどうだね」

「はい、でも、一番最初にハンザ工務店さんからお仕事を貰ったので、ツールバッグの作成を当面ガンバリマス! では失礼します! 明日からよろしくお願いします!」


 わーなんか忙しくなってきたぞ!

 ツールバッグ用の生地とか糸とか針も買って、お昼用の食材とか多めに買って……ハンザ工務店さんの人が通いでしばらく来るからね。

 わあん。ミシン欲しいっ! でも最新の魔導ミシンはお値段がちょっと……。しょうがない。裁縫スキルさん、頑張って働いてね!

 あと、商業ギルドと冒険者ギルドに相談しないと、お店の申請とかしないとダメなのよね、そっちの方にもいかないと!


「アリスさん?」


 わたわたとサンクレルの街を走り回っていたら、ルイスさんに声をかけられた。


「あ、ルイスさんこんにちは!」


 建物の浄化結界の時にキャリーしてもらった魔法使いルイスさんとサンクレルの街でばったり出会う。


「こんにちは……?」


 コテンと小首を傾げて、苦笑するルイスさん……ええ、そうですね、「こんにちは」っていうより日が暮れそう……日が暮れる!?

 慌ててわたしは空を見上げる。

 空は宵闇、夜の群青が西のオレンジ色の夕日を追い立ててる。

 もう~やだ~。おうち帰らないと! あの家まで歩いて一時間半だよ! もう真っ暗夜道になっちゃうじゃないですかー!

 昼間はいいけど、灯なんかない。


「急いで帰らないと!」


 わたしがそう叫ぶと、ルイスさんは苦笑する。


「送ってあげる。『うさぎの足跡亭』でしょ?」

「いえ、わたし、昨日、例の物件に引っ越しまして」

「は?」


 ルイスさん、驚いた声を上げる。ほんのちょっとキャリーしてもらって、ランチを奢ってもらっただけなんだけど、落ち着いた印象の『ザ・ウィザード』って感じの人から「は?」とか言われると……。

 自分のおっちょこちょいなところが露呈して恥ずかしい!

 だって、だって、サンクレルの街は買い物天国なんだもの~。

 必要なものいっぱいあるし~。そして全く関係ない、なんか欲しいものもあって、ついうっかりウィンドウショッピングじゃないけどやっちゃうし~。そしておまけにギルドに行きそびれてるし~。


「ちょっと待って、今からあの物件に行くの?」


 いやー! 改めて呆れるように尋ねないでー!!

 わかってます! わかってますからー!!

 ルイスさんは空を見上げる。


「確かに、あの道はアリスさんの浄化がかけられてるから安心と言えば安心だけど、真っ暗だし、道を反れたら……まずいでしょ。この街みたいに街灯ないんだよ?」


 ごもっとも。

 そしてなんていうことでしょう、きゅりゅきゅるきゅる……って、おなか鳴っちゃうのはどうして!? どうしてなの⁉

 そしてまたこれがルイスさんに聞かれたよ!!

 ルイスさん横を向いて口元を手で覆って肩震わせてるし!!

 イケメン魔法使いに笑われてしまう……わたしって! わたしって!! 



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