第14話

「梨華さん、田中さんって知ってる?」

「はい。田中さんがどうしたんですか?」


「別れた彼女の家に毎日待ち伏せしてるんだって、」

「え、そうなんですか…?」


私にはそんな風には見えないけど…人は見かけによらないって言うし、


「だから梨華さんもあんまり近づかない方がいいよ。因縁つけられて家の前待ち伏せされちゃわないようにね」


「分かりました、ありがとうございます」


こんな大事な会話を忘れてしまっていたなんて。


覚えていたら、なんて今さら手遅れだけど。


あの日からターゲットはいつの間にか元カノから私に変わっていたんだ…そんな事も知らずに…。


この人の事だから、元カノ…かどうかも怪しいけど。




「田中さんと付き合わなくても後悔なんてしませんから」


私は強い口調で言い放った。


どうしてこんなにしつこいのか理解できない。


「社内恋愛が嫌なの?そ、それじゃあ俺は転職するから、」


この人、本気で私が自分のことを好きって思い込んでるんだ。


「関係ありませんよ」

「じゃあどうすれば...!」


大物になろうが金持ちなろうが、


あんたがどれだけ努力しようが私の気持ちは変わらない。



『はぁ。いい加減にしてください、警察呼びますよ」


これ以上相手をしたくなかったから、最終手段に出ることにした。を


彼の顔が一瞬驚きに変わった。警察という言葉が効いたのかもしれない。


「警察?なんでだよ。なんで好きな子に会いに来らダメなんだよ!」


いや、何それ。犯罪者の考え方じゃん。


「ダメに決まってるじゃないてすか」

どうしよう。まともに話せる相手じゃないんだけど。


「何やってんの」


振り向くと、そこには瑞稀が立っていた。


「瑞稀...」

「な、なんだよお前..、梨華ちゃんのなんなんだよ!」


瑞稀にとって私は…


「あ?俺は梨華の」


瑞稀が何を言おうとしているのか分からなかった。


「そうだよ...」

「は?」


「ただの幼なじみなんでしょ?じゃあ、私の事なんてほっといてよ」


助けてくれるのはありがたいけど、まだ仲直りしてないし、助けてもらうつもりはない。


ただの幼なじみなんだから。


「ふっ。幼なじみかなんだか知らないけど、これから俺は梨華ちゃんの彼氏になるところなんだよ!だから邪魔するな」


調子に乗るな。誰があんたなんかと付き合うのよ。心の中で怒りが沸き上がる。


「こいつのこと好きなのか?」


私は俯いて答えなかった。


答える必要なんてない。


「答えて」

「別に、瑞稀には関係ないでしょ」


ただの幼なじみなんだから。


「そんなこと言ってると、こいつに何されても助けてやらないぞ」


別に、助けて欲しいなんて言ってないし。


「ほっといて」


瑞稀の顔が険しくなった。


「あっそ、邪魔して悪かったな」


はぁ。なんでこうなるのかな、

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