第4話 なんと冒険者依頼を受けることになりました!



 この迷宮大陸にきて1か月ちょっと。

 お店が忙しいからアルバイトを雇ったのに、逆に忙しくさせてしまい……。

 でも売り上げは美味しいってことで、週一のバイトになってしまったわたし。

 掛け持ちしていたお針子さんのバイトをメインに受け持っていました。

 掛け持ちバイトしていてよかったけど、やっぱり収入減は痛いよ。

 そんなわけで、一応冒険者依頼ないかなーとお針子バイト前に冒険者ギルドに立ち寄るのがここのところ日課だったりする。

 冒険者の仕事はバイトよりも断然、料金がいいのよねえ。

 減らされたバイトの収入の補填になりそうな報酬の依頼はないかな~。

 わたしにもできる簡単なお仕事……、依頼掲示板の前で依頼を探していたら、受付のイリーナさんに声をかけられた。


「アリスさん!」

「あ、イリーナさん。おはようございます」

「よかった~アリスさんに適した依頼があるんですよ!」


 ナ、ナンダッテー!


「アリスさんは白魔法っていうか白魔術っていうか、神聖魔法を使えるのですよね?」

「はい」

「実はこのサンクレルとメルクーア大迷宮都市の間に店があったのですが、主人がどうやら亡くなっていてですね……」


 なんでも、そのお店は、お食事処にしては微妙な立地。

 そりゃそうだよね。腕に覚えありな冒険者の人が歩いて三時間で隣町に行けるのに、そこの中間地点にお店があっても、スルーされますって。

 なんでそんなところに店を建てたのよ。

 で、主人が亡くなって物件を放置してたら、そこ、幽霊が出るんだとか。

 この付近で薬草採取が最近できなくなったのも、その主人が亡くなってアンデッド(幽霊)になったのが原因じゃないかってことなのよ。

 店の近くの森が初心者用の薬草採取スポットだったんだって。

 そこで今回わたしにまわってきたお仕事は、そのアンデッドになっちゃった主人が徘徊するその場所を浄化するという依頼内容なの。

 わたしも一応、修行僧ということになってるし、神聖魔法持ちだからそういった浄化はできるんじゃないかなと。そうすれば、浄化したそこに再び薬草が植生して、わたしレベルでも薬草採取の依頼を出せるんじゃないかってことなのよ。

 やっぱり、この大陸には冒険者に憧れてやってくる人がいるんだけど、そんな中でもわたしみたいな初心者っぽい人もそれなりにいるし、薬草採取は基本クエストだから近場でそれが提供できないのはギルド的にも問題視していたんだって。

 で、サンクレルからメルクーアまで行き来できる人に調査依頼をかけたら、アンデッドの存在がでてきたとか。なるほどねえ。


「いいですよ」

「ありがとう。助かります。メルクーア大迷宮都市に向かう冒険者パーティーに途中まで付き添ってもらう形で、帰りはこちらサンクレルにくるパーティーにキャリーしてもらうようにしてあるので!」


 きめ細やかな計画まで立ててもらっていた。

 最悪、結界張りながら一時間半ならいけそうな気がするんだけど、せっかくだから、イリーナさんが立てくれた計画どおり、冒険者パーティーにキャリーしてもらおう。

 浄化にどのくらいの魔力が必要かわからないしね! 魔力温存!

 問題は……魅了よね。

 これはスキルだから、魔力関係ないのよ。

 キャリーしてくれる冒険者の方がこの魅了に引っかからず、お仕事できる人達ならいいんだけどなー。

 とりあえずバイト先に、冒険者ギルドからお仕事が入った旨を伝えてお休みをいただき、準備万端整えて、当日を迎えた。


「よろしく、パーティー『蒼狼の風』のリーダー、ダグラスだ」


 お、お、おお~獣人だ! 初めて見た!  

 今回、目的の依頼場所までキャリーしてくれる冒険者パーティーは獣人のパーティーだった。

 何度も空想二次元異世界転生を繰り返してきたけど、獣人と会うのはこれが初めて!

 自己紹介してくれたリーダーのダグラスさんは、犬? 狼? の獣人で、メンバーは猫型獣人の女性と、猿系の獣人の男性の三人編成のパーティーだ。

 パワー、敏捷、攻撃力とバランスとれた、頼り甲斐ありそうなパーティーじゃない!

