第14話 少年とワンピース
ある日の昼下がり翔と良が家の中を
探索したいと言い出した
見られて困る物は既に少年達の手の届かない
棚の上部へと移した
問題ないと考えて絵画や画材には
触れないようにとだけ伝えて許可を出す
楽しそうに笑いながら駆けて行く2人を見送り
リビングでテレビを見ているとしばらくして
2人が戻ってきた
良の胸には白い布が抱かれている
広げるとそれはワンピースだった
そういえば昔
母がこれを買ってきた事を思い出す
私の趣味には合わずほとんど着ることは無く
母が仕舞っていたようだ
ほつれや虫食いの無いことから
母は大層大事にしまっていたのだとわかる
着た姿をあまり見せられなかった事が
ほんの少しだけ胸を刺激する
懐かしくなって見ていると
良がまじまじとワンピースを見つめている事に
気づく、いつの日か洋服店の前で
ショーウィンドウに並ぶ綺麗なワンピースを
見ていた事を思い出す
「着てみる?」
ふと、口に出ていた
洋服店の物には及ばないが
シンプルな白のワンピースも悪くないと思った
良は驚いた様子だったが少ししてから頷いた
「おー、似合う!」
「えへへ、ありがとう」
翔の言葉に照れるように笑う
「きなこちゃん、どうかな?」
少し不安気にこちらを伺う
「うん、かわいいよ」
ひらひらと裾を舞わせてくるりと体を回す
ふわりと広がるワンピースに満足気に微笑む
「良かったらそれ良にあげるよ」
「え?いいの…?」
私の言葉に良が目を見開く
「うん、私じゃもう着れないし」
私がそう言うと良は満面の笑みを浮かべて喜ぶ
「ありがとう!きなこちゃん!」
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