第7話 時空神の贖罪を受けし元聖女とは、なんぞや。
目を開けると、浄化魔法後は部屋の中まで森からの木漏れ日が入り込んでる。
おお~。いい感じじゃん。東側なんかウッドデッキ仕様になってるから、余計に光が入って明るいなあ。
きっとそっちにも椅子とテーブルを出してた時もあったに違いない。
こうして建物から出て、肩越しに見ると、人が通らない場所なのに造り自体は凝ってるなと改めて思う。
思うんだけど――。
視界になんかパラメーターが表示されてる?
――時空神の贖罪を受けし元聖女が浄化をかけた物件
聖域化:LV1
結界:LV1
備考:時空神の贖罪を受けし元聖女の管理が必要
……え……。
なにそれえええ。
思いっきり振り返って二度見しちゃったわ。
この大陸に来て1か月ちょっと。
対人で好感度パラメーターが詳細すぎるな、鑑定か? なんて思ったよ?
ここにくるまでに対峙したスライムを見た時もパラメーターが表示されたけど、好感度パラメーターはモンスター相手だからこうなるのかな? とも思っていたけど、今、この物件を確認した時に視界表示されるこれは……やっぱ鑑定!? それよりなにより。
――時空神の贖罪を受けし元聖女……。
この気になるフレーズよ。
元聖女は置いておいて、「時空神の贖罪」って、これって、ざまあされるヒロインに転生転生また転生を繰り返したわたしに対して、神様がごめんよ、テヘペロってことなのかしら?
そんな建物を仰ぎ見ているわたしの背後からパチパチと拍手が。
前庭に出ると、『蒼狼の風』のメンバーさんだけじゃなく、多分メルクーア大迷宮都市からサンクレルまでキャリーしてくれる冒険者パーティーの人達かな? それっぽい人達が増えている。
「アリスちゃん、歌上手じゃん~! ていうか、神聖魔法とかまじで使えるのねえ」
「浄化魔法初めて見た……」
「あんな風になるのか」
『蒼狼の風』のメンバーの皆さんが口々にそういう。
一応ね、この転生転生また転生を繰り返して、聖女役は何回かやったから、こう見えても、
目を閉じてないと、浄化魔法の光は眩しかったから目を閉じてたし、ここの家主の霊との会話に集中してたからな~。どういう状況になってるのかはわかってないんですけども!
「みなさんが見守ってくださってたから、安心して浄化魔法かけることができました! ありがとうございます!」
一曲歌ったアイドル路上ソロライブ感……。
自らアイドルとか言っちゃうと、また強制力発動で自分のクビを締めそう。
というかこの思考が強制力?
「アリスちゃんが浄化魔法使ってる間にメルクーア大迷宮都市の方から、帰りのキャリーをしてくれるパーティーがきてたよ~」
シャムさんが『蒼狼の風』の隣にいる4人組パーティーを手で示す。
「あ、どうも、サンクレルまでよろしくお願いします。プリースト見習いのアリスです」
帰りのキャリーをしてくれるパーティーの人達に挨拶をする。
わたしが浄化魔法をかけてる間に、キャリーの引継ぎは終わっていたようだ。
「じゃ、俺達はここで」
「また会おうね、アリスちゃん」
「元気でな」
『蒼狼の風』のメンバーの皆さんが口々にそう言って、彼等はメルクーア大迷宮都市へと歩き出す。
わたしはそんな彼等に手を振って、お礼を言う。
「ありがとうございました! 皆さんも頑張ってくださーい! ご安全に!」
彼等に手を振り、別れると、今度はサンクレルへキャリーしてくれるパーティーの人達に向き直る。
「本日はよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると、新たなパーティーの人達は、もごもごと口ごもる。
「あ、ああ」
「うん」
「よろしく」
あらら、冒険者なのにコミュ力ない? とか思って彼等を見ると……。
ピコンと好感度パラメーターが表示される。
ああ、目の前の冒険者パーティーの皆さんは、このわたしの魅了にやられてシャイな感じになってしまってる。
わたしの魅了スキルはまだまだ元気いっぱいですか。仕事しちゃってますか。そうですか。
そんな彼等の個々のレベルは『蒼狼の風』のメンバーよりちょい上だった。
前衛二人、遊撃一人に後衛一人って王道なバランスのパーティーだね。
「僕達は『シー・ファング』4人組のパーティーだ、サンクレルまでキャリーをすることになってる。よろしくね僕はリーダーのルイス」
そう自己紹介をしてくれた魔法使いのルイスさんだ。
さすが、魔法使い様には状態異常、魅了は効かないのかな? パラメーター自体も見えないって、すごくない? ……うん、おかしくなりそうなら、積極的にレジストして下さい。
「オレはタンカーのザイル」
「アタッカーのギブソン」
「サブアタッカーのシュルツ」
お、ちゃんと自己紹介してもらえたぞ。
「はい、お世話になります。わたしはプリースト見習いのアリスです」
わたしがそう言うと、ルイスさんが首を傾げる。
「……プリースト見習い……?」
「一か月ちょっと前にコーデラインズ大陸のサリダス教会から修行の為にやってきました!」
ってそういうプロフィールなんですよ。
でも魔法使いだったら……あの浄化した建物鑑定してるかも。
だって、わたしが浄化に失敗した場合の保険としてわたしのキャリーに抜擢されてる可能性あるよね? ルイスさんがあの建物を鑑定してた場合……『時空神の贖罪を受けし元聖女』のフレーズとかばっちり鑑定できてるよね?
どうやって誤魔化そうかって思ったけど、わたしただのプリースト見習い。
鑑定なんて知らなーいって風を装って、敢えて元気よく、はじめてのクエストをやった感を醸し出す。
「ここにきて冒険者としての初めてのクエストだから緊張しちゃって。えへへ」
「すごい浄化魔法だったよ。サンクレルの冒険者ギルドのイリーナさんから、もし、浄化に手間取っていたらフォローよろしくって、通達があったけど、僕の出る幕なかったよ」
ひゃーイリーナさん、万が一を考えて、そこまで手配してくれてたのか! さすがバリバリキャリアウーマンな冒険者ギルド職員! そんでやっぱ鑑定されてる可能性が高まってきた。やばい!
「でも、みなさんはメルクーア大迷宮都市のダンジョンに行ってきたんですよね⁉ お疲れ様です。迷宮ってどんな感じですか?」
わたしが尋ねると、ザイルさんギブソンさん、シュルツさんが応えてくれる。
「うーん……まあ、階層ごとに、雰囲気が違うよ」
「オレ達は、『グランド・カーレント』っていうクラン所属のパーティーでね」
「クラン本部はサンクレルにあるから」
「今回特殊アイテムを入手したからクラン本部に報告をする為、一端、サンクレルに戻るところなんだ」
よしよし、魅了に慣れてくれたのかな?
クランってあれでしょ、パーティ同志が集まって所属してる大きな会社っていうか同盟っていうか……そういうやつよね?
やっぱ迷宮大陸、冒険者がわさわさいるだけあって、クランもあるのか。へー。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
『シー・ファング』冒険者パーティー
ザイル(タンカー)「え~何この子、めっちゃ可愛い~」
ギブソン(アタッカー)「ダンジョンアタックの帰りだけど……」
シュルツ(サブアタッカー)「可愛い子の護衛とかサイコー」
ルイス(魔法使い)「うちの連中……この子魅了スキル持ちだってわかってない……あと何この鑑定……」
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