第4話 Vtuberにインタビューされる2

2076年8月 深月の森

【突撃!?】噂の魔王様とおしゃべりするよ!!【インタビュー!】

#EPO#Novis#風泣 舞#インタビュー#血の魔王 

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「配信始まってから10分くらい経ちましたし、♱堕天♱ちゃん移動しましょう!」

「いいよー、行こっか。」


 配信開始してから10分という短い時間で視聴者は1万人以上増えている。

 どうにも掲示板のほうで風泣ふうな まいと『人魔』がコラボしているという追加情報が出回ったことが要因にあるようだ。

 それでもメインコンテンツは『血の魔王』へのインタビューだ。配信者としてそこら辺をよく理解している風泣ふうな まいは♱堕天♱に移動を促した。


『コメント』

:やっと移動かw

:人魔しっかり舞ちゃん守れよ

:舞ちゃんがんばえ

:深月の森ってやばいとこだっけ?

︰やられないでよ

:激やばw

:何気に人魔が戦うの珍しくね?


 視聴者からは心配するコメントがたくさん飛んできている。なお『人魔』を心配するコメントはゼロである。


「みんなありがとね!でも♱堕天♱ちゃんのことも心配あげて?」

「そうだぞー、このか弱い美少女のことも心配しろー」

「かよ……わい…?」


『コメント』

:は?

:はぁ?

:は?

:かよわい?

:は?

:どこがだよw

:全然か弱くない件

:舞ちゃんならともかくお前が言うなw

:は?


 後に風泣ふうな まいはこの時程視聴者と気持ちが一致したことは無いと語ったらしい。


 そんなことはともかく深月の森は危険な魔物が多く、毒持ちも生息しているかなり高難易度な場所である。『人魔』はともかく風泣ふうな まいに移動中にコメントを見る余裕はなかった。

 というのも今の彼女では苦戦するレベルの魔物が引切り無しに襲ってくるからだ。


「くッ…!なんでこんなに強いのがうじゃうじゃいるの!?」

「いやー、今日はわりと大人しいなー」

「えっ?………これで大人しいんですか?めっちゃ敵強いし数も多いんですけど?」


『コメント』

:((((ᐡ;゚Д゚ᐡ))))ガクガク

:おかしいおかしいw

:舞ちゃんよく戦えるね(諦め)

:人魔化け物じゃん

:魔法でワンパン???

:舞ちゃんつおい

:強すぎん?w

:え?あの、ブラッディーベアが魔法でワンパンされてるんですが?

:これが大人しいは感覚バグってるw

:ワイ結構ここ行くけどたしかにいつもより少ない

:しっかりバグってるやつおるな


 前を歩く♱堕天♱は一切表情を変えず淡々と魔法を放ち、一撃で襲い来る魔物を屠っていた。

 ♱堕天♱は手を抜いているとはいえ、それに食らいついている風泣ふうな まいの実力も相当なものだ。丁寧に装飾された一目で業物と分かる刀で魔物を斬り刻んでいく姿はまさしく舞の様。

 周囲から来る魔物をすぐさま察知し正確に魔法当てて処理している『人魔』のほうが異常なだけで。


――――――――――


 移動には結局1時間程かかった。魔物の処理をしながらというのもあったが、単純に深月の森の奥深くに拠点を構えられていたことが大きい。

 既に風泣ふうな まいは度重なる連戦で疲労困憊。視聴者がいることも忘れて四つん這いになっている。


『コメント』

:やっとついたー!

:遠かったな……

:おつかれさま!

:こんな奥地なの……?

:おつかれー

:四つん這い……

:珍しいものを見たw

:人魔息乱れてないのなんで?

