38話 到着した新大陸で、早速トラブル!?
出立してから、丸一週間が経過した。
え、意外とかかったなって? そりゃ移動し続けた訳ではないからな。小島を見つけては立ち寄って小島に生き物がいればそれを狩り、生き物がいなければ海の生き物を狩り、DPで購入したサバイバルグッズを使って調理して飯を食い、夜ならばキャンプで一泊。まだ日が出ているなら引き続き移動と言った感じの、イルカを探しながらのゆったりとした旅路である。
荷物? 全部影の回廊に仕舞ってある。だから見た目上、俺らは旅を舐めてるとしか思えない着の身着のまま状態なのだ。その実、あり得んくらいの荷物を持ってきてるんですけどね。流石に食堂のキッチンごと持ってくることは出来ないのでサバイバルグッズは買ったが、それだって鍋とかカセットコンロ目当てである。飯ごうとかナイフとかもついてきたが、ぶっちゃけ要らない。
ナイフより魔力の刃の方が鋭いし、ちゃんとした食器をいっぱい持ち出してきてるからな。なお、ベッドはない。テントと寝袋はあるけど。
ちなみに最初、試しに全速力でぶっ飛ばしてみてくれと軽い気持ちで言ったんだが、それはもう凄かった。
景色なんて見れたもんじゃなかったし、頂上なんていっくら見上げたって全く見えなかった我が家のある山の全容が、ほんの数十秒ほどで見えるようになってしまった。多分、全速力なら旅客機くらいの速度は出せると見て良いだろう。具体的な速度で言えば、900㎞/h程度。戦闘機には劣るが、それでも超速い。
なんせ翼で飛んでる訳ではなく、1500DPで購入した10人ほどが乗れる木製ボートと自分を水魔法で作り出したロープで繋いで運ぶ、という方法だからな。自分一人で翼で飛べば、それこそ戦闘機並みの速度が出せるのだろう。何せ、俺でさえソニックブームを出せたからな。俺の倍以上の敏捷値を誇るセーラなら、それくらい余裕だろう。
当然『こんなんじゃイルカちゃん探せへんやろ~!!』とクロが文句を言ったし、速過ぎて奏とシンシアが気持ち悪そうにしていたので、普通車の限界速度程度に抑えてもらった。180㎞/hくらいだな。これくらいの速度なら、俺達からすればもうのんびり感覚なのだ。奏とシンシアは、それでも速いと思っていたようだが、体調に異変が生じたりするほどではなかったので、その速度のままで進んでもらった。その道中でも色々とあったが、それはまた別の話である。ちなみにイルカは見つかりませんでした。
クロが『なんでや~!! も、もうちょい! もうちょい探そ!? なぁ!?』なんて俺の肩を若干潤んでいるように見えなくもない目で揺すりながら喚いていたが、それじゃ何時まで経っても進めないので、心を鬼にして満面の笑みで『行 く ぞ?』と両肩に手を置いてO・HA・NA・SHIして、諦めてもらった。まぁ実際には肉体言語を使うまでもなく殺気をぶつけてやった時点で頬を上気させ悦んで辞めたのだが。
何とも言えない感情になったけど、まぁ駄々をこねられるよりは良い。その分街に着いたら今日まで我慢していたのもあって相当発情するだろうが、即行で宿を借りていつも通り俺と奏の2人がかりで責めまくれば
というか俺と奏だって、我慢してきたのは同じだ。今日の夜は激しくなるぜ。……いや『いつも激しい』の間違いかも知れないが、そこは置いておく。言葉の綾というか何というか、そういうもんだよ。うん。
え、テントとかあるなら我慢する必要なくねって? いやだって、すぐ近くに子供が寝てるんだぞ。テントって個別じゃなくて、デカいの一個だからね。すぐ隣で子供たちやセーラが寝てる中おっぱじめるほど、俺らは見境なしではないのだ。
ちなみに金はファル硬貨をクロの妖術による炎で溶かして、純粋な金や銀に戻して持って来てある。何故ファル硬貨そのままではイケナイのか? 考えてもみろ。彼らは人類に人類と認められなかった知的生命体だ。人類圏で使われている硬貨など見せたらブチギレられること請け合いだ。換金など、とてもじゃないが不可能だろう。人類と亜人類は大規模な戦争こそしてないものの、人類は亜人類を下等と見下し、亜人類は人類を偉そうにと嫌っている。
故に、純粋な鉱物を持って行った方が良いだろうと判断したのだ。
そんなこんなで、俺達はいよいよ到着した。
