14話 怖い、マジ怖い
あれこれ考えた結果、この村はダンジョンの領地内にあるものなんだし売れるんじゃね? と考え、売却モードにして適当な建物に触れてみた。
すると予想通り売却可能。なんと建物一つで5000DPも獲得出来るようだ。俺のパンツ以外の服を売っ払っただけで1000DPも獲得出来たのに案外低いなと思うかもしれない。
しかし、俺の服はこの世界には存在しない文明によって生まれたもの。地球じゃ大したことなくても、この世界からすればかなり価値があるのだ。
故にそれだけの高値がついたのだろう。知らんけど。まぁそれはともかく皆に相談した結果、この村の建築物は全て売り払うことになった。やはり良くない思い出があるのでこの村で暮らしたくはないようだ。当然だな。
で、出来たDPで我が家たる洞窟を拡張することになったのだ。
「さて、んじゃいっちょ売っ払うか! お待ちかねの額はぁぁぁ~? じゃん!!」
全部売っ払うことが決定したので、早速この村全てを指定して売却を選ぶ。
表示された獲得予定DPは、
「ふぉぉぉおおお!!? 60000DPやとぉぉぉ!? すっげえええ!!」
なんと60000DP! これだけあればSSR以上確定の10000DPガチャが6回も回せる!! なんて額だよ。頭可笑しなるで。
「ひっひっひ! 主ったら、そんな
「……んんっ、見苦しい所を見せたな。ともかく! これだけあれば改築も余裕だ!! やっと岩剥き出しの洞窟状態から脱出出来るぜ~」
「あ、それなんだけど創哉、その前に……服どうにかした方が良いよ」
奏にそう言われて、やっと気づく。
「うわああぁぁ!? そ、そうだったああ!! 俺今全裸なんだったあああ!!! ご、ごめん……見苦しかったよね!? ってか、こんな変態としか思えないような奴を良く信じてくれたね? 君達」
「ううん! おじさん達と違って筋肉いっぱいでカッコいいから全然嫌じゃなかったよ! それにアソコもおじさん達と違って汚くないし!!」
「それに臭くもない!」
ね~! と仲良く笑い合う幼女たち。
こんな幼女に俺の息子談義される日が来るとはな……とっても複雑な気分。今更年相応の無垢な感じには出来ないし。まさか記憶を消す訳にはいかないしな。
まぁ記憶消去能力なんか持ってないけど。
え、辛い記憶なら消してしまった方が良いんじゃないかって? それは良くない。最初は良いかもしれないがいずれ自分から空白の時間を求めるようになる。
記憶を消して一度正常な精神に戻ってから記憶を取り戻せば、時間をかけて慣れたのとは訳が違うから心が壊れてしまいかねない。
だから記憶消去だけはしてはいけない。幾ら辛い過去であっても。
それに、乗り越えた覚悟や想いを無駄にしてしまう。それが一番嫌なのだ。
「ま、まぁとにかく服買うか……」
「あ、それなんだけどお兄ちゃん! 私、元々服屋の跡取りだったから生地さえあれば縫えるよ!! これでも結構評判だったんだから!」
そんな予想外の一言を発したのは、青髪金目の年長組。大半が7歳や8歳の所、この娘は10歳だ。
「そうなのかい? なら、生地だけ買ってお願いしようかな。その方が安上がりだし皆の分も用意出来る。頼めるかい? あっ、針とか糸とかも買わないとだね」
「ううん! 要らないよ! 生地だけあれば良い! 私、スキル持ちなの!!」
なんと意外。
半ば反射的に解析を行う。
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名前:リーリエ・ロンメル 10歳 女 レベル:1
種族:人間
筋力:4
耐久:3
敏捷:5
魔力:200
器用:580
能力:ユニークスキル
『魔縫師』
…服飾鑑定,服飾作成,解体加工,魔法付与
称号スキル
『天才裁縫師』
エクストラスキル
『房中術』
装備:きわどい服・上下
