第5話 同志
高さ5、6mほどの崖の上に見える人影。
徐々に昇る朝日によって、その姿が照らし出される。
「あの人で間違いない」
不意にカンナが呟いた。
「え? 何が?」
「森で私たちを見ていた凄い
「……女……の子?」
紫の着物のような衣装であるが、丈は太ももまでの極めて短いスカートのような構造で、黒いフリルが付いたゴスロリのような格好の女性だ。
だが次の瞬間、突如、
「『女の子?』って顔をしかめるなよ。ちゃんと女の子だよ、失礼な」
その女性の声は
いつの間にか2人の間に入り込み、馴れ馴れしくも
2人が突然の出来事に硬直していると、その女性は笑いながら前に歩いて行き、回れ右して
紫のゴスロリ風の着物。間違いなく数秒前まで崖の上にいた人物だ。それが一瞬で2人の間に移動した。
その原理はまるで理解出来ない。
今分かる事は、この女性に敵意がなさそうだという事と、女の子というには少し年齢が上だろうという事だけだ。
「ごめんなー。お前達の事は森の中で見掛けたんだけど、敵か味方か分からなかったからしばらく様子を見させてもらってた」
特徴的な八重歯をチラリと見せながら、楽しそうに言うゴスロリ衣装の女性。
格好はゴスロリだが、それ以外にゴスロリの要素は皆無で、茶髪の髪をアップポニーに纏められており、活動的な印象を醸し出す。身長は高く、173cmの
「やっぱり貴女でしたか。あの速さの氣は」
カンナの言葉に、女はニコリと笑い、傍の車のボンネットに腰を下ろした。
「あたしは
「俺は
「澄川カンナです」
「あー、カンナね。単刀直入に聞くけど、お前、エクセルヒュームだよね?」
「
警戒しながらカンナは質問を質問で返す。
「あたしの氣を察知したり、熊を素手で倒したり。ただのネフィスには出来ない芸当だからね。お前の能力はおそらく、自身の氣を操る能力。熊を倒したのも物理攻撃じゃないよね? 氣の力を使った内部への攻撃。違う?」
「……その通りです。貴女こそ何者ですか? エクセルヒュームですよね?」
「そうだよ。時速200kmの高速移動とそれに耐えれるスタミナ、ついでに5mのジャンプ力。それがあたしの『神速』っていう能力」
「時速200km?? 5mのジャンプ力?? すげー……。さっき狼の群れをボコボコにしたのも、その高速移動を利用したってわけか」
にわかには信じ難い能力だが、実際にその高速移動を目の当たりにした
「お前はネフィスじゃなさそうだよな。体力無さ過ぎだし。何でこの島にいる?」
「俺はフォーミュラの延命治療施設行きのクルーザーに乗ってたんですけど、途中事故に遭ってカンナと2人でこの島に漂着したんです」
「やっぱそうなんだ。でもあたしが聞きたいのは、何でアーキタイプのお前がそのネフィスしか乗れないはずのクルーザーに乗ってたのかって事。この島に漂着する奴は皆そのフォーミュラのクルーザーに乗って事故に遭って漂着したネフィスばっかだからね」
「え!?」
「どういう事ですか?? まるでフォーミュラのクルーザーは意図的に事故に遭って、乗客がこの島に漂着するようにし向けられてるみたいな口振りですけど」
「お! アーキタイプにしては察しがいいな、
「そんな……監禁? フォーミュラは何でそんな事……施設で延命治療をしてくれるんじゃなかったんですか?」
珍しくカンナが焦りを浮かべ
「きっと、
「え? ここが?」
「あたしも
「ちょっと待ってください、
「ちくしょう……あのラダとかいう研究員、知ってて俺たちをクルーザーに乗せたのかよ」
怯えるカンナと怒りに拳を震わせる
「とりあえずカンナ、あたし達ネフィスの砦に来る? お腹減ったでしょ? 食料はあるよ」
「え、いいんですか? それなら、
「んー、
「俺はネフィスの幼馴染の無事を確認する為にクルーザーに乗せてもらったんです。……ん?
待てよ? もしかしたら、つかさもこの島にいるのかも」
「つかさ? 苗字は?」
「
すると
「いる」
「え! 本当ですか!? 無事なんですか?? つかさは!?」
「ああ、ピンピンしてるよ。怪力の棒術使いだろ?」
「そうですそうです! 良かったー! 一瞬事故で死んだかもって思って心臓止まりかけたよ……」
つかさの生存が確認出来た事で緊張の糸が切れた
「良かったね!
声を掛けてくれたカンナの顔を見た
カンナと出会ってからようやく彼女の心の底からの笑顔が見れた嬉しさも相まって
「そっかそっか、お前、つかさを探しに来たのか。危険を冒して、勇敢だね〜!」
急にニヤニヤとし出す
「気に入った! お前も連れてってあげるよ。他のネフィス達にはあたしが話つけてあげるから安心しな」
「え! ありがとうございます!
「ほら、イチャイチャしてないで早くついて来い。先に言っておくけど、
「え? 覚悟……?」
首を傾げる
ただ、隣のカンナの顔が少しだけ曇ったような気がした。
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