第5話 Vtuberにインタビューされる3
2076年8月 深月の森
【突撃!?】噂の魔王様とおしゃべりするよ!!【インタビュー!】
#EPO#Novis#風泣 舞#インタビュー#血の魔王
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門をくぐり敷地内に入ると塀で隠れていた庭園が目についた。
「これ……庭園?……結構不気味だね。」
『コメント』
:人魔置いてくのねw
:いまだに金属音するw
:あれ?あいつ魔法職だよね?なんで金属音?
:わ、わぁー
:めっちゃ不気味w
:こんな毒々しい庭園初めて見たよ
:こんなこと言うのあれだけど趣味悪い
:ホラー感増してるw
どうにもコメント欄は
パッと目に付いた花は紫の花弁に血のように真っ赤っかなおしべとめしべの花で雰囲気百合だが、それらが群生しているとどうにも不気味で仕方ない。
他の植物も単体では綺麗なのだがまとめて植えられていることで不気味になってしまっている。
つまりこの庭園を管理している者は一言で言ってしまうとセンスがない。
そしてドアの前に辿り着くとキョドりながら立ち止まった。
「えーっと、入っていいのかな?………大丈夫だよね?」
ドアノブまで手を伸ばした時前方からガチャという音がした。
「ひぇっ…!」
”バンッ!”
「ぐぇ……!痛ったぁぁ!!」
奇跡的なタイミングでドアが開き、漫画のように弾き飛ばされてしまった。
その犯人は鼻を押さえながら悶えている
「え?…どゆこと?……あの、大丈夫ですか?貴方が
優しい声音だが低く鋭い声質は無意識に威圧感を与える。そんな声の主は吸い込まれるような漆黒の髪を目元まで伸ばし、先程のメイドのような赤い瞳を隠している整った顔立ちの青年であった。
腰を曲げてそっと手を伸ばす姿は親切なお兄さんと何ら変わらないのに、その雰囲気のせいか悪魔が悪事をそそのかしながら対価を要求しているようにしか見えない。
『コメント』
:入れ入れ!w
:大丈夫でしょw
:あのメイドさんもいいって言ってたし(適当)
:ん?w
:ん?
:ぶふぉww
:wwwwwwwww
:wwwwwww
:何してんの?w
:舞ちゃんから出てはいけない声が出てたw
:悶えてるの可愛いのにw
:残念臭すごいな
:コイツが犯人かw
:コイツ血の魔王じゃん
:見た目完全に中二病のそれw
:顔いいのにね
:あっw
:絵面がwww
:悪魔的すぎるwww
「うぅ……お恥ずかしいところを…私はVtuber事務所Novis所属の
「あぁ、いえいえ。『血の魔王』とか
呼ばれてますフォールです。先程まで視聴していたので大体のことは……それと先程のはすみません…フフッ」
「笑わないでくださいよ…!あ、そういえば♱堕天♱ちゃん………」
「ん?彼女たちのことならいつものことなので。………やっぱりナタリアにしたのは失敗だったか。」
「い、いつもの……」
いつものことに巻き込まれてこんな恥ずかしい思いをしたのかと考えると気持ちが沈んでしまう。
「あの……屋敷に入りません?どうせアイツらならすぐに来ると思うので。」
「あ、はい。おじゃましまーす。」
いつまでも玄関で話すわけにもいかない。覚悟を決め玄関をくぐると
「うわあ……すごい…!」
入ってすぐは大広間となっていて黒い綺麗な鉱石でできた床にレッドカーペットが敷かれ、天井にはキラキラと仄かに輝くシャンデリアがつけられている。壁には繊細な装飾があちこちに施され、どこで手に入れたのか絵画が飾られ華々しさが感じられた。
珍しいものに目を輝かせて放心している
『コメント』
:ここが血の魔王の拠点か
:すげぇな…
:ん?床って全部黒曜石か?
:天井のシャンデリアもクリスタル製のバカ高いやつじゃん
:絵画も相当な値段するやつばっかだ
:あれ?血の魔王もしかして結構すごい?
:ただの猟奇PK魔じゃなかったんだな
:こんな豪華なとこに住んでんのか……泥棒できない?
:舞ちゃん放心してんな
:企画進行大丈夫か?
コメント欄の多くがこの屋敷にあるもの希少性を理解している。
実際に血の魔王がこの屋敷を建築した際は、ゲーム内通貨で軽く経済が動くレベルの私財が投入されたとかなんとか。
いつの間にかコレクションされていた絵画もフロンティアで名画として知られるものがちらほら見かけられる。
――――――――――
俺は放心していた彼女に声をかけこの屋敷の応接室へ連れて行く。
それにしても、と隣を歩くVtuber
彼女のインタビューと配信を俺は許可したわけだが『人魔』こと♱堕天♱が暴れたり、ここに着く頃には死にかけみたいになったり、さっきは俺が扉を開けた先にいて無様を晒したりと色々心配だ。
「さて、ここですよ。」
廊下をキョロキョロしながら歩いている姿にほっこりするが応接室に到着したことを告げる。
彼女はかなり緊張した面持ちで部屋に入り、知り合いの家具職人に作ってもらった高級ソファーに腰掛けた。
時々独り言のように喋っているのは視聴者に向けてだろう。ちょっと怖い。
「うわ……何ここ。高級品しかないじゃん。私でも手を出せない代物がゴロゴロあるんだけど?」
そんな強盗に狙われそうなこと言わないでくれ。まぁ、強盗来てもウチの眷属メイドにボコボコにされるんだけどね。
「あはは、これでも苦労して集めたんですよ?素材集めて知り合いの生産職の人にオーダーメイドで頼んだり。あ、それと今お茶と菓子を用意させてるので……」
「あ、ありがとうございます。それじゃ、先にインタビューのほう始めちゃって大丈夫です?」
「いいですよ。」
俺は
ちょっと緊張するなぁなんて俺の心境も気づかず彼女はじゃあ早速とメモ帳を取り出した。
「それではまずフォールさんの自己紹介の方からお願いできますか?」
「えーっと、俺はよく『血の魔王』とか『史上最悪のPK』とか呼ばれてる人外プレイヤーのフォールです。種族は皆知ってるとは思うけど吸血鬼系。職業は剣士系……だと思う。後、魔王です。プレイヤーに魔王って何人いるんだっけ?たしか『人魔』も魔王だったはず。」
「魔王は……えっと日本サーバーだと5人らしいです。………あの人魔王なんですね…」
知ってて友達になったんじゃないの?とは思うがアイツが魔王ってことは実はあんまり知られてない。元普人族ってのも影響してそう。何したら人外認定くらうんだろ。
「では質問のほういきますね。………なんでPKっていうか悪役系のプレイスタイルをしてるんですか?」
うっ、なんとも答えづらい質問を。
俺はそっと溜め息を吐いて答えた。
「はぁ……えーっと結構恥ずかしいんですけど、EPOを始めた時に俺スケルトンを選んだですよ。それでどんなプレイをするかってなった時にスケルトンが一番似合うのって悪役じゃないですか?なので悪役ロールやろうって………感じです。若干厨二が再発したことは否定しないです。」
「あっ……フォールさんも男の子ですもんね。」
「やめて、ホントに効く。」
ただでさえ黒歴史量産してるんだ。変な同情が一番心に刺さる。
それからしばらく俺は厨二病で弄られた。共感性羞恥動画を作成するのはやめておくれよ?
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