第9話 ヒョウサクダンジョン攻略1
2076年9月 深月の森
弟子と再会したって思ってたら8月も終わったかぁ。なのになんでクソ暑いんだ?異常気象が終わらねぇ。
ま、EPOにログインすれば暑さなんて関係ないんだけどね。一応熱中症とかには注意が必要ではあるけど、ダイブ機が感知して知らせてくれる。便利な世の中じゃ。
さてログインして早速なのだが、知り合いからチャットが届いていた。
送り主は結構珍しいというか、バチバチに殺りあった奴からなので驚いている。
『チャット』
フレンド【ハーレイ】
〈ハーレイ〉gt7:23
久しぶりー!今日空いてるか?
〈フォール〉gt7:44
今日?空いてるけど?
〈ハーレイ〉gt7:46
一狩り行こうぜ!
〈フォール〉gt7:46
どこでだよw
〈ハーレイ〉gt7:47
予定ではヒョウサクかな
〈フォール〉gt7:47
あーどーしよっかな
〈ハーレイ〉gt7:47
別の用事ある感じ?
〈フォール〉gt7:47
いや装備探さなきゃでめんどい
〈ハーレイ〉gt7:48
おいw
そこは探せよw
〈フォール〉gt7:48
えぇー?
〈ハーレイ〉gt7:48
んじゃあフレーバー王国のレイテン冒険者ギルドに集合な
〈フォール〉gt7:48
まだ行くって言ってない
〈ハーレイ〉gt7:49
どうせお前暇だろ
〈フォール〉gt7:49
そうだけどそうじゃない
〈ハーレイ〉gt7:49
どっちだよw
〈フォール〉gt7:49
…………まぁそんなことよりさ
〈フォール〉gt7:50
他に人来るの?
〈ハーレイ〉gt7:50
逃げるな!卑怯者ー!
クランメンバーとワンダーランドのジャバさん来るよ
〈フォール〉gt7:50
どこぞの炭治郎やめろw
あ、ジャバちゃん来るの?w
〈ハーレイ〉gt7:51
そそ
誘った
〈フォール〉gt7:51
うーむ……じゃあ行こうかなぁ
〈ハーレイ〉gt7:51
よっしゃ!お前来るんなら最奥到達いけるぜ!
〈フォール〉gt7:52
流石に最奥はキツイだろw
あそこそんな潜ったことないし俺役立たずの可能性あるから
〈ハーレイ〉gt7:52
お前なら大丈夫だろw
メインアタッカーとして期待してるからw
〈フォール〉gt7:52
期待が重いんじゃ
と、まぁこんな感じで人類プレイヤー最強って呼ばれてるハーレイ君に誘われたんよね。
ていうかハーレイ君は暇なんか?レスめっちゃ速いんだけど?
