閑話 セーラのパーフェクト魔法教室!
「それじゃあ本題に入るけど、魔法の前提は理解してるんだよね? マスター」
一人で前に座るセーラが、問いかけてくる。
現在、俺達は小島に落ちてた手頃なサイズの石を適当に拾ってきて、一定の間隔をあけて5人真横に並んでセーラの向かい側に座っている。
「あぁ。ってか、この世界の力全体に言えることだろ? それは」
「まぁねぇ~。そう、全部イメージ次第。魔法だろうと闘気だろうと妖術だろうとそれは変わらない。じゃあ、力が発動するまでの順序は理解してる?」
「順序? えっ、そんなのあんの。知らん知らん」
コアの刷り込みに、そんなのなかったけどな。
やっぱ知らないのは俺だけかなとか思ってると、
「セーラせんせ~、うちも知らへんわそれ。適当にどうしたいかイメージしとったら発動出来てたで? 妖術」
「あはは~、私も知らないや。なんとな~くこんな感じにしたいっていう想いを籠めて歌ってたら魔法になってただけだし」
「えっと、ま、魔法に関する知識を教わる前に村行きになったので、私も知りません……。これでも魔女の孫なのにぃ……」
「大丈夫ですシンシア姉上! 私も知りません!」
次から次からどんどん出てくる。
というか、セーラ以外皆知らなかったようだ。
「うんうん、おっけ~。じゃあこっからだね。まぁイメージ発動で行ける人はそれで良いんだけどさ、出来ない人は一つ一つステップを踏めば出来たりすることもあるの」
おぉ……めっちゃ先生らしいこと言ってる。様になってんな。自称最強な妖精さんの➈ソングなんて歌い出すもんだから、ちょっと心配してたけど……この分なら普通に授業受けれそうだ。真面目にやろう。
「ちなみに、イメージだけで力を発動することを
セーラの考察は、当たっているような気がする。
確かに俺は飛行魔法を発動する時、俺は今何故飛べているんだ? っていつも思ってしまっている。確かに思い込みが足りないのだと言われてしまえば、そうなのだろう。
「だが、それが分かった所ですぐにそういうもんだと思い込めるなら、苦労はしてないぞ」
「うん。だからこそ、自分にも登れるステップを作るんだよ。原理が気になるなら、原理を理解しちゃえばいいんだ。それが出来ないなら、理解出来る方向性にシフトすればいい。飛行魔法はこうでなくちゃいけない! なんて決まりはないんだから。だって、マスターの目的は一つでしょ? 空を飛ぶ。それさえ叶えば別に飛び方を変えたって良い。でしょ?」
え……先生じゃん。めっちゃ先生じゃん。少なくとも俺の中高の教師よりはよっぽど分かりやすいし、興味が湧く話の進め方なんだけど。
いやまぁ俺がそもそも興味を持って授業を受けてる状態の上、セーラは身内だから色々とプラス補正がかかっているのは否定出来ない。でも、だとしても上手い気がする。
セーラ先生の話に感心しながら、うんうん頷く。
「じゃあ具体的にどうするかって話なんだけど、その前に前提を理解しよっか。ステップの話の続きね?
そう言ってセーラは右手を握り込んだ状態で顔の前にあげ、一つ、二つ、と人差し指から順に、俺達に指の腹が見える向きで立てていった。
その説明を簡単にまとめると、
1…どのような魔法を使うか決定する『設計』
2…設計通りの形状に魔力を練る『錬成』
3…錬成した無色の魔力に色を与える『属性付与』
4…全てを終え完成した魔法の
このようになる。
この4ステップを奏は魔法で、クロは妖術で今まで無意識に行っていたということだ。リーリエがどうかは分からんが、まぁ別に今すぐじゃなくていいや。思念話をすれば今すぐ聞けるけど……今夜の定期連絡で聞いてみるか。
それはそうと、この中で俺が出来ないのって3番だけだな。やっぱ魔法系のアニメ見てこなかったせいだな。いや、後悔なんかないけど。紗耶香の為だし。でも今にして思うと、紗耶香は変わった娘だよなぁ。普通女の子って魔法少女とかに憧れそうなもんだけどな。ま、今考えることじゃないか。
「セーラはどうなんだ? お前は
「うん、もちろん! まぁでも
何事もメリットデメリットはあるってことか。
しかし、となると……。
「イメージをしっかり持った上で
「あはは、そんなことが出来ればね。それこそ神でも無ければ無理だよ。言ったでしょ?
