第6話 Vtuberにインタビューされた4

2076年8月 深月の森

【突撃!?】噂の魔王様とおしゃべりするよ!!【インタビュー!】

#EPO#Novis#風泣 舞#インタビュー#血の魔王 

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 俺の黒歴史を生贄に視聴者からかなりの高評価をコメントでいただけているインタビュー配信。

 まぁこの配信見ている人たちも大概中二病だろ。

 そんな心境は置いておいて次の質問が風泣ふうなさんから飛んできた。


「ふふっ、あの血の魔王を弄れるなんて……ありですね。………ではそろそろ次に行きましょうか。えーっと日本サーバーで最強は誰ですか?」

「はい。日本サーバーで最強……ですか。結構難しい質問ですね。」

「そうなんですか?……確か有名な最強候補はフォールさん含む魔王の方たちと勇者の方たち、あと『剣帝』さんとか『土器土器心臓ドキドキハート』さんぐらいですかね?」

「うーん、俺の中ではほとんど魔王の奴らで決定なんですよ。こないだ勇者がこの屋敷に来たんでキルしましたし。」

「えっ…!?どの勇者です?」

「たしかキョウって名乗ってたはず。3人パーティー。」


 あの斬撃避けれない雑魚だった印象しかないんだよな勇者パーティー。それだったら『剣帝』とかあの『変態』は普通に避けてくるし強いと思う。


「あ〜!あの新進気鋭の勇者パーティーで有名な!」

「へぇー、有名だったんだ?それにしては弱かった気がするんだけど。個人的には『剣帝」とか『変態』のほうが強いぞ。」

「そりゃお二方は人類最強候補ですから。それにキョウさんのパーティーはハーレム形成してるっていうので注目集めてるので。」

「ハ、ハーレム……」

「そうです……そういえばフォールさんって土器土器心臓ドキドキハートさんのこと『変態』って呼んでるんですね。」


 当たり前だ。アイツ、ガチムチのヌーディストでバイ、そのクセ自らは紳士を名乗ってるバケモンだからな。しかもいい男判定するとゲームの中なのにケツを狙ってきやがる。

 まぁそんなこと言えるわけがないのだが。


「まぁな………色々あるんだ。……はぁ。」

「い、色々………聞かないほうがいいやつですね。」

「ありがとう。」


 俺の深刻な表情から何かを感じたのか、それともコメントに俺と同じ被害者でもいたか。ともかくその勘はこれからも大事にしてくれ。


「……うーん、それじゃあ……あ、フォールさんと♱堕天♱ちゃんだったらどっちが強いんですか?」

「……呼んだ?」


 どんよりした空気を変えるかのように話題を変えてくれた風泣ふうなさんには感謝しかない。

 だがその話題はやばいぞ、とか思ってたらいつの間にか我が家に侵入していた♱堕天♱がひょっこりとドアを開けて部屋に入ってきた。


「……まぁいいか。それで俺達のどっちが強いのか、だったよな。実はこれまで何回か戦ったことはある。」

「えっ!?どっちが勝ったんですか!!?」


 今日一の勢いで食いついてきた。そんなに気になるのかね?

 俺はしれっと隣に座ってきたヤツの顔を伺いながら答える。


「引き分けだよ。ただの一度も決着がついたことがない。ていうか魔王同士の戦いで勝者は誰ひとりいない。」

「ほへ〜、そんなに実力が拮抗してるんですか……皆さん相当レベルも高そうですしね。」

「そうそう、戦術とか技術とかが皆凄いからね。ちなみにレベルは結構差があるよ。」


 魔王の皆は戦い方が上手いしお互いのことをよく理解してるからなぁ。ただ俺達くらいになるとレベル差はそこまで問題じゃない。

 はてさて風泣ふうなさんもそのことを理解できるだろうか。


「……?レベル差ってそんな問題じゃなくない?」


 言っちゃったよこの人。♱堕天♱は自分中心の性格だし仕方ないか。

 だからモテないんだぞという呟きは心にしまう。


「うーん、そうなんだけどそうゆうのは自分で気づくのが大事だと思うんだよね。だから言わなかったのに。」

「♱堕天♱ちゃん………」


 ほら風泣ふうなさんも微妙な顔してるよ?

 とまぁ、そんなことより話を進めよう。


「それはともかく日本サーバー最強だよね?」

「あ、はい!」

「あれ?そうゆう話だったの?」


 お前はちょっと黙ってて。


「まぁ……はい。それで敢えて最強を決めるなら………ここは自分って言っておきましょう。」

「え……?フォールさんもしかして……」

「違うからね……?そこには時間の制限なし、戦場は都市で行うとかの前提条件ありでの話です。」


 危うく俺に変な印象がつくところだった。いや、既に猟奇PK魔とか言われてるっけ?駄目じゃん。


「なーんだそうなんですね。………じゃあそうゆう状況じゃなかったら負ける可能性もあるんですか?」

「かもね。でも1番汎用性が高いって言うかどんな状況でも最高のパフォーマンスができるのは♱堕天♱ですよ。」

「そうだぞー。私を崇めろ。」


 対面に座っている風泣ふうなさんも苦笑いを隠せてないしコイツやっぱ邪魔じゃない?大丈夫かなと考えていると応接室をノックする音が聞こえてきた。


”コンコン”


「失礼します。紅茶と茶菓子をお持ちしました。皆様どうぞお寛ぎください。」


 そう言ってポットから注がれた紅茶を俺と風泣さんの前に置くのは黒髪赤目で冷ややかな目つきと完璧な所作が特徴的なメイドだ。

 彼女の名はアンレイスといい、元貴族の娘だ。ゲーム内で2年前、現実で8ヶ月前に眷属にした少女でこの屋敷のメイドの中では3番目の実力者でもある。


「ありがとう、アンレイス。下がっていいよ。」

「あの?私のは?結構楽しみにしてたんだけど?」


 誰かが何か言ってるし風泣ふうなさんの苦笑いがさらに歪んで怖いことなってるけど些細なことだ。

 こういうのは変に絡んだ方が面倒くさいことになる。

 俺はまったり紅茶を啜り、茶菓子を口に放る。うん、上手い。


「ささ、風泣ふうなさんも食べな?」

「あ、はい。いただきます。……おいしい。」

「ちょっとーー!?私のは!?」

「「うるさいよ。」」

「そんなことでハモらせないで!?」


 ツッコむところそこなんだと思いながら俺は無干渉を貫く。誰だって面倒くさいのに自分から突っ込んでいかないだろう?

 今日の紅茶と菓子はうるさいのがいなければ最高だったとメイドたちに伝えておこう。きっと風泣ふうなさんも同意してくれるさ。


「ごちそうさまでした。」

「うぅ……私のお菓子……」


 茶菓子を食べ終わった風泣ふうなさんはご丁寧にごちそうさまをしてくれた。

 隣のコイツも少しは見習って欲しいものだ。だってコイツだけ茶菓子出てこないのって食べ方汚えし、食前食後の挨拶しないし、メイドたちに感謝の意を告げないという三拍子揃ってるからなんだよね。


「えっとそれじゃ続きを始めたいんですけど、他の質問にしますね。最強論争は長引きそうですしコメントの荒れ具合が酷いので。」


 そう言った彼女の顔からは表情が抜け落ちていた。怖すぎるって。


「これは個人的に私が気になってることなんですけど、大司教殺害事件ってなんですか?噂とか結構聞くのに調べてもろくに情報が出てこないんですよね。」


 その事件の名前は俺と♱堕天♱の表情を凍りつかせるのには十分であった。

 

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