第15話 少年とワンピース

ある日の昼下がり翔と良が家の中を

探索したいと言い出した

見られて困る物は既に少年達の手の届かない

棚の上部へと移した

問題ないと考えて絵画や画材には

触れないようにとだけ伝えて許可を出す


楽しそうに笑いながら駆けて行く2人を見送り

リビングでテレビを見ているとしばらくして

2人が戻ってきた

良の胸には白い布が抱かれている

広げるとそれはワンピースだった

そういえば昔、母がこれを買ってきた事を

思い出す私の趣味には合わず

ほとんど着ること無く仕舞われていたようだ

ほつれや虫食いの無いことから

母は大層大事にしまっていたのだとわかる

着た姿をあまり見せられなかった事が

ほんの少しだけ胸を刺激する


懐かしくなって見ていると

良がまじまじとワンピースを見つめている事に

気づく、いつの日か洋服店の前で

ショーウィンドウに並ぶ綺麗なワンピースを

見ていた事を思い出す

「着てみる?」

ふと、口に出ていた

洋服店の物には及ばないが

シンプルな白のワンピースは

良に似合うと思った

良は私の言葉に驚いた様子だったが

少しして頷いた

「おお、似合う!」

翔の言葉に照れるように笑う

ひらひらと裾を舞わせてくるりと体を回す

ふわりと広がるワンピースに満足気に微笑む

この先もこの少年がこんな風に笑えようにと

願ってしまった、私に出来る事は

そう多くはないと言うのに

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