第10話 秘密は毒のように

アルバイトへ向かうため外に出る

ヒュウと、少し冷たい風が吹く

月が変わり秋の足音が直ぐそこに迫る

もっとも暦の上では

とっくに秋のはずではあるが


アルバイトを終え家に着くと

既に夏月が家の前に居た

「いらっしゃい」

すっかりこの状況に慣れてしまった私は

家の鍵を開け中へ招く

「今日は2人は?」

私が聞くといつも通りの声で

気だるそうに応える

「翔は学校からそのまま習い事、良は剣道」

端的に応えるとオレンジジュースをついで

ダイニングに持って行く

ランドセルを開けて黙々と宿題を始める


翔は習い事を複数受けているらしく

来たと思ったら直ぐに出て行くこともしばしば

良は週に2~3度ほどお爺さんの経営する

剣道場へ向かう

実の所、夏月と2人きりの時間が一番長い


夏月が宿題に区切りを付けて伸びをする

勉強道具を片付けると

リビングでテレビを見ていた私に近づく

「なあ、なこ」

いつもとは違うこちらを伺うような声で

夏月が私を呼ぶ

「なあに?」

違和感を覚えながらも聞き返す

「おれ、見たんだあの日…お泊まり会の日…」

「え…?」

それ以上聞く事を頭が拒むが言葉は出ない

「2階の一番奥の部屋…なこのアトリエ」

心臓が鷲掴まれた様にうるさい

ドクドクと危険信号を鳴らす

(だって、あそこにあるのは…)

あそこにあるのは【私の欲】だ

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