2話 oh、なんてこったいorz
解析結果やメニューウィンドウのダンジョンの項目を読み進めていると、突然緊急地震速報のような不協和音が、脳が割れんばかりの爆音で響いた。
「これは、まさか……!?」
慌ててマップを確認する。
するとゴブリンが一人、
「くっそ、いきなりかよ!! まだ俺何もしてねぇぞ!」
まずは、1回ガチャだ。それの次第によっては外の世界へ打って出る。そして領地拡大だ。良いのが出なければまたその時考えよう。
なんて考えていたのに!! だが、実際問題侵入してきてしまったものは仕方がない。奴は俺の
(どうする! どうすればいい!?)
なんて考えながら、ゴブリンに気付かれないよう静かに、身を縮めてとにかく耳を澄ます。奴は一人だ。もしかしたら、ということもある。
「まよった……。みんな、どこ」
聞こえてきたのは、ひたすら困り果てたような声。
(キターーーーッ!! こいつ、侵入者じゃねぇ!! 迷子だ! よしっ! これならどうにかなる!!)
すぐさま駆け出し、ゴブリンの前に躍り出る。
「君、迷子? 親御さんとはぐれちゃったのかなぁ? この中にはいないよ!」
これで帰ってくれるだろ!!! そんな期待を胸に、俺はニコニコと笑いながら後ろで手を組み、止まらない冷や汗を誤魔化した。
「お前、人間? 美味そう!! 食わせろ! 人間ーーーッ!!」
そう言いながらゴブリンは、ル○ンダイブの如くとびかかってきた。
「ダメだった―!! くっそ!!」
戦略的撤退!! 今はこれしかない! 俺は今素手なんだ。武器などない! 地面に落ちていた石ころをゴブリンの目にぶん投げてから、奴に背を向け全速力で逃走する。
(くぅ~、どうすりゃいいんだ……)
マップを見ながら考える。奴が今いる位置は、
しかも、ただの道だ。ちょっとぐねぐねガタガタしてて歩きにくい上距離だけは長いが、それだけだ。全く迷うことなく進むことが出来てしまう。
(……よし。やはり、ここはガチャだ! それしかない!)
一体どういうことなのか?
ダンジョンの項目には、以下のものがあった。
======================
所持DP:100
DPショップ
ガチャ
魔物渦設置(設置可能魔物渦なし)
内装変更(変更可能内装なし)
外装変更(変更可能外装なし)
特殊効果付与(付与可能特殊効果なし)
======================
この通り、まだほとんど解禁されていないのだ。
しかしDPカタログを覗いてみても、所持DPで購入できるような代物は碌なものがなかった。たわしやらモップやら、その程度しか買えなかったのだ。
一番安い剣すら買えなかった。しかも、魔物渦がないから配下となる魔物を召喚することすら出来ないのだ。それなんてクソゲーだよ!! ダンジョンマスター系のテンプレ的に考えたら、とりあえず魔物召喚してタワーディフェンスだろうよ!
なんで俺こんなことになってんの!? クソッ! しかも、落とし穴なんかのトラップは特殊効果に分類されており、それも使えない。
ぶっちゃけ詰んでいるとしか言えないこの現状、ひっくり返せるとしたらガチャしかないでしょうよ!!
といってもガチャにも種類があり、以下のように分かれている。
・シングルガチャ 100DP 確定なし
・10連ガチャ SR以上一つ確定
・10000DPシングルガチャ SSR以上確定
・10000DP10連ガチャ LR以上一つ確定
・究極ガチャ 所持DP全消費(最低1000000DP) ゴッズ確定
だから、分の悪すぎる賭けだ。
けれど現状俺が出来る事と言えば、ガチャくらいしかないのも事実。流石にジーパンにポロシャツで魔物とステゴロしたくはないからな。
なんとか剣の一本でも、あわよくば強力な何かをッ!!
(よし、行くぞ……。当たって砕けろだ! 来い!!)
シングルガチャをタップする。
すると、眼前にある
「な、ななななな……!? ま、マジかよ……。たわしって、たわしっておい……。これで何をしろとォォォ!? くっそおおおお!!!」
あまりに悲惨過ぎる現実に打ちひしがれ、俺は思わず地に倒れ伏し叫ぶ。
ゴブリンが今も着々と近付いてきていることなど、すっかり忘れていた。
「さ、流石にもうちょい良いのが来ると思っていたッ……!! どうしよう。くそっ! あぁもう! 今の俺に出来ることなんか……ハッ」
そう言えば、DPショップでは不要物をDPに変換出来るって書いてあったな。
「ひひ、ひひひ……こうなりゃやってやる。俺の服なんか要らねええええ!! パンツ以外全部売っ払ったらあああ!!」
半ばやけくそな思考でジーパンやポロシャツ、靴、靴下を全て脱ぎ捨て、DPショップから売却の項目を選び、現れた箱のようなモノにぶち込む。
すると、そこには1000DPの文字が!!
