第5話 ハンバーガーとワンピース
ふと、昨日の夜の事を思い出していた
夜の公園で出会った少年は
あの後、無事に帰れただろうか
「きなこー?」
翔の声に振り向く
今日は休日なので
3人で買い物に行こうと誘われた
まだ暑い真昼間なのであまり乗り気では無いが
2人からせがまれては断れなかった
(もちろん保護者の許可は得た)
普段は見ない私服に物珍しさを感じながら
残暑の中ショッピングモールへ歩く
「夏月も来れたらいいのにね」
何度目かわからない言葉を良太郎が言う
相当に恋しいのか2人は度々
夏月という名前をだす
談笑しながらだらだらと歩いていると
前に人影が見えた
「「あ、、」」
同時に目が合い口を開く
昨夜の少年の姿があった
「「夏月!?」」
そしてまた同時に翔と良太郎が口を開く
2人の友人である夏月も合流して
ショッピングモールへ行く事になった
が、3人の背中はどうもぎこちない
あれだけ会いたいと言っていた
人物に会えたと言うのに
ふと、夏月が手に持っているパーカーが
目に付いた、昨日と同じ物だ、よく見ると
ズボンやアクセサリーも同じ物のようだった
(やっぱり、「帰る」は嘘か)
ショッピングモールに着くと
各々欲しい物を言う
ゲーム、服、食べ物
食べ物の話題が出た所で私の腹の虫が鳴いた
「ふふっ、きなこは食べ物がいいかな?」
さっきまでぎこちなかった3人が同時に笑う
少々不本意だが3人が笑うので良しとしよう
(そして早くフードコートへ行こう)
私が足早に歩きだすと3人も続く
「これがハンバーガー!初めて食べます...!」
良太郎が異様に目を輝かせる
良太郎の家は厳しくあまり外食を
させてくれないらしい
私の家に来たころはテレビゲームも初めてだと
目を輝かせていた
翔は優雅な所作でハンバーガーにかじりつく
慣れないのかソースが頬に着いている
テーブルマナーが完璧でも
ジャンクフードは汚れるもののようだ
「ほっぺ着いてるよ」
自分の頬を指差す動作を交えて伝える
「きなこもね?」
まさかの反撃に面食らってしまう
ペーパーナプキンで頬を拭うと
良太郎がくすくすと笑う
(なんできみは初めてで
そんなに綺麗に食べられるんだ...?)
夏月はと言うと私の隣りに
どかっと腰かけ、頬袋をいっぱいにして
無言でガツガツと食べている
(ハムスターかな...?)
腹ごしらえを終えお昼過ぎ
ショッピングモールをぶらぶらと歩く
翔はゲームショップへと急かすが
少し列から外れる良太郎に気づく
見ると洋服店の前で立ち止まっている
その視線の先には青いリボンをあしらった
真っ白なワンピースがあった
「2人とも早くー!」
良太郎が翔の声にハッとして駆け寄る
(綺麗だと思うけどなー)
白いワンピースに身を包む良太郎の姿を
思い浮かべる
白い肌に黒い髪、中性的な顔立ちに細い体
きっと似合うだろうと思ったが
彼の話しに時折出てくる厳格な祖父が
それを許すとは到底思えなかった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます