第18話 赤い瞳の少年

「とは言え、描きたい画は

もう一通り描いたんだよね

何か新しい刺激が欲しいんだけど…」

長年理想の少年の姿を描き続けた筆は

新たな出会いを求めるが

そうそう機会に恵まれる事はなく

またいつもの理想を描くのだと悟る


「先生おはよー」

「おはざーす」

「はい、おはよう」

2人が所属するクラスを担当する

教師に挨拶をして

自分のキャンバスが待つ椅子に腰かける

「今日は事務所さんから

モデルさんに来ていただいてますので

それぞれ好きに描いてくださいね」

教師の言葉に応えるように教室のドアが開く

ゆっくりと歩みでたのは…

白い毛髪、色素のない肌、

そして、血が透けた赤い瞳の少年

「白井聖音(しらい もね)です

今日はよろしくお願いします」


少年の姿に目を見張る

教室がざわついたが

教師の手を叩く音で

皆キャンバスに向き直る


「ねぇ、お姉さん」

モデルデッサンが終わり

声をかけてきたのはあの赤い瞳の少年

「白井くん?なあに?」

努めて冷静に少年に視線を合わせて応える

少年は耳元に口を近づけて

こっそりと耳打ちする

「お姉さん、ボクのこと…買う?」


ゆっくりと微笑む少年は

私の中に確かな刺激を残した

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