第16話

「あんたさ、」


私は田中を睨みつけながら言葉を吐き出した。


田中さんなんてそんな可愛いこと言ってられない。


「あ、あんた…?」

田中の驚いた顔が目に入った。


彼も私の反応に戸惑っているようだった。


「悪い虫が引っ付かないようにとかほざいてるけどさ、実際それあんたの事だからね」


私は冷静に言い返した。


人が大人しくしてたら調子に乗って言いたい放題言っちゃって。


もう我慢ならない。


「あんたって先輩に向かってなんだその失礼な態度は!」


また怒鳴り出した。


二重人格かよ。


心の中で恐怖が募る。


ここまで来たらもうホラーだよね。


そしたら瑞稀が私を背中の後ろに隠してくれた。


「惨めになるのはお前のやってる事が間違ってるからだろ、なのに全部梨華のせいにしようとして、だせえ奴だな」


瑞稀の言葉に、私は少しだけ安心した。


「な、お前に何がわかるんだよ!」


彼の声が震えているのが分かった。


「なんも分からねーよ。いや分かりたくもないか」


瑞稀の背中がいつもより大きく見えて、ちょっとだけドキッとした。


彼が私を守ってくれていることが嬉しかった。


「なんで俺がそこまで言われないといけないんだよ!」


田中の声が苛立ちを帯びていた。

なーんであんたが逆ギレしてんだよ。


「言われたくなかったらもう二度と梨華に近づくな」


「俺は…!」


「またこんな事があったらその時は容赦なく警察に通報するから」


瑞稀の言葉に、私は少しだけ安心した。


彼が私を守ってくれていることが嬉しかった。


「なんだよ、あーあ。もう萎えたわ。お前みたいな女。お前と付き合いたいと思ってるやつなんて誰もいないから、こっちから願い下げだよ!」


ほんと、最初と性格違いすぎませんか?


まぁ、解決できたからいいんですけど!


彼が去っていくのを見送りながら、私は少しだけホッとした。


「助けてくれてありがと、じゃあ…もう行くね」

「待って」


瑞稀の声が私を引き止めた。


彼が何を言おうとしているのか気になった。


「…何」

私は振り返り、瑞稀の顔を見つめた。


「この前は悪かった」


瑞稀の言葉に、私は少しだけ驚いた。


彼が謝るなんて思ってもみなかった。


「別に、気にしてないよ」


私は微笑みながら答えた。

瑞稀の謝罪を受け入れることにした。


「ただの幼なじみなんて思ってないから。イラってしてつい思ってもない事言った」


瑞稀の言葉に、私は少しだけ胸が温かくなった。


瑞稀が本心を伝えてくれたことが嬉しかった。


「謝らないでよ、分かってるから」

「それから…」


瑞稀の言葉に、私は少しだけ緊張した。


私は瑞稀の顔を見つめた。


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