第12話 序列
一方、空腹の限界に達していたカンナの為に、
「料理も手伝うよ、
「大丈夫ですよ、
やる事がなくなった
「水はどうしてるの?」
「森の中に小川があるんですけど、その水が綺麗なのでそこで汲んできてます。留守番組で夜の見張り当番がない人が昼間汲みに行く事になってるんです」
「確かに、俺とカンナが抜けて来た森の中にも綺麗な水の滝があったな」
「そうなんですよ。この島は至る所で綺麗な水が汲めるんです。神の恵みですよね」
話ながも手際良く
「あ、そうそう、お当番なんですけど、基本的に
「
「いいよ」
「よし! 決まり! あれ? でも、
「あ、はい、その通りです。東西南北4箇所の入口に2人ずつ配置してます。私と
「序列? パイドパイパー内に序列っていうのがあるんだ?」
「あ、そうなんです。まだ説明してなかったですね。一応強さを相対的に評価してペアの実力を均等になるように
「なるほど、序列1位はやっぱりリーダーの
「それが違うんですよー、序列1位は
「そうなんだ、確かに
「本当は、
「あー、
「3位です」
「
「はい。基本的にパイドパイパーの人達は武器を使いますので、序列は武器込みの戦闘能力で判断してます。なので、さっき言ったのは私の感覚です。皆が素手のみで戦う条件なら
「へー! そうなんだ。
棒術を使わなければ勝機はないと見積もっていた
「思ったんですけど、
急に1人でキッチンをウロついていたカンナが口を挟んだ。ウロウロしながらも、しっかりと
「私の序列は5位です……」
「え!? そうなんだ!!
衝撃の事実に驚く
「納得です。
「やっぱり、澄川さんにはバレちゃってましたか……でも、私の能力は
「へ〜、ちなみに、どんな能力?」
「秘密です!」
「えー、秘密かぁ〜。じゃあ、
「9歳の可愛い女の子ですよ」
「マジ?? そんな小さい子もここにいるの!?」
「はい。ここでの最年少は9歳のその子で、
「あ、そうそう、食料ですけど、パイドパイパーの食料は全部このカフェテリアにあります。なので食べる時はここに来て調理して食べてください」
「オーケー!」
「ただし! 食料の数には限りがありますので、1日の食事回数と、1回の食事量は制限されてます。具体的には1日3食まで、1回の食事はご飯1パックとおかず1つまで。使用したらその日付と食材名、そして使用者の名前をその冷蔵庫の扉に付いてる表に記入してください。今回は私が書いておきました」
「カレー!?」
「はい! どうぞ! ビーフカレーですよー!」
「うぉーー!! 味の濃いもの食えんのか!! ありがとう!!
「まさかここでカレーが食べられるなんて感動……いただきます!」
カレーの香りに興奮した
「凄い食べっぷりですね。慌てて食べると喉に詰まらせますよ。お水も飲んでくださいね」
そう言って
「常温ですがどうぞ」
「ありがとう!」
レトルトのカレーだが、普段食べるカレーとは違い、何倍も美味しく感じた。小さいが柔らかい肉や野菜も入っている。ピリ辛の刺激が口に残る感じが丁度よく、カレーを食べたという満足感を与えてくれる。常温の水も言う程ぬるくはなく、2人の身体に潤いをもたらした。
「澄川そんのさっきの力が“氣”の力なんですよね? とても興味深いものでした。中国拳法のような動きも気になりますが、あの力を使うとやっぱりかなり結構消耗するんですか?」
「あー、はい。さっきも少し話しましたが、私は他人の氣を感じることが出来ます。すぐそばの人の氣なら力も使わずにオートで感知するので消耗はしません。ただし、私から5m以上離れてる人の氣を感知する場合は、私自身の体内の氣を周囲に放出し、その放出した氣に触れた人の氣を感知する仕組みなので、対象の距離が遠ければ遠い程、放出する氣の範囲も広げる必要があり、その分消耗します。消耗すれば凄くお腹も減るし、眠くなりますね」
「なるほど、そういう仕組みなのか」
カンナの氣の力の仕組みを
「氣の感知というのは、
「はい。それとは別に、戦闘時は掌から氣を放出して、相手の皮膚に衝撃を衝撃を与え物理的に吹き飛ばす“
「そうか、つまり、ヒグマを倒した時は
「うん、凄い人なんだよ、お父さんは。だから私はお父さんみたいな強くて頭のいい人になりたいんだ」
