Chapter.5 肩揉み&耳かき編

(SE…主人公の自室のドアがノックされる音)


「お兄ちゃん、今大丈夫〜?」(ドア越しの声)


(SE…主人公が立ち上がり、自室のドアを開ける音)


「こんばんは! もしかしてお兄ちゃん、今日提供される癒しは既に終わったと思ってたりする? もしそうだとしたら、大間違いだよ〜?」


(SE…凛々花がドアを閉める音)


「それでは今から、リリがお兄ちゃんに最高の癒しを二つ、提供したいと思います!」


「ふふっ、何だと思う? ……大学の前期のプリント整理!? いや、そんな訳がないでしょう! それは自分でやってくださいな、全くもう」(演技依頼…最後はちょっと呆れたように笑いながら)


「……それじゃあ、正解を発表しまーす! 一つ目は、肩揉み!」


「ほら、確かレポートってパソコンでつくるよね? ずっと画面見てると、肩が凝っちゃってるんじゃないかなあって思ったの。だから、今日はリリが特別に、お兄ちゃんの肩を揉んであげるのです!」


「それじゃあお兄ちゃん、そこの椅子に座ってくれる?」


(SE…主人公の足音、椅子に座る音)


(SE…凛々花が主人公の後ろに移動する足音)


「うん、ありがと! そしたら、早速揉んでいくね〜……」


(SE…凛々花が主人公の肩を揉む音 〈a〉まで継続)


「わあ、結構凝ってる……! やっぱりお兄ちゃん、深夜の四時までパソコンでレポートを書くのはいただけないよ〜! 今回はリリが頑張ってほぐしてあげるから、大学の後期ではもっと計画的にレポートを進めましょうね〜。リリとのお約束だよ!」


「どう、お兄ちゃん、気持ちいい? ……そう、それならよかった! リリ、結構肩揉み上手いと思うんだよね〜……昔からお父さんにお小遣い貰ってやってたし、友達とかにやってあげると中々好評なんだよ? 将来は肩揉み専門店とか開けちゃうかもなあ……ふふっ」


「よいしょ、よいしょ……それにしても、肩揉みって結構力使うよね、何だか沢山やってると筋肉が付きそうな気がする……! リリ、痩せ型だし、あんまり筋肉とか付いてないからなあ……もうちょっと筋肉を付けとかないと、いざというときにお兄ちゃんを守れないかも……」


「え、何から守るのかって? うーん、何だろう……お化けとか出てきたら、むしろお兄ちゃんに守ってほしいしなあ……あ、病原菌とかかな! お兄ちゃんが風邪を引く前に、筋肉の力で病原菌をやっつけるの! ふふっ、どう、かっこいいでしょう?」


「それは最早白血球……!? た、確かに! リリ、流石にお兄ちゃんの身体の中に入るのはできなさそうだし……むしろ、お兄ちゃんが筋肉を付けた方が白血球も何だか元気になりそうだよね? 完全にイメージだけど……ふふっ」


「……よし、このくらいにしとこうかな!」


〈a〉(SE…凛々花が主人公の肩を揉む音 ここまで)


「どう、お兄ちゃん? ……肩が軽くなった気がする? よかったあ〜! しっかり癒しをお届けできたみたいで、リリはとっても嬉しいのです」


「そしたら次は、二つ目の癒し! まずはこれを見てください……じゃじゃーん!」


「そう、梵天耳かき! 実は最近、耳かきの動画を見るのにハマってて、リリも誰かに耳かきしてあげたいと思ってたの! それで、取り寄せておいたんだ〜。勿論新品だよ!」


「それじゃあお兄ちゃん、リリが膝枕するので、片方の耳を上に向けてごろーんとなってください!」


(SE…主人公が寝転がる音)


「……うん、ばっちり! そしたら、早速耳かきしていくよ〜……」


(SE…右耳の耳かきの音 〈b〉まで継続)


「かりかり、かりかり……どうかな、気持ちいい? ……うん、よかった! でも、お兄ちゃんの耳の中、結構綺麗だね……普段からよく耳掃除してるの? ……なるほど、お風呂上がりに時々って感じなんだ。確かに、お風呂上がりに耳掃除する人って多いみたいだよね〜」


「リリ? リリはね、耳掃除かなり好きで、むしろたまにやりすぎちゃうんだよね〜……だから、多くても三日に一回にするように、自分を頑張って律しているの! そうでもしないと、毎日二回とかやっちゃったりするんだよ〜……全く、これも耳掃除が気持ちよすぎるせいだよねえ」


「それにしても、今日は久しぶりにお兄ちゃんとお出掛けできて楽しかったなあ……折角リリもお兄ちゃんも夏休みになったんだし、またどこか遊びに行こうね! 遊園地とかどうかなあ? 色々乗りたいんだよねえ、メリーゴーランドとか、コーヒーカップとか……あっ、ちなみに、お化け屋敷はパスするね! ふふっ」