:ばけものじゃ

:でっか

:この屋敷に血の魔王が……


「ぜぇ……ぜぇ……やっと…ぜぇ……着きました………死ぬ…ぜぇ……」

「大丈夫?……ひ弱だねー」

「あなたが……おかしい…ぜぇ……だけでは?……ぜぇ……」


 死にかけみたいな風泣ふうな まいと自分基準でしか話さない♱堕天♱の目の前には西洋風の暗い屋敷があった。

 この屋敷が見え始めた頃から魔物の襲撃はピタリと止んだ。魔物除けのアイテムがしっかり仕事をしている証拠である。

 目の前の屋敷は血のようなドス黒い赤と黒を基調にホラーチックな建築をなされている。まさしく吸血鬼の屋敷といった感じだ。

 屋敷の周囲を取り囲むように設置された塀と客人を歓迎するように半開きの門さえも雰囲気を作り出している。


「ぜぇ……ふぅ…落ち着きました。……なんていうか、凄く怖いお屋敷ですね……」

「だよねー、前聞いた時そうゆうコンセプトで建築してもらったって言ってたし。」

「へ、へぇー……ここでインタビュー…?大丈夫かな。」

「大丈夫大丈夫。私もいるし。」

「で、ですよね……」


『コメント』

:雰囲気あるな

:絶対幽霊とか出るじゃん

:怖すぎるンゴw

:西洋建築かぁ……誰が建てたんかな

:頑張れw

:舞ちゃん泣くなw

:フラグかな?

:あっw

:人魔てめぇw

:今回ばかりはナイスw


 そんなやり取りをしていると屋敷の方から誰かが歩いてきた。

 よく見るとその人物はメイド服に身を包んだ10代位の若い女性で、色が抜けたような白髪と妖しく光る赤い瞳が特徴的な美人である。


「あれ?誰か来ますよ?」

「げぇ……!アイツかよ……」


 すぐさま気づいた風泣ふうな まいが♱堕天♱に話を振ると何とも不穏な回答をした。

 彼女はこれやばいかもと自身の勘が告げてきて顔を引き攣らせるがどうすることも出来なかった。


「……風泣ふうな まい様、ようこそこのような遠方までお越しいただきました。御一人ゴミがおりますが、我々は貴方を歓迎しておりますよ。」

「ど、どうも……風泣ふうな まいです。歓迎ありがとうございます。……えっと、ゴミですか?」


 ♱堕天♱に対して何故か辛辣なメイドの言葉に思わずツッコまずには居られなかった風泣ふうな まい


「ちょっとー酷くない?私結構遊びに来てるのにー」

「あ?黙れゴミ…!おっと、失礼しました。では風泣ふうな様こちらへ。私はこのゴミを処理してきますので。」

「へ……?ひ、1人…?」


 早速フラグを回収をしてしまい若干涙も浮かび始めてしまう。なおコメント欄は大賑わい、メイドさんと♱堕天♱はバチバチである。


「……君に私を処理とかできるの?アイツの眷属の分際で。」

「あの方を……アイツ呼びするな、とッ!…言っている!」


”ギャギンッ!!!”


『コメント』

:誰か屋敷から来てない?

:だれあれ

:はっ!メイドだ!!

:まじだ!めちゃ美人さんだ!

:( ゚д゚ ) ガタッ

:デッ…!かいな

:おのれ、血の魔王…こんな美人さんを囲ってるのか

:うわっw辛辣

:ゴミw

:俺もあの視線で罵られたい

:それなw

:新たな扉開かれそう

:変態湧いとるが?w

:綺麗なフラグ回収w

:涙目舞ちゃんかわいい

:舞ちゃんprpr

:カタ:(ˊ◦ω◦ˋ):カタ

:なんで戦いはじめるの?

:恐すぎ……

:女って怖い……


 一部変態を見かけてしまった風泣ふうな まいはコメント欄を見なかったことにして泣く泣く1人で屋敷へ歩き始めた。

 背後ではすごい罵詈雑言や金属と金属が擦れ合う嫌な音が響いているが無視である。誰だってあんな化け物同士の戦いに巻き込まれたくはないのだ。

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