ちなみにチャットする時に表記されてる時間はゲーム内での時間らしい。略してgt。芸がない。
それにしてもヒョウサクダンジョンかぁ。
控えめに言って面倒くさいところなんだよね。できれば潜りたくない。
装備着込まなきゃで動きにくいし、めっちゃ雪降ってるから視界も悪いし、出てくる魔物は鬱陶しい。
その分報酬は期待できる。珍しい鉱石とか魔物の素材とかね。
たぶんハーレイ君の目的もダンジョンの制覇っていうよりは素材とかなんだろう。
俺は面白ければそれでいい派だからそこまで興味はないけど、どうせならいい素材貰っておきたい。メイドちゃんたちに新しい武器作りなよーって言って、いい主人アピールしたい。
それにジャバちゃん来るんでしょ?絶対面白い。アイツ俺のこと目の敵にしてるから。
そんなわけで俺はヒョウサクダンジョンに潜るため、適した装備を拠点から探すことにした。
――――――――――
フレーバー王国 レンテンの町
いやぁ探すのに手間取ったなぁ。1時間くらいかかったぞ。
そっから急いでレイテンの町に来たわけなんだけど………早いところ冒険者ギルドに行かないとな。
さっきからハーレイ君からのチャットすごいのだ。まだ?まだ?まだ?って何回も来るの。途中から鬱陶しくて無視してるけどね。
俺が今いるフレーバー王国は大陸西部にある小国でプレイヤーが到達してる中では最前線とも言える場所だ。
ほとんど端っこであまりいい場所とは言えない辺鄙なとこではある。
そんなフレーバー王国にあるレイテンの町はどちらかと言えば、まだ賑わいのあるほうだ。
その理由はやはり高難易度ダンジョン、ヒョウサクダンジョンの存在だろう。大陸中の高位冒険者が集まり攻略することで得られる資源によって経済が回っていると言っても過言ではない。
特に彼らにとって命知らずの特攻を繰り返しながらも戦果をもぎ取ってくる
しばらく歩いていると冒険者ギルドの看板を見つけた。
そこはクラード王国の冒険者ギルドと比べると小ぢんまりしている様子。おそらく1階が酒場になっているのだろうが、それでも余裕で場所が足りるくらいに人が居ない。
高位冒険者が集まるとは言っても総数が少ないのだから当然と言えば当然だ。
”キィー……”
木製のボロい扉を開けると中にはすでに10人程の人間が集まっていた。
中心にいる大柄な剣士の男が今回のヒョウサクダンジョン攻略を持ちかけたハーレイだ。
『剣帝』の二つ名を持ちリアルの剣術を用いた圧倒的PSで人類プレイヤー最強とまで呼ばれるようになった怪物の1人。現在はクランを立ち上げ、有望なプレイヤーを集めて育成に勤しんでいるとかなんとか。
「やっほー、おまたせ。」
「お……!遅えよ、フォール。」
「わりぃ、わりぃ。装備探すのに時間かかった。」
「げぇ……!貴様も参加するのか!?」
そんな俺とハーレイ君の軽い会話に混ざってきたのは、いつぞやに什造の工房で鉢合わせたジャバちゃんことワンダーランドのジャバウォック君だ。
「やぁ、やぁ、ジャバちゃん。什造のとこぶり?」
「………そうだな。ジャバちゃん?……貴様が味方なら心強いが………遊びで背後から蹴ったりするなよ?」
「えー?そう言われるとしたくなるよね?」
うん、見た目は好青年なのに滲み出る小物感。嫌いじゃないよ。
それにしても腰に差している剣は什造が鍛えたものかな?業物の気配がする。
ただハーレイ君のものと比べると1つ格は落ちるかな?
たしかハーレイ君のやつってオリハルコン使ってたはずなんだよね。それから考えるとアダマンタイトとかミスリルとか?
どっちにしても名剣確定なんよなぁ。
「ハーレイさん?ホントに血の魔王を連れて行くんですか?」
俺がジャバ君の剣に思いを馳せていたらそんな声が聞こえてきた。
ソイツは見るからに真面目って感じの女の子でたぶんヒーラー。ハーレイ君のクランのメンバーで、魔王として有名な俺が加わって大丈夫か心配ってとこかな?
「大丈夫、大丈夫。フォールはこうゆう時PKとかしないし、回復いらずの優秀アタッカーだから。」
「おい………」
「えぇ……?」
思わず声出ちゃったし、女の子もなんてこと言うのって顔してるじゃん。
まぁ事実ではあるけど。俺は面白そうな時にしかPKしないし、自前の回復力っていうか生命力?はすごいらしいし、魔王らしく戦闘能力抜群よ?
「事実じゃん。そんなわけでフブキもそんな心配すんな。」
「ケッ……!」
「は、はい。ハーレイさんがそう言うなら。」
「そんじゃ全員集まってくれ。これから今回のヒョウサクダンジョン攻略について話していくから」
ハーレイは持ち前のカリスマとリーダーシップでこの場をまとめて、ダンジョン攻略について話し始めた。
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