世界のオワリ 6年1組 山田太郎

武功薄希

世界のオワリ 6年1組 山田太郎

 世界のオワリ

                          6年1組山田太郎


 山田太郎という名前はうそなのです。仮名というやつなのです。重いことを書くときは仮名の方がいいというのをきいたことがあるから、そうしました。

 きのうから、空の色がへんです。赤くて、黒くて、きもちわるい色。 大人たちが、いんせきが地球に近づいているってさわいでいます。

 学校は休みになりました。でも、ぼくはうれしくありません。 いじめっ子たちに会わなくていいのに、どうしてだろう。 最後の日なのに、ひとりぼっちなんです。

 町は、みんなあわてています。買いものに行ったら、おかあさんが知らないおばさんとケンカしてました。 パンもおかしも、ぜんぶなくなってました。

 いえに帰ったら、おとうさんとおかあさんが泣いていました。 ぼくをだきしめてくれたけど、なんだかこわかったです。

 夜になると、そらに大きな火の玉が見えます。 みんなが外に出て、空を見上げています。 いつもぼくをいじめていた子もいました。

 こわくなって、その子に声をかけようとしたけど、やっぱりできませんでした。 その子はぼくを見て、へんな顔をしてにげていきました。 やっぱり、最後までぼくはきらわれているんだと思いました。

 家に帰ると、かぞくでだきあいました。 でも、ほんとうはさびしかったです。 どうして学校で友達ができなかったんだろう。 もう、おそいのかな。

 夜なか、すごくゆれて目がさめました。 空がまっかっかです。こわいです。 となりのいえからさけび声が聞こえます。

 ぼくもまどをあけて、さけびたくなりました。 でも、声が出ません。 だれもぼくの声を聞いてくれないような気がしたから。

 あした、学校があったら、ぼくはまたひとりぼっちなんだろうな。 そう思ったら、なみだがでてきました。

 でも、もうだいじょうぶ。 だって、せかいがおわるんだもん。 いじめられるのも、ひとりぼっちなのも、ぜんぶおわるんだ。

 でも、最後に本当のことをいうと、ぼくはとっくにおわっていたんだ。ぼくの中の世界は何回もおわっていた。いじめられるたびに。そんで、もって、いじめられるたびに何回も死んだんだ。だからもうどうでもいいです。


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世界のオワリ 6年1組 山田太郎 武功薄希 @machibura

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