19話 ガチャ祭り


 うちの新たな住人となったこの娘たちは、皆例外なく可愛い。

 奴らがクロムウェルの嫁にする為に街の綺麗所を攫って来てたのだから、当然だな。まぁそんな折角の美しさも、あそこでの生活で台無しになってしまっていたけれど。でも、魔法の温泉に浸かり本来の美を取り戻してみたらどうだ? こんなにも可愛らしい。


「あっ、そうか!!! ユニークスキル持ちが多かったのって、そういうことか」

「わっ!? な、なに? 突然どうしたの?」


 いつかのように玉座に座る俺の膝に座っていた奏が、俺の突然の叫び声に驚く。


「おぉ、ごめんごめん。いやちょっと気付いたことがあってさ」

「気付いたこと?」

「あぁ。奏も含めて、村に捕らわれてた娘たちってユニークスキル持ちが多いだろ? だって奏とリーリエで既に2人もユニークスキル持ちだ。他の娘たちも、まだ解析してないから知らないだけで持ってる娘もいるかもしれない」

「うん、そうだね。けど……それが?」

「村の目的は、クロムウェルの嫁を探すためだろ? んでクロムウェルは『獅子騎士ライオネル』とまで呼ばれた凄腕の騎士だし、領地の特性的に危険、だから強力なスキル持ちも探してたんじゃないかな。反骨心が強くて自分に従わなさそうだったり、好みに合わなくなった娘は捨てて」

「……そうかもね。実際、私も捨てられたし」

「おかげで奏と会えたんだ。俺は感謝してるぜ? 運命って奴に。あいつらを許しはしないけど」

「ふふっ、うん/// 私も感謝してる。運命に」


 どちらからともなく互いの額を合わせ、軽くキスをする。


「早く……目が覚めれば良いね」

「っ、あぁ……そうだな」


 突然何を? と思っただろう。

 俺も一瞬思った。けど分かる。奏が言っているのは、俺が拷問から救い出した少女のこと。眷属化によって身体の傷は癒えた。眠る彼女を奏に頼んで魔法の温泉にもいれてもらった。けれど、未だ目覚めないのだ。

 打てる手は打ち尽くした。そして『解析』によって生きていることは確認済みだ。故に待つしかないというのが共通の見解となり、定期的な様子見を続けるのみで一旦放置しているのだ。ホント不思議だ。『解析』では健康体そのものだったなのに、何故目が覚めないのか……。精神の問題? 分からんな。


「ねぇ創哉、あの温泉って……そのガチャ? っていうので出したんでしょ?」

「ん? あぁ、そうだぞ。試しに引いてみるか? 4794DPあるから、10連が4回引けるぜ!!」

「良いの? うん!! 引いてみたい!!」

「おし来た!! いっちょ回したれ!!」


 そう言って、メニューを操作し10連ガチャのページを開く。


「うん! じゃあ、行くよ?」


 奏の指が近付いていく。『10連ガチャを引きますか? YES/NO』という問いのYESに。

 そうして1000DPが消費され、空間に光の粒子が出現する。

 その結果は――。


1…モップ

2…デッキブラシ

3…園芸用シャベル

4…川釣丸 SR

5…クマのぬいぐるみ

6…フランス人形

7…たわし

8…たわし

9…箒

10…サウナ室 SSR


「おお!! サウナ室だってよ!! ……って、また温泉の仲間か。凄い偶然だな」


 川釣りか。確か領地の中に川流れてたな……今度やるか。園芸も良いな。畑とか花壇とか作るかな。このままじゃ殺風景だしな。家庭菜園、やったことないけどチャレンジしてみるか! ちょっと楽しくなってきた。


「え~っと……サウナって、あったかい部屋のことだっけ」

「うん? あぁ、そうそう! 詳しくは知らんけど、なんか身体に良いらしいぞ。女の子たちで入りな」

「創哉は入らないの?」

「ん? あぁ、別に美容に気ぃ使ってる訳でもないしなぁ」

「そっか。ん~、でも一緒に入りたい! ダメ?」


 上目遣いで首を傾げる奏。その直毛な金髪が、肩口からサラリと流れる。ん~、めっっっちゃかわええ。天使かな?


「でも、遠慮した方が良いだろ。お前と2人きりで入るってんなら別に良いけど」

「そのくらい気にしないよ~。あの娘たちもその方が喜ぶし、今晩一緒に入ろ? 温泉もサウナも」

「あぁ、そう? まぁいいか。皆10歳以下だし」

「うんうん! そうしてあげて! ねえねえ! もっと引いてみようよ!!」 

「ん~? しょうがないにゃ~。でも! どうせだから他の奴に引かせてみようぜ」


 そう言って、クロとリーリエ、それからトゥワネットを思念話で呼び出す。


「なんやぁ主? うちだけやなかったんかい」

「この顔ぶれ、何か意味があるのですか? 創哉様」

「ちょっと来てくれって言われたから来ましたけど……」


 3人とも、困惑しているようだ。

 ちなみにクロの服装は、着物である。黒色を基調として朱色で縁取られ、無数の華と般若が描かれた上着に黄色の帯。そして赤い袴である。胸元はかなり際どく、ギリギリのラインである。

 ぶっちゃけかなり似合っている。クロの凛々しさやら妖しいエロさやらを実に見事に表現している。まぁ、俺には奏がいるから思うだけで言わないけど。

  

「単刀直入に言おう。皆一回ずつ、これを押してくれ」


 そう言って、お楽しみはとっておく的なノリでクロを後回しにしてとりあえずトゥワネットに10連ガチャのページを見せる。


「さぁ」

「え……あ、はい。良く分かんないですけど、えいっ!」


 それから間もなく、3人の10連ガチャが終わった。

 中でも特にめぼしいものを紹介すると、


・夜叉の直刀 SSR byトゥワネット

・スキル書『掃除屋』 SSR byリーリエ

・毒婦の鋼糸グローブ SR byクロ


 この3つである。

 それぞれの効果としては、


======================

『夜叉の直刀』…刃鋭化やいばえいか、不壊の効果が籠められている。魔力を籠めることで切れ味がより鋭くなる

『掃除屋』…自身がゴミと認識したものを掃除道具によって掃除できる

『毒婦の鋼糸グローブ』…指先から猛毒が籠められた鋼糸を射出できる

======================


 こんな感じである。

 

「ふむ……とりあえず、刀はクロ! お前が使え。同じ夜叉だし、偶然だがお前の為にあるような刀だ。それからグローブはリーリエが使うといい。糸の扱いは得意な方だろ? 掃除屋はトゥワネットが覚えな。それぞれ練習して使いこなせる様になってくれや! 折角結構良さげなのが出たんだからな」


 にしても、掃除屋の説明文。

 自身がゴミと認識したものを……って、まさかな。なんて思いながらも、俺は頭の片隅で、ある言葉を連想せざるを得ないのだった。




 汚物は消毒だ~!!

 

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