亜人国家がある西の大陸に。現在時刻は、太陽が真上にあるため正午付近。空は青々としていて、雲はわずか。十分に快晴と言える空模様をしている。
そんな中俺達が降り立った新大陸はと言うと、前まで居た大陸に比べてかなり起伏の少ない平坦な印象を受ける大陸である。海を移動している時に山がほとんどないことを確認済みなのだ。
更に、自然環境もかなり違う。ここは地球で言えばサバンナっぽい感じだ。見渡す限り黄金色の草原(イネ科の親戚のようなものと思われる)が広がっており、背の低い広葉樹がちらほらと散見される。
違う部分と言えば、そこらをうろついている生き物のサイズが地球のサバンナに生息する動物より大きく、全体的に刺々しいということだ。
それは魔物でなくとも同じだ。魔物がイカツイ見た目をしているのは何となく想像がつくだろうが、動物も地球よりイカツイ。
ってか、そういえば動物見るのって、この世界に来て初めてだな! え、魔物と動物って何が違うの? 単純だ。
瘴気の有無、それに尽きる。人間時代の俺と魔王になってからの俺の違いと同じである。魔物はそこに存在するだけで人間にとって害なのに対し、動物は違う。とはいえ殺してしまえば同じ肉として食える。瘴気を放っているのは、生きている間だけなのだ。故に人類は魔物も食用として扱う。中には亜人を食らう人間もいるようで、それが人類と亜人類の確執を更に深めているのだ。
ここからパッと見えるだけでも、サイがメタリックになって3倍くらいのサイズになった魔物がちらほら……それからキリンの首が三叉になった魔物もいる。
「おっ? あいつ、瘴気放ってないな。動物か……」
えっ、でも……絶対強いじゃんあいつ。だってマンモスだぞ。しかも地球産のよりずっとデカい。高さ15mくらいあるんじゃねぇの……? 牙もめっちゃデカいし。えっ、魔物の筈の三叉首キリン踏み潰されたんですけど……。
「創哉はん。動物だからって、舐めたらアカンで。デカいは強いや。遅い遅い言うて的扱い出来るようになるんは、ある程度の戦闘技術を身に着けてからの話や」
呆気にとられていた俺の肩を後ろから叩き、クロが教えてくれた。
「……うん、俺も今思った。動物だから、魔物だから、じゃねぇわ。締まってくぞ。油断してっと
6人で頷き合う。
「んでクロ、亜人国家があんのはどっちなんだ。知ってんだろ?」
「あ~、すまへんのぅ。うちが亜人国家のこと知っとったんは集落のジジィが亜人国家の奴に仕えとったからなんや。よぼよぼになり過ぎて戦力外になって、土産持って帰ってきた。ドワーフの火酒もそん時呑んだんや。せやから、うち自身はそんなに知らんのや亜人国家のこと。時期はうちが集落を出るちょっと前やから、内情が大きく変わっとるってことはあらへんやろうけど」
クロは気まずげに右手で首を掻きながら、目を逸らして言った。
「あ~、そうだったのか。まぁいいさ! ん~、でもどうすっかな」
俺が困って腕を組みながら空を見上げ目を瞑って悩んでいると、セーラが鶴の一声をかけてくれた。
「しょーがないから、お姉さんが空から様子を探ってきてあげるよ! あっ、飛行魔法の練習ついでにマスターも来る?」
ふと思いついたように、見上げるくらいの高さに滞空したまま問いかけてくるセーラ。
「練習自体はしなきゃだが……お前の速度についてくのは無理だ。足を引っ張るのは御免だし、さっさと街に辿り着きたい。ここは任せるよ」
「あはは! それもそっか~! おっけ~! じゃあ、ちょっと行ってくんねぇ~!!!」
そう言って、セーラがソニックブームを出しながら瞬く間に見えなくなったと思った次の瞬間。背後から聞こえてくる大きな鳴き声。
「……ぱ、パオーン……って言った?」
「う、うん。聞こえた」
「あぁ~、間違いないわ。すぐそこに
「こ、怖いですぅ……!」
「シンシア姉様、母上! 私の後ろに!!」
そこには、あからさまに理性がないですって感じに目を血走らせて猪突猛進してくる先程見たマンモスらしき
「だ~もうっ!! 早速トラブル続きだなぁ!! やるぞお前ら!! 戦闘開始だぁぁぁ!! 今日の昼飯にしてやんぜ!!」
こうして俺達の新大陸での生活は、早速のトラブルから始まるのであった。
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