 イリーナさん考えてくれたのね。しごできすぎる!

 この、のべつまくなし発動する魅了スキルでも、さすがに獣人に効果は――……。


 うん……好感度上がってるわ……知ってた。


 好感度パラメータ、半分以上に上がってる。

 ま、まあね、なんだこんな初心者のお荷物をキャリーすんのかって思われるよりも、好感度が上向き傾向でコミュニケーションとりやすいなら、いっか。


「アリスです、今回、道中にある建物周辺に浄化をかけるように依頼されました。初心者なのでキャリーよろしくお願いします」


 わたしがそう挨拶すると、猫型獣人の女性がしっぽを揺らしながらわたしの顔を覗き込む。しっぽ可愛い。


「やだ~お人形さんみたい~! かーわーいーいー」

「こら、シャム!」


 ダグラスさんが注意するのは猫型獣人のシャムさん。

 こちらの猫型獣人のシャムさんはお名前からシャム猫さん……ではなくてアビシニアンなイメージなんだよ。

 赤茶色っていうかオレンジ色っぽい髪で灰色の瞳、すらっとして長めの尻尾がフリフリってしてる。

 絶対敏捷極振りの人だ。

 シャムさんがペタペタとわたしのほっぺを触る。

 シャムさんの手は人と同じの五本指なんだけど、指先がぷにっとした弾力。

 まるで小さな肉球みたいな感触でペタペタ触られると気持ちいい~。

 はうう~肉球~ぷにぷに~そういうのもっとちょうだい!


「ごめんね、アリスさん、シャムいい加減にしろよ」

「ちぇ~」


 大丈夫です。

 ぷにぷにが気持ちいいです。


 ちなみにリーダーのダグラスさんは、ハスキー犬みたいなイメージ。

 灰蒼色の毛並みと琥珀色の瞳。

 あーなんかモテそうだー。

 あと、この二人とちょっと距離をとっているのが猿型獣人のボイルさん。

 毛並みが真っ黒で、はじめ人族なのかなって思った。

 でもパラメーターが獣人(猿タイプ)って表示されてるのよ。

 パラメーターがなかったら、きっと気が付かなかったな。

 体格がめっちゃマッスルで猿というよりはゴリラ系なんだろう。


 なのでこのパーティーの役割はダグラスさん攻撃、シャムさん遊撃、ボイルさん盾なんだろうけど、ボイルさん前衛でそのパワー雑魚を蹴散らし、横からシャムさんが攻撃、その間、ボイルさん後退、ダグラスさんの攻撃――。

 かなり物理で押せ押せ攻撃オンリーなパーティー編成だ。

 いざとなったらボイルさんが盾になるという具合なのか……。


 パラメーターで全員Bランクの表示。


 かなり腕っぷしが良いパーティーに、目的地までキャリーしてもらうのね。

 イリーナさん、ありがとう。

 そしてこのお仕事を受けてくれた『蒼狼の風』の皆さん、ありがとう。

 シャムさんがしきりにわたしのほっぺをプニプニしてるけどありがとう。


「おい、シャム。メルクーアからくるパーティーに引き渡すんだから早くしろ」


 猿系獣人のボイルさんが素っ気なく言う。

 でも、素っ気ない言い方してるけど、この人ももれなく好感度のパラメーターは上向き。

 魅了スキル、仕事してるわぁ……。

 心配そうなイリーナさんに手を振って、わたしはこの獣人冒険者パーティー『蒼狼の風』のメンバーに囲まれて、初めてサンクレルの街から外へと向かったのだった。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 冒険者パーティー『蒼狼の風』

 ダグラス:灰蒼色の髪と琥珀色の瞳

 犬型獣人、耳とかはハスキー犬みたいな感じ

「新人のプリーストのキャリーかあ……」


 シャム:赤茶色の髪、灰色の瞳

 お名前シャムだけどモデルはアビシニアン系

「なんかお人形さんみたいで、かーわーいーいー」


 ボイル:黒髪黒目

 猿人系獣人でゴリラモデルなので、ごついマッスルタイプ。

「変わった依頼だが、依頼はちゃんとする」





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