第12話 マイナス4
いきなりレベル3はまずかろうと思い、まずはレベル1からはじめた。
その方が魔力の制御もしやすいからだ。
僕はまだレベル3のマッサージには慣れていない。
力が暴走すれば、すぐに魔力切れを起こして気絶してしまう恐れもあった。
「それじゃあ、少しパワーをあげますね。シフト・セカンド」
指先の魔力が増し、じんわりと熱がこもると、お姉さんがピクリと反応した。
「はぁ……、いいね。あっ、そこ、そこ! そこをもっと……」
首の付け根のあたりをご所望か。
いろっぽい反応に気をよくして、僕は丁寧にマッサージをしていく。
ふむ、お姉さんの体温が少し上がってきたな。
「ねぇ、そろそろシフト・サードとやらをお願い」
少し鼻にかかった声でお姉さんが僕に頼んできた。
もう、しょうがないなあ……。
「
わかりました。もし痛かったりしたら、そう言ってくださいね。シフト・サード」
「ひゃんっ! なに……これ……」
お姉さんは白い肌を赤く染めて、快楽に身をゆだねている。
うわぁ、これぞ本物の赤鬼って感じだよ。
でもおもしろいな。
村長さんのときはなんとか魔力を送り込んでいた感覚だったけど、このお姉さんにはすんなりと僕の魔力が浸透していくぞ。
きっと二人のレベル差が段違いなのだろう。
「気持ちいいですか?」
「ん……、そのまま集中して続けて……」
お姉さんは口をきくのも億劫といった感じでうっとりとしている。
なるほど、たとえ相手が鬼女でも僕のレベルさえあがればトロトロにすることだって可能なわけだ……。
さすがにリゲータのときのような反応はないけど、もう少しレベルが上がればガチイキさせるのも夢ではないだろう。
強気の鬼女たちを「アヒン♡アヒン♡」言わせるというのは、ちょっと夢がある。
よーし、僕はやるぞ!
そんな決意とともに力んだら立ち眩みにおそわれた。
あっ、魔力の放出が大きすぎたかも……。
やべ、これは魔力切れを起こす兆候だ。
僕はその場に倒れ、またもや気絶してしまった。
またもや倒れてしまった僕だけど、鬼女たちの対応はオニだった。
まんまだね。
夜になると僕はまたもやマッサージに駆り出されたのだ。
しかも全員がレベル3のマッサージをご所望である。
「それでしたら三人が限界ですよ」
「ああ、かまわないさ」
大柄のおばちゃんが腕を組んでうなずいている。
みんなで話し合ってそう決めたそうだ。
囚われの身では文句も言えないので僕は素直にマッサージをして、夜もやっぱり気絶して牢屋に運ばれてしまった。
だけど、こんな生活ももう最後だ。
明日の朝、村長さんのマッサージをすれば僕は自由になれる。
とめどなく続く吐き気に襲われながら、それでも僕は未来を夢見ていた。
最終日は朝から雨が降っていたけど、僕の心は晴れやかだった。
もうすぐ僕は自由の身だ。
しかも、またもや僕のレベルが上がっていた。まだまだ成長期なのだろう。
なまえ:モガミ・カンタ(レベル3→4)
ジョブ:美容魔法師
ちから:3 すばやさ:4 たいりょく:3→4 かしこさ:5
うんのよさ:マイナス3→マイナス4
スキル:
マッサージ(レベル3):気持ちの良いマッサージ。疲労をわずかに軽減する。
洗浄水:髪や体を洗うための水。
……「うんのよさ」がマイナス4になっているじゃないかっ!
どうなっているんだよ、これ?
なにか恐ろしいことの予兆なのだろうか……?
不安は尽きないけど、スキルが増えたのはうれしかった。
「洗浄水」は指先から35度くらいの水を出すスキルである。
しかもこの水は純水らしく、不純物がほとんどなく、皮脂などを洗い流すのに適しているようだ。
飲料としても可能だけど、ミネラルは入っていないので、他の食品からとる必要があるようだ。
それでも、旅をしている間は役に立つスキルにちがいないだろう。
そうこうしているうちに朝食が運ばれてきた。
本日は大きなパン、焼いた鶏肉、キャベツのスープ、リンゴだった。
僕はパンの半分とリンゴを取り置いてビニール袋にしまった。
ここからコボンまでどれくらいあるかわからないし、途中でお腹がすくことも考えられる。
バッドラックとは腐れ縁の僕だから、できるだけ用心しておこう。
ご飯を食べ終わるとラジャーナさんが呼びに来た。
「村長がお待ちかねだよ」
よし、頑張ってマッサージして、ご褒美をもらって出立することにしよう。
すっかり通いなれた集会場へと僕は急いだ。
マッサージが終わると村長さんは満足のため息をついた。
「ふぅ、よかったよ。こいつを取っておきな」
鋭い爪の生えたゴツゴツした手から渡されたのは金貨だった。
大きさは一円ほどだけど、重量はもっとある。
たしか一円玉の重さって1グラムなんだよね。
これは、それよりずっと重い。
「よかったじゃないか、10万ミルト金貨だよ」
ラジャーナさんが教えてくれるけど、それがどの程度の価値かはわからない。
まあ、コボンの街へ行けばはっきりするだろう。
「ありがとうございます。どうもお世話になりました」
僕はみんなに頭を下げた。
さて、これからどうなるのかな?
勝手に出ていっていいのだろうか?
それとも僕が拉致された泉のところまで連れて行ってくれるのかな?
「出立前に牢屋に戻って荷物を取ってきたいのですが、よろしいですか?」
僕が質問するとラジャーナさんはにっこりと笑いながら首を横に振った。
「それなんだけどな、お前はもう少しここにいろ」
「はっ?」
「まだ、カンタのマッサージを受けていない者がいるじゃないか」
それは無理やりレベル3のマッサージをさせたのが悪いんじゃないか。
レベル1ならとっくに全員のマッサージは終わっている。
それに村長さんには二回も施術しているし……。
「約束が違うじゃないですか……」
「まあまあ、悪いようにはしない。だから、なっ!」
「で、でも……」
当然のごとく僕の抗議は受け入れられず、午前中はレベル3のマッサージをぶっ倒れるまでやらされてしまった。
ラジャーナさんが持ってきたお昼ご飯を僕はふてくされながら食べた。
ようやく自由になれると思っていたのに、牢屋暮らしはまだ続くようだ。
「カンタ、そんなに怒るなよ」
ラジャーナさんに頭を小突かれたけど僕は無視してチーズをはさんだパンを頬張る。
食べなきゃやってられない気分だったのだ。
「なんだ、まだ拗ねているのか?」
「だって、ひどいじゃないですか。毎日、毎日、気を失うまでマッサージをさせられて、これじゃあ体がもちませんよ」
「わかった、わかった。施術の人数は減らしてやるから機嫌を直せ」
その程度で喜べるもんか。
僕は返事もせずにナシにかぶりついた。
甘くてジューシーだったけど、それで機嫌が良くなるはずもない。
「しょうがないなあ。ほれ、いいことをしてやるから機嫌を直せって」
「いいこと?」
「ちょ、ちょっと?」
ぼろんとこぼれる大きなおっぱい、その乳首はきれいなピンク色だ。
ピンクの髪に真っ白な肌がよく映えている。
「な、なにをしているんですか?」
「だから、悪いようにはしないって言っただろう?」
血のように赤い舌で唇の端を舐めながらラジャーナさんが迫ってきた。
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