「あ~、まぁそれはそうだな。済まん」
いきなり最強はやっぱ無理があったか。
速攻で発動出来て、しかも強力とか超強いじゃんとか思ったんだけどな。
「うん、良いよ別に。気持ちは分かるしね。私もママに魔法を教わった時マスターと全く同じように聞いたもん」
懐かしいな~、なんて遠い目をするセーラ先生。
「あっ、セーラ先生。俺どんな魔法があるのかってこともあんま知らないんだけど……。属性とか、良く分かんないです」
「ん、おっけー。でもそれは次回にしよっか。今日の授業は、どうすればマスターは飛べるようになるのか? が本題だからね」
「……分かった。次を楽しみにしておくよ」
しかし、どうやって飛ぶのか、か。別にそこまで航空力学やら何やらに詳しくない俺でも飛べる理屈が理解出来る方法……。
「ん~、分からん」
「まぁそうだろうね~。これですぐ思いつくなら、もうとっくに試してるだろうし。そこで! 皆から意見を聞きます! こんな時こそ皆の出番だよ! 愛する旦那さんが! 主が! パパが困ってるよ! 助けてあげて! 普通の飛び方だと理屈が分かんなくて信じきれない。なら、普通じゃない空の飛び方を考えよう!」
セーラがそう言うと、早速と言わんばかりにナディが手を挙げた。
「おっ、速いねぇ! どうぞ~、ナディ坊!」
「はい。父上は、無色の魔力ならば自在に操作出来る訳ですよね?」
「ん? あぁ。魔力の刃も魔力の弾丸も、色々と出来るぞ」
「なら空中で魔力を固めて、その上を歩く……というのは、どうでしょうか? 父上の魔力ならば、十分に可能な筈」
「おおっ!! それ、ありかも!」
なるほど? 空を飛ぶ、ではなく空を歩くか! 無色のままで良いなら、今の俺でも出来るかもしれない!
「よし、やってみるか」
そう呟くと俺は長方形の板をイメージして魔力を練り、それを空中に何個も段差を付けて設置した。
「お、おぉ……登れる。登れるぞ!! 俺今空中に居る!! 前に強引に飛行魔法やろうとした時よりずっと安定してるぞ!! ナイス! ナディ!! でかした! セーラもサンキューな!」
空中に設置した魔力の階段を登りながら、俺は2人に感謝を告げる。
「うんうん、とりあえずは解決かな。それ、一瞬で形成できる?」
「……あ~、いや、それはちょっとまだ無理だな」
「
「おう!! って、あぁ~悪かったな。皆を巻き込んでおきながら、実際セーラの教えが役立ったの俺ばっかで……」
今にして思えば、マジで俺ばっか得して、他の皆全然得してない。だって、「
「ううん。良いよ! 普通に勉強になったし。そういう手順があるんだって分かっただけ、これからに活かせると思う」
「せやな! うちの妖術も更にパワーアップや」
「魔法のこと全然知らなかったのは私もですから、逆に魔女の孫でありながらお教え出来なくてすみません……うぅ」
「魔女の孫だからなんですか! シンシア姉上は頑張ってくれています! 何も謝ることはありません!」
「うぅ……ありがとぉナディ君」
そんなこんなで、わちゃわちゃしながらも第1回セーラのパーフェクト魔法教室は終わりを告げた。
➈と違って、ホントにパーフェクトな授業だったな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます