第8話

「は?何だよ」

瑞稀は不思議そうに私を見た。


「もったいぶらずに教えて」

私は期待を込めて言った。


「教えるって何を」


もう。気づいてないふりしちゃって。


「そんなの電話番号に決まってんじゃん」


「はぁ?無理に決まってんだろ」

瑞稀は即座に否定した。


「えぇ、なんでよ」


ま、だろうと思ったけど。


「個人情報だからだよ」

瑞稀は真剣な顔で言った。


「ケチ」

「俺、お前が怖いよ」


怖いだなんて失礼な。


「ちなみに私、凛月くんが好きなんだよね」


ツンデレなとこが可愛いって言うか、顔も天才だし歌もダンスも上手で、だけどどこか母性くすぐられるところもあって


「げっ、可哀想に。こんな奴に好かれるなんて、あいつもついてないな」


瑞稀は冗談っぽく言った。


「ちょっと!」

「冗談冗談」


本気のくせに…。


「てかあんたもあんな可愛い子に会って、よく手を出さないわね」


あんな可愛い子目の前にして手を出さないなんて…


理性どうなってんだか。


「は?みんながみんなお前みたいなやつばっかだと思うなよ?」


「何よそれ!」

私は少しムッとした。


私みたいなやつばっかってどういう意味よ!


「それじゃあ、今度会わせてやろうか」

瑞稀はニヤリと笑った。


「ほんと!?」

私は目を輝かせた。


「嘘に決まってんだろ」

瑞稀は笑いながら言った。


「もう」

私はがっかりして肩を落とした。


「なんでそんなに会いたいんだよ」

瑞稀は不思議そうに尋ねた。


「なんでって、イケメンだからに決まってるでしょうが!」


イケメンと一緒にいるだけでHPがどれだけ回復すると思ってんの?


「それだけかよ」

瑞稀は呆れたように言った。


「それだけだよ。私もイケメンに囲まれて仕事したいのに。私なんて、イケメンもいないのに安月給で大変なんだから、」


私はため息をついた。


家賃、光熱費、保険代…


手に残るのなんて…だめだ、考えたら悲しくなってきた。


「ま、何かあったら俺が養ってやるよ」

瑞稀が真剣な顔で言った。


「えぇ、瑞稀が?」

私は驚いて彼を見た。


冗談を真剣な顔で言うなんて、珍しい。


「お前一人養えるぐらいは稼いでるから」


なんだかプロポーズみたい。

カッコつけちゃって。


「お気持ちだけでも、ありがとうございます」

私は冗談っぽく言った。


「本気なんだけどな、」

瑞稀は真剣な顔で言った。


「え?」

私は驚いて彼を見た。


「いや、冷めるぞ。早く食べろよ」

瑞稀は急に話を変えた。


「へーい」

私は笑いながら答えた。


ま、別に気にすることないか。

瑞稀なりの気遣いだろうし。

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