「お兄ちゃんはどこか行きたいとことかある? ……涼しいところ? 確かに夏だし、暑いところにはあんまり行きたくないよねえ……そうすると、どこだろう……北極とか!? えへへ、流石に冗談だよ〜……でも、生きてるうちに一度くらい北極に上陸してみたいかも……うーん、できるかなあ?」


「あっ、そうだ、リリね、かき氷食べたいの! やっぱり夏といえばかき氷でしょう! お祭りで売ってるようなやつでもいいし、お店で売ってるようなやつでもいいなあ。むしろ、どっちも食べたいかも……! そういえば、かき氷のシロップって全部同じ味って聞いたことあるけど、中々信じられないよねえ。イチゴはイチゴの味がするし、メロンはメロンの味がするし、ブルーハワイはブルーハワイの味がすると思わない? ……自分で言ってみて思ったけど、ブルーハワイの味とは一体……?」


「……よーし、こんなもんかな!」


〈b〉(SE…右耳の耳かきの音 ここまで)


「そしたら、こっち側のふわふわの部分で仕上げだよ〜……」


(SE…右耳の梵天耳かきの音 〈c〉まで継続)


「……どう? ふわふわ、気持ちいい? ……ふふっ、よかったあ。何だか、リリも梵天耳かきを味わってみたくなってきちゃった……自分用にもう一つ取り寄せようかなあ? そしたら今度は、お兄ちゃんに耳かきしてもらおっかなあ。……やったことない? 大丈夫、大丈夫! あんまり奥までやらないことを心がければ、きっと上手くいくはずなのですよ〜」


「……うん、仕上げ完了!」


〈c〉(SE…右耳の梵天耳かきの音 ここまで)


「これでお兄ちゃんの右耳は、とっても綺麗になったはず! えへへ、リリ、頑張りました〜!」


「そしたら今度は、左耳をやっていくね! 身体の向き、変えてくれるかな?」


(SE…主人公が体勢を変える音)


「おっけー! それじゃあ、早速始めていくね〜……」


(SE…左耳の耳かきの音 〈d〉まで継続)


「かりかり、かりかり……大丈夫、痛かったりしないかな? ……気持ちいい? それならよかった! やっぱり、こっちの耳の中も結構綺麗……こういう風に、人の耳の中をまじまじ見る機会ってあんまりないから、改めて考えてみると面白いね。ふふっ」


「……そういえばお兄ちゃんは、ファッションのこだわりとかある? ……とにかくモノトーン? ……確かに思い返すと、お兄ちゃんの着てる服って、全部白かグレーか黒だね! ちなみに、どうしてその三色ばっかりにしてるの? ……なんかかっこよさげに見えるから? ふふっ、なるほど!」


「……ちなみにリリは、何色を着てるお兄ちゃんもかっこいいと思うよ? なーんてね、えへへっ」


「……リリのファッションのこだわり? んー、そうだなあ……やっぱり、自分が素敵だと思ったお洋服を着たい、なあ……今着てるこのシャツも、スカートも、靴下も、チョーカーも、リボンも……全部、初めて見たとき、すっごく可愛いなあって思ったの。心の底から、いいなあって思ったんだ……だからリリは、こういう服を着てるとさ、すごく、幸せで……」


「……え。お兄ちゃんも、リリが着たい服を着てるのが、素敵だって思うの……?」


「……よかった」(演技依頼…深く安堵した感じで)


「……そうだ、今度お兄ちゃんと一緒にショッピング行きたいな! リリ、お兄ちゃんのお洋服、一式コーディネートしてあげたい! ふふっ、すっごくかっこよくしてあげるから、楽しみにしててね? それで、その服着たお兄ちゃんと一緒にまたデートするんだ〜。ね、何だかワクワクしない? そうだよね、ワクワクだよね!」


「遊園地に、かき氷に、ショッピング……ふふっ、夏休み、最高の思い出が沢山できそう! 一緒に満喫しようね、お兄ちゃん!」


「……よーし、左耳もこんな感じでいいかな!」


〈d〉(SE…左耳の耳かきの音 ここまで)


「それじゃあこっちの耳も、ふわふわの部分で癒される仕上げだよ〜……」


(SE…左耳の梵天耳かきの音 〈e〉まで継続)


「……ふふ、お兄ちゃん、ふわふわのときになるとさらに心地よさそう。満足してもらえてるみたいで、リリはとっても嬉しいよ〜……突発的に思い付いた『リリがお兄ちゃんに色んな癒しを提供する日』だけど、結構上手くいったんじゃないかなあ? ……素晴らしい出来栄えだった!? やったあ! 褒めてもらえて、リリは幸せ者ですよ〜……」


「……よし、仕上げできた〜!」


〈e〉(SE…右耳の梵天耳かきの音 ここまで)


「ふふっ、どうだった、リリの耳かき? 極上の癒しだった?」


「……それは何より! リリも、お兄ちゃんに耳かきできて、素敵な体験となりました〜!」

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