「せ、1000DP!! これなら10連が引ける!! やった! これで勝つる!!」
躊躇いなく売却し(※今も迫る敵を前に自ら防御力を下げ、墓穴を掘る愚かな所業である)1000DPを手に入れると、即座に10連ガチャをタップする。
その結果は――。
1…たわし
2…たわし
3…モップ
4…ぞうきん
5…お鍋のフタ
6…おたま
7…たわし
8…ぞうきん
9…リッチなマグカップ SR
10…魔法の温泉 LR
「ぐぉおおぉぉ!?」
天にも昇るかのようなテンションが再び地の底まで落ち、俺は再び倒れ伏した。
「ど、どうしたらいいんだ。俺は……もうダメだ。おしまいだぁ……。く、くそぉ……」
魔法の温泉とかいうめちゃめちゃレア度の高い、なんか凄そうなものは手に入れられた。しかしだ。こんなの、今あってもしょうがないのだ。
だって戦う手段に繋がらないんだもの。
「はぁああああぁ~~、しょうがない。パンイチでステゴロやるしかない。ご、ゴブリンぐらいなら行けるさ! きっと! って、あ!! ゴブリン!」
今頃思い出したアホである。
「あっ、人間! 食わせろーッ!!」
再びとびかかってくるゴブリン。
万事休すか――!? そう思った瞬間。
「こらー! 何処行ってたの!? こんなとこで人間襲って道草食ってないで、さっさと行くよ! 今日は宴があるんだから!」
「あ~? そうだっけ。はいはい」
「全くアンタって子は! ちょっと目を離すとす~ぐどっか行っちゃうんだから!」
突然後ろから現れた雌らしき胸にボロ布を巻いたゴブリンに頭をぶん殴られ、引きずられていった。
「た、助かった……のか?」
どうして、あの母親らしきゴブリンは俺の背後にある
「そんなマスター君の疑問にお答えしてしんぜよー! 理由は至って単純! 彼ら魔物が
急に俺の隣に湧いて出た相棒が、そう説明する。
「お、おう。そうだよな?」
「でも、その肝心の魔力がなかったら?」
「え……そりゃ、襲わない?」
「ピンポンピンポン
「……なんつーか、ラッキーだったな。うん。いやマジで」
結果オーライ、とはよく言ったものである。
まぁいいや過ぎたことは。とりあえず『魔法の温泉』の効果を解析しておくか。
====================
魔法の温泉…30分も浸かっていれば部位欠損すら完璧に再生させ、魔力が回復し、ありとあらゆる状態異常を癒す神秘の液体が贅沢に使われた温泉。設置アイテムなので、お湯は定温に保たれ、尽きることなく永遠に一定量湧き続ける
====================
「なんか思った以上にすげぇ。流石LR。けど今は使えねぇ……くそぅ」
だって、俺ってば元々再生持ちなんだもの。
これでコアのダメージも回復するならともかく、コアのダメージは時間経過でしか回復しないからな。それも一時間に1CBPとかいう微々たる回復力。
ぶっちゃけ超渋いと言わざるを得ない。
でも魔力の回復効果と状態異常回復はすげーありがたいね。将来的にはめちゃめちゃ役立つ超優れものだ。しかし今は求めてなかった……。
「ははは、これは困ったね。マスター君」
「助けてコアえもぉぉ~ん!! ガチャ爆死しちゃったあああ。どうしよぉぉ!」
「ふふふ、僕コアえもんです。答えは簡単だよソビタ君。今さっき出てったばっかだけど追いかけてってゴブリン達と殴り合っちゃえよ☆ YOU、やっちゃいなYO!!」
「はあああぁぁ~~、やっぱそれしかないよなああぁぁ……しゃーない。もう出来ることは何も無いもんな。ちょっと逝ってくるよ。先に謝っとくね相棒。ごめん死なせて」
「ふふ、そんな不安に思わずともマスター君なら平気だよ。ん~、まぁ不安に思うのも当然だし、それじゃあ一つアドバイスしておくね? マスター君。魔力操作は幾らでも応用が利くよ。マスター君の場合は特にね。分かってると思うけど、この世界においてイメージ力ってのは最も重要だ。だからねマスター君。オタク魂、ガンガン燃やしてこうぜ!! 他にはないアドバンテージだよ!」
そんな言葉に「お~」と適当に返しつつ俺は洞窟を出て、ゴブリン種やコボルト種、オーク種、バット種、スネーク種なんかが出る森に足を踏み入れた。
領地内ではないが隣接地域なので、マップによってどんな種族が住んでいるのか、どんな地形なのか、を調べることが出来るのだ。
ちなみにもし、ダンジョン内に何者かが侵入してきたら生物の表示アイコンが青丸から赤丸に変化する。味方の場合は緑丸で表示されるらしい。ちなみに俺自身は黒い矢印で表示されている。
相棒曰く、これも俺だけの特徴らしい。普通の
どうやら俺が元々持っている気配感知と悪意感知、それからコアに触れて手に入れた魔力感知のおかげで、このように表示出来ているらしい。
「ん~、特別強い魔力反応は……」
目を閉じ意識を研ぎ澄ませ、気配と魔力の両方でこのエリア内で最も強い反応を探る。
「いた!」
マップに表示されていた青丸の一つが、刺々しい青矢印に変化する。
「ん~、魔力の強さ的には勝てそう……だけど。それ以外が負ける要素の塊でしかないな俺。とりあえずはそこら辺の適当な奴で腕試ししよ」
そうして俺はひとまず見つけたエリアボスを放置して、一旦腕試しをしてみることにしたのだった。
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