第十五話

「うわぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 絶叫である。


「うははははは。雪菜。マジで叫んでる。ウケる」


「雪菜にも苦手なものあったんだね。意外―」


 そう、叫んでいるのは、何を隠そう私だ。

 私は、暗いところが苦手なのだ。暗いところが好きではなかったので、こういったものに好き好んで来なかったのだ。でもここまで苦手など思いもしなかったのだ。

 今、私たちがいるのは


「霧の都ロンドンの再現セットすごいよねー。あははは」


「もー!もー!来た!来た!怖い!無理!」


「走っちゃだめだよー。おてて繋いでるからねー。先いっちゃだめだよー」


「いやー!無理無理無理無理」


 有明な切り裂き魔体験である。通り魔体験なんてしなくていいわ。怖い。


「うわ。雪菜の胸部装甲が凛音に爆当たりしてる。えっちだ」

「僕が男だって知ってるのに…えっちだ」


「無理無理無理無理」


 二人が何か言っているが、私はそれどころではない。絶叫しながらアトラクションを終えたのであった。


「うふふふふふ。雪菜。めっちゃ可愛かったよ」


「そうだね。とっても可愛かったよ」


「無理です。殺してください」


 大通り(出口)に辿り着いた私は、地面にへたり込んでいた。まさか私にこんな弱点があったなんて。


「まさか私にこんな弱点があったなんて」


 思ったことそのまま言ってしまうほど追い詰められていた。大丈夫だと思ったんだよ。予想よりもだいぶ怖かった。もうこのアトラクションはやりたくない。


「もう一回やろうか」


「嫌です」


 ニヤニヤしながら言う詩音にしっかりとNO!を突きつける。もうしません。


「ねー、詩音。雪菜がダウンしちゃったから、少し早いけどご飯でも食べいく?」


「それも良さそうだね、雪菜がダウンしちゃったからね」


 この幼女、ここぞとばかりに攻めてくるな。凛音の優しさが身に染みる…


「行きましょう。ご飯に」

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