第四話
「お疲れ様でーす!」
無事に収録も終わり、Mを冠するファストフード店に打ち上げに来た私たち。スタジオの近くにあるので便利だ。
「あなた。それ好きよね。」
「まーね。甘いのと苦いのを交互に取るのがいいんだよね。」
凛音は、ホットコーヒーとチョコレートシェイクを交互に飲むのが好きで、ここにくるといつも頼んでいる。気温が高くなってもホットコーヒーなのは、冷たいシェイクとの対比を楽しむためと以前言っていた。
「私は、甘いのあんまり好きじゃないな。ポテトの方が好き。」
詩音は、ホットコーヒーとフライドポテトだ。この娘、甘いものも実は大好きなのだが、幼い容姿を気にしてか、格好を付けて人前では食べたがらない。でも、ポテトもお子様人気が高いのを理解しようね。
「糖質に、トランス脂肪酸…。」
私は、服装にはこだわりは無かったが、食べるものには気をつけているので、ジャンクフードは食べないのだ。なので、アイスコーヒーのみを注文した。シロップもコーヒーフレッシュも不要。Mを冠するファストフード店のコーヒーは、比較的苦味も少ないし、ちゃんと酸味も感じられる(もちろん丁寧にドリップされたコーヒーとは比較にならないが)。コーヒー豆はコーヒーチェリーという果実から取られる種子なので、きちんと淹れられたコーヒーは、果実由来の酸味が感じられるものなのだ。しかし、大量生産でこの酸味を出すなんて一体どうすればできるんだろう。
「出た。雪菜の意識高すぎ発言。もっと色んなものを一緒に食べに行ったりしよーよー。」
凛音に肩を掴んで揺すられる。髪の毛が乱れるけど、この娘ならいい。この娘の明るいところを私は気に入っている。
「さて、収録も終わったし、調整が終わったら、雪菜に送るね。イラストもだいぶ出来ていたし、完成も間近だね。ひとまずお疲れ様でした。今回もみんなで出来て良かった。ありがとう。」
しばらく雑談に興じていたが、だいぶいい時間になったので締めの音頭をサークル主である詩音がとってくれた。いつもならこれで解散となるところなのだが、凛音の様子がおかしい、先程までの明るい雰囲気がなく、口を開いては閉じ、明らかに何か言いたそうだ。
「凛音。どうしたの?何か用でもあるの?」
そんな様子の凛音を見かねて声をかけた。すると、彼女は可愛いぱっちりお目目をキリリとさせて、決意に満ちた声音で言った。
「実は、2人に言ってなかった秘密があるんだ。聞いてほしい。」
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