「素敵です! 澄川さんならなれますよ! と言うか、もうなってるかもしれません! この武術家の揃ったパイドパイパーではトップクラスだと思います!」
「あ、ありがとう……」
淡々と氣と氣功掌について語っていたカンナだったが、急に何かを思い出したかのように、声が沈んだ。
「どうしたんだよ、カンナ。何だか元気ないみたいだけど。カレー食べても元気出ないなんてよっぽどじゃないか?」
「私さ、氣の力があるから強いだけで、本当はあんまり強くないんじゃないかな、って……。さっきも確実に勝つ為に氣を使って
「カンナ、そんな事気にしなくていいんだよ。氣の力はキミに与えられたキミだけの力だ。それを使って戦うのが卑怯だってルールはないじゃん。それに、キミは俺たちが食料を確実に手に入るように最適な選択をしてくれた。それは間違ってなかったし、あの場ではそうするのが正解だった。相手を倒して嬉しいって感情は、あの場面では存在しなくていい。食料が手に入って良かった。それで十分だよ」
「
何とかカンナを元気づけようと、
「でも、私、本当は
「感情的になって手を出した? 何言ってんだよ。カンナは俺が戦いたくても戦えない事を察して、俺の代わりに戦ってくれたんだろ? それに、冷静だったからこそ、あそこまでしつこく絡んでくる
弱音を吐いていたカンナは、
そして数秒沈黙してから、ゆっくりと
「ありがとう。やっぱり
笑顔だった。
カンナは心の底からの笑顔は
「だろ? 俺は他のアーキタイプとは違うよ」
「
「え? ホント?」
「ホントです! きっと凄く可愛がってもらえると思いますよ。襲われないように気を付けてくださいね〜」
「冗談に聞こえないからやめてよ、
笑いながら、隣から視線を感じた
「痛い! 謝ってるじゃないですか! 離してください!」
「ごめんなさい!! 許してください!!」
突然カフェテリアの外から、女の子の叫び声が聞こえてきた。3人は同時に何事かと入口の方を見る。
すると、顔に笑顔を浮かべた1人の女性が、両手で2人の女の子の髪を引っ張りながら、悠々とカフェテリアへと入って来た。金髪の毛先と長いオレンジ色のツインテールが無理やり引っ張られ、2人は苦悶の表情を浮かべている。
「どうもこんばんは〜! お初にお目に掛かります!
そう言って、
「まりかさん! どうしたんですか??」
「この子達、その新人さん達に意地悪したんでしょ? 性格悪いわよね〜同じネフィスの仲間なんだから仲良くすればいいのに。という事で、私が代わりに分からせてあげたのよ。ほら、謝りなさい。
3人の前に突き出された
「さっきは意地悪してごめんなさい……」
「ごめんなさい……」
「はい、良く言えました。えっと、
「許しますよ、だからもうこれ以上はやめてあげてください」
「あら〜優しい人達で良かったわね、
まりかが笑顔で言うと、涙目の
「ごめんなさいね、うちの子達が。でも、もう嫌がらせはないはずだから安心してね2人とも」
「あ、はい、ありがとうございます」
そばに来たまりかからは石鹸のような良い香りが漂う。緑色のくりくりとした大きな瞳。茶髪のショートカットに、服装は白いシャツに水色のサロペットと茶色のショートブーツを合わせた可愛くお洒落な女の子だ。
ただ、腰には左右に1本ずつ短い刀が提げられているところを見ると、ただの可愛らしい女の子ではないという事を物語っている。しかし、その優しげな雰囲気からは
「
「な、何ですか」
たじろぐ
「あら〜何で顔赤くしてるのかな〜? 私なんかに興奮してたらこの女の子ばかりの砦では大変な事になっちゃうよ?」
可愛子ぶりっ子な話し方で
「まりかさん、
「あ、ごめんごめん。今日はね、悪ガキを懲らしめがてら、キミ達に挨拶しに来ただけだから、私はもう行くわね。じゃあ、またね〜」
まりかはご機嫌なまま手をヒラヒラと振り、カフェテリアを後にした。結局、カンナに対してはチラリと一瞥しただけで声は掛けなかった。
「
「はい。
「『神眼』……!」
『神眼』というワードに、
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