第20話 自責の残余
「奈子さん?」
玲の声にハッと我に帰る
並木道の向こうに人影はもう居ない
「大丈夫ですか?顔色が優れませんが」
「いや、大丈夫です…」
心配する玲に力なく返しその場を後にする
「おい奈子、最近のお前変だぞ
なんかあったんか?」
少年達の居ない昼下がり
仕事の話しをしていると晃が唐突に切り出す
「え、いや…なにも…
町で望音くんを、見かけて…」
誤魔化す事は出来ないと悟り声にだす
「望音?って大学ん時来てたモデルだっけ?」
「うん…」
それ以上を言葉には出来ず沈黙が流れる
「あの時…2年の夏にお前が展示会に
出したのは“風景画”だったよな
お前は賞を逃して…
その後すぐ居なくなっちまった」
晃の目は悲しげで
言い訳をすることがはばかられた
「何があったんだ?」
言葉を紡ぐ事は出来ず沈黙が流れる
私は逃げたのだ、自分が犯した過ちから
望音という少年から…
「まぁ、何があったか知らねぇけど、これ」
そう言って渡された紙には
4月に開催される展覧会の案内があった
作品の募集要項には“人物画”との記載
「これ…?」
「まあ、考えとけよ」
晃はそのまま部屋を後にする
「私には、描けないよ…」
少年性愛者 雨村小夜 @sayo_amemura
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