第7話


「与えられた仕事するだけで金貰えんだろ。何がそんな嫌なんだよ」


瑞稀の言葉に、私は少しムッとした。


瑞稀の無神経な発言に、全世界の社会人が怒りそう。


「うわ。あんた今全世界の社会人敵に回したわよ」

私は腕を組んで、瑞稀を睨みつけた。


「んな大袈裟な。俺が言いたいのは、仕事を与えてもらうことに必死になってるやつもいるってこと」


瑞稀は肩をすくめて、軽く言い返してきた。


「瑞稀に仕事任せたいやつなんて山ほどいるでしょ。この前だってあの…誰だ、あぁ、スターライトの楽曲何度も提供しちゃってさぁ」


私は彼の成功を思い出しながら、少し羨ましそうに言った。


「今はやっとプロデューサーから依頼して貰えるようになったけど、これでも無名の時は結構きつかったんだからな。ていうかスターライト知ってんの?」


瑞稀は少し驚いたように私を見た。


私のことをなんだと思ってるんだ。


「アイドルはあんまり興味無いけど、スターライトは流石に知ってる。最近女の子入ってきたんだよね?」


私は最近のニュースを思い出しながら答えた。


「あぁ。あいつ声すげぇ綺麗なんだよな。曲が一気に華やかになるって言うかさ」


瑞稀の目が輝いているのを見て、本当に音楽を愛していることが伝わってきた。


「新曲聞いたけどすごい良かったよ」

私は素直に感想を伝えた。


「俺の曲聴いたりしてんだな」

瑞稀は少し照れくさそうに笑った。


「まぁね」


内緒にしてたけど、割と毎日聞いてる。


メロディーも歌詞も癖になる。

なんて、恥ずかしくて言えないけど。


「凝りに凝りすぎて締切ギリギリだった」

瑞稀は苦笑いしながら言った。


「締め切り前になったら干からびるじゃん?私に収益ちょっと分けるべきなんじゃない?」


私は冗談半分で言った。


その度に私が世話して、何度命救ってきたことか。


「はぁ?今まで金目的で助けてたのかよ」

なんて言いながら、私のことをゴミを見るような目で見てきた。


「ジョーダンに決ってんでしょうが」

私は笑いながら答えた。


まぁ、半分本気だったんだけど。


「目が本気だけど?」

瑞稀は疑わしそうに私を見た。


「バレた?」

私は笑いながら肩をすくめた。


「お前なぁ」


瑞稀は呆れたようにため息をついた。


「ははっ。スターライト会ったことあんの?」

私は興味津々で尋ねた。


「連絡先持ってるけど。飯は…何回か。純怜が入ってから一回行った」


なーんでそんな大事なこと言わないかなぁ。


「それを先に言ってよ!ということで、はい」

私はスマホを差し出した。

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