第17話 腕試
パイドパイパーの中心である大学施設。もちろん、他の建物同様に風化が進み、外壁には緑のツタが絡み付いて半分以上が苔に覆われている。
そんな大学の体育館内の倉庫には刀剣の他に長柄の槍に棒、
「これが、この島に散らばっていた武器? 思ったより本格的な武器が揃ってるんだな……」
倉庫の中の武器用の棚に並べられて保管されていた数々の武器を目の当たりにした
「そうです。この中から好きな武器を差し上げます。いいんですよね? 神父様」
「ええ。構いませんよ。
武器庫の管理は、リーダーの
「それにしても、武器を見てそんなに嬉しそうにするとは、
優しさに満ち溢れた表情と声色でロザリオが聞くと、
「んー、そもそも、俺の専門は棒術じゃなくて
「あ、そうだったんですね! てっきり、つかささんの幼馴染って話だったので、
「最初は俺も棒術をやってたから棒術も使えるけど、つかさに全然適わなくてさ。武器を変えたら勝てるのか興味があって槍術を極める事にしたんだよ。でも、結局つかさの棒術には一度も勝てなかったけどね」
「そうだったんですね。つかささん、強いですもんね」
「そうそう、向こうにいた頃は本物の槍なんて手にした事なくて、今こうして本物を見られて大興奮してるってわけだよ!」
「なるほど、そうでしたか。ここにある物は所有者がいませんので、どうぞ遠慮なさらずに手に取ってみてください」
ロザリオはにこやかに微笑んで言った。
「では、遠慮なく」
「これは……かっこいい」
持っただけで
狭い体育倉庫の中なので、すぐに振り回せないのが悔やまれる。
「これに決めました!」
嬉しそうに
「
申し訳なさそうに
「僕は構いませんよ!」
「なんか、すみません、
「なら、対戦用の棒はこれにしましょう。公平に僕が選んだ方がいいでしょうから」
「ありがとうございます! 神父様」
だが、辺りを見回すと、黄色い髪の女の子はすぐに2人の視界に入った。倉庫の奥でしゃがんで、何やら物色しているようだ。
「ミモザちゃん、行くよ?」
「あ、はーい!
得意気に短弓2本と矢が満載された矢筒を抱き締めて、ミモザは微笑んだ。選んでくれた弓は、ミモザ自身の腰についているホルスターに入っている弓と同タイプのようだ。
「ありがとう! ミモザちゃん! キミは気が利くいい子だね〜! よしよし」
ミモザは頬を赤く染め、一瞬ポケーっとしていたが、すぐにまた笑顔に戻った。
♢
体育倉庫から出た
棒の長さは1.8mほど。初めて触るはずの
「え?
「ホントですか?? 一度、つかささんの棒術を見た事がありまして、見様見真似ですよ」
「見様見真似で、その再現度か……」
そんな事を考えている間にも、
「こんな、感じ、だよね?」
「上手上手!」
しかし、
「ぎゃっ!?」
と、突然
「大丈夫??
「う、うん、調子に乗ったら失敗しちゃった……痛ぁ……でももう大丈夫! 大体のコツは掴んだから!」
「うわぁ……痛そう……やっぱりおっぱい大きいと不便な事もあるんだねー」
顔を歪め、ミモザは2セットの弓矢を抱えながら、自分の平らな胸を見て言った。
「ミモザちゃん、余計な事いちいち言わなくていいから」
大きな胸を擦りながらそう言うと、
「よし、じゃあ始めようか」
言いながら、
しかし、その何気ない動きを見た
「勝敗はどうつける?」
「え、ああ、そうですね、相手の身体に自分の棒を当てられたら勝ち。掠っても当たった事にしてOK! どうでしょう?」
「よし! それでいこう! 悪いけど、本気でやらせてもらうからね、
「では、私も頑張ります」
「では、開始の合図は僕が」
ロザリオが2人が対峙している横に立った。
そして2人が「お願いします」と言うと、ロザリオは静かに右手を挙げた。
「初めっ!」
ロザリオの右手が振り下ろされると同時に、
「うお! 手加減なしか!」
「さすが! やりますね!
口元だけ笑う
「
互いに楽しそうに、棒を打ち合う2人。体育館には、棒を打ち合う音と、床を踏み込む時の音だけが響いている。
ただ
そんな2人の戦闘を傍観者しているロザリオとミモザは、ただその迫力に息を呑んでいた。
「凄い! 2人は互角だね! 神父様!」
興奮したミモザは隣のロザリオに言う。しかし、ロザリオは「いえ……」と首を微かに横に振るので、ミモザは不思議そうに首を傾げた。
「次で当てちゃいますよ?
「そう上手くは行かないよー」
そう言って今度は
踏み込んで、
「甘いです!」
だが、
しかし、
「あ……!?」
「俺の勝ち」
得意気に
「はぁ……負けちゃった」
「
ミモザは
ロザリオも笑顔で2人に近付く。
「素晴らしい! まさか、能力と黄龍心機を使っていないとはいえ、序列5位の
「ありがとうございます、神父様。それじゃあ、
「はい。約束ですからね」
複雑そうな表情を浮かべ頷く
「僕からも頼んでおきますよ。
「ありがとうございます!」
「やっぱり
キャッキャと嬉しそうなミモザは、
「アーキタイプとは思えないほどに、素晴らしい逸材ですね、彼は」
ロザリオはミモザに聞こえないように配慮しながら、
「ええ。まさか、私が能力を使わなかったとはいえ、ここまで実力差が出るとは思いませんでした」
「相当な努力をしたのでしょうね。もっとも、
「私は素直に嬉しいです。あの腕なら、彼がパイドパイパーでアーキタイプだとバレずに過ごせそうで安心しました」
そして2人は、
喜ぶミモザに棒術を披露する
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます