第16話 状況確認

 実は自動車を運転したのは理由がある。考えをまとめること、状況を整理してみること、そしてアイディアを出すこと。机上で頭を抱えながらよりも、運転したり便座に座っていたり風呂に入っていたりした方が、むしろ頭がすっきりしているなんてことは少なくない。今回、依頼主からの斡旋でここまで来たのだが、これまでの依頼が平穏とは程遠いものだったため、確かにしゃべる鳥とご対面しても腰を抜かすこともなかった。思い出したくもない依頼ばっかりだが、それらの中に超自然的あるいは心霊的な現象があったことで免疫ができていたのだろうか。ということで、お能登さまが単なるコスプレイヤーではなく、本格的に超常的能力者説が優位になったのだが、これまた困ったことにそんなお能登さまさえお使い状態であるということだ。つまりは俺と同じように依頼主がいるのだが、そこを探っても現状打破にはならない。よって、思考は生態学的に島の生物を探るという帰結。とりあえずは島内の朱鷺や卵の管理状況の確認だが、それは直接聞けない。だから間接的にすればよい。家にパソコンがあるから、ちょちょいとキーボードを叩いて管理PCにアクセスすればいいだけのