第5話 スライムごときに接待討伐をさせてもらいました。
さて、サンクレルを出発し、メルクーア大迷宮都市との丁度中間地点。
例のアンデットが出るという元、お食事処の建物まで同行してもらった。
スライムとかアルミラージとか時折でてくるけれど、そこはやっぱりベテラン冒険者パーティーなのか、なんなく討伐して進んでいく。
こ、これぐらいなら、わたしでも倒せるんじゃないかな?
「あの、わたしにも倒すコツを教えてください!」
「え~アリスちゃん倒せるのかな~?」
「ゆくゆくは、冒険者活動もしたいと思ってるので!」
一応、武器として用意してあるのは錫杖なの。
身分的には修行僧ってことだからって、国を出る時にユリシア様と殿下に用意してもらった。そして衣裳は白に近い薄いグレーの法衣にローブという、いで立ち。
シャムさんが、ダグラスさんとボイルさんに尋ねる。
「どうする? ダグラス、ボイル」
「うーん……」
「まあ試しにやらせてみたら?」
ボイルさんは唸り、ダグラスさんも許可してくれた。
「一体だけだよ~」
シャムさんに言われて、わたしはうんうんと頷く。
お試しで、やってみたかったのよ!
アルミラージやコボルトなんかを倒しつつ進んでいくと、スライムが一体だけ現れた。
「よし、これならいけそうだな」
ダグラスさんがOKを出してくれたので、わたしは前衛のポジションに出て、スライムを見つめると、好感度パラメーターみたいな画面。
スライム
HP;10
MP:5
得意技;融解。
弱点:火に弱い。打撃で倒せる。
お、おお、鑑定のようになってる! モンスター相手だから好感度じゃないのかな?
わたしが構えるとダグラスさんが声をかける。
「アリスさん、一撃を入れてコアを破壊できなければ、武器は素早く離して。再度振り下ろす。そのゼリー部分に武器を突っ込んだままだと溶かされるから」
「はいっ!」
なるほど、コツは素早い一撃でってことなのね!
「えい!」
ゼリー部分が錫杖の威力をぽよんと緩衝してくる。
でもコツってあたった!
素早くまたふりあげて、もう一度錫杖を振り下ろすと、ゼリー部分の緩衝が一撃よりも効果が薄れて、ガチンってコアに当たった!
振動が、錫杖から手に伝わるとスライムは消え失せた。
シャムさんとボイルさんとダグラスさんが「おお~」といいながら後衛の位置で三人ならんで拍手してくれる。
はは、接待討伐っていうのかしらこれ。
「ありがとうございました。さ、行きましょう」
「気が済んだかい?」
ダグラスさんに言われて頷く。
「えへへ、まあこれからおいおいやってきます。今日は浄化のお仕事ですから」
「あらあ~慎重ね」
シャムさんが意外そうにそう言う。
「それでいい、他所の大陸からやってきたプリースト見習いなら、そのぐらいの慎重さがあっていいだろう」
ボイルさんがぼそっと呟く。
「まあ、そうよね~……あ……」
「お……」
シャムさんが相槌を打った直後、三人はピリっとした雰囲気になる。
もちろん、わたしもだ。
さすが獣人、気配が違うのがわかるのか。
視界に見えるのは、今回の依頼であるお食事処の建物だ。
建物自体ボロいっていうのもあるんだけど、雰囲気が暗~い。いかにも出ますよって感じ。
「あれだな」
「はい」
建物に近づくと、建物自体にも好感度パラメーター!?
お食事処:亡くなった店主がゴーストになって憑りついた建物。
ほほう。やっぱ前の主がゴーストになってるのか~。
スケルトンやゾンビなら『蒼狼の風』のみなさんでやっちゃうだろうけど、ゴースト相手だと物理攻撃がきかないからなあ。
「アンデッド系ならではの空気だな」
ダグラスさんが呟く。みなさん獣人だから、建物に近づくと異様な雰囲気を感じとったのか毛が逆立ってた。
わたしはパーティーのみなさんを置いて一人で建物の中に入り、中をくるりと見渡す。
ほんとにお食事処~っていった感じの用は店舗スペースだ。椅子やテーブルも残ってる。
そんな中でひときわ暗い感じの場所はカウンター内。多分ここで店主が亡くなったのかな。
カウンターの内側の洗い場の縁に最後に指をかけた手形が残ってる。
「ちょっと~アリスちゃーん」
心配そうなシャムさんの声にわたしはカウンターからでてドアから顔を外に覗かせる。
「あ、はーい。大丈夫です。『蒼狼の風』のみなさん、ここまでありがとうございました! 浄化しちゃいますんで、あとはメルクーア大迷宮からのキャリーしてくれるパーティー待ちになりますから、皆様もメルクーア大迷宮都市まで、道中お気をつけて!」
ぺこりと頭を下げると、皆さんちょっと心配そうに顔を見合わせる。
「あのさあ、アリスちゃん、ちょっと心配だから、アリスちゃんが浄化できるかどうか見てていいかしら?」
パーティーのみなさんはうんうんと頷く。
スライムごときに接待討伐ですからね。
心配されちゃうかぁ。
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