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え、この娘もユニークスキル持ちやんけ。魔法付与? やばっ。天才とか書いてあるけど。この『村』の人材どうなってんの? 奏もそうだけど。
「うんうん、なるほど。それなら任せるよ! 宜しく頼む」
「うん! まっかせて!!」
嬉しそうに飛び跳ねるリーリエ。
この村の娘全員が名無しって訳じゃないのか。ってか、そりゃそうだよな。以前は普通に暮らしてたんだから。
あれ……? そう言えば、なんで奏は名前がなかったんだ? 奏も5歳までは普通に暮らしていた筈。父親はドクズらしいけど母親は普通だった筈。なら名前くらい付けて当然だ。なんかスルーしてたけど、よく考えれば可笑しいぞ。
「な、なぁ奏……。奏って、この村に来る前はどんなとこに居たんだ?」
「え? ん~、あんまり覚えてないけど。ゴミ溜めみたいな所だったかな」
やっべぇ、予想以上の答えが返ってきた。サラリと言ってのけてくれちゃったけど、俺なんて反応すればいいの。イメージとしてはスラムをもっと悪化させた感じの所に住んでたってことだよな? え、この娘の過去悲惨過ぎない? この『村』での生活だけでも終わってたのに。
「そ、そうか……じゃあ、名前がなかったのもそれが原因なのか?」
「あぁ~、そういうこと? 気付いてると思ってたよ。うん。そうだね。私が昔住んでた所だと名前なんて皆持ってなかったよ。お父さんもお母さんも、名前はなかった。この村に来てから知ったんだ。名前」
「……そうか」
納得がいった。
そういうことなら、この娘のことをちゃんと愛していた筈の母親でさえ名を授けなかったのも理解出来る。
「じゃあ、そんな中でも奏のことを愛していたお母さんは、すっごい偉いな」
「うん。本当に、大好きだった。……そう言えばさ創哉! おじさん達は具体的にどうするの? 生かして責め続けるのは分かったけど」
「うん? あぁ、それならDPで地下フロアを購入して、そこの拷問部屋にでもぶち込んどくつもりだ。なんか拷問方法の案があれば聞くぞ。皆もどうだ? なんかイイ感じの案ないか? どんどん言ってくれ! 俺が許す」
「あっ、それなら! ねぇ鬼のお姉ちゃん!」
「なんや? それと、うちは黒夜叉やで。身内になったんやから、いつまでも鬼のお姉ちゃんじゃのうて、名前で呼びや」
「あっ、うん! じゃあクロお姉ちゃん! クロお姉ちゃんは妖術が使えるんだったよね?」
「おう、せやで」
「じゃあさ……」
ごにょごにょとクロの耳に囁く、まだ名前を知らないちょっと青色っぽい黒髪の娘。
「ひひ、ひっひっひ!! エッグいこと考えるのぅ~! ええで! やったる」
大笑いするクロ。エグイって、彼女は何を言ったんだ?
「クロ」
「ん~? あぁ、見てのお楽しみ……と言いたい所やが、言っといた方がええかのう。まぁ簡単に言えばうちの妖術による幻覚で、ボンクラ共同士でレイプさせ合うんや。互いに相手のことはこの娘らの誰かに見えるようにするっちゅうな」
こ、こえ~!!! 怖気が走ったぞ。鳥肌立っちまった。
「す、するのは良いけど……俺んなクソきたねぇ光景見たくねえぞ。配慮はしてくれよ?」
「当たり前やがな! うちも見せとうないし、見たくもないわ。この娘らは喜んで見るだろうけどのぅ。し~っかり管理するようにしとくわ」
「おう。そうしてくれ……」
いやぁ~、まだ鳥肌立ってる。怖すぎる。キモすぎる。汚すぎる。ありえんティーですわ。
「ま、いいや。んじゃあ帰るぞ皆! 着いたら皆で温泉にでも入ると良い! その間に俺は家を拡張しておく」
そうして、俺達は相棒の待つ我が家へ帰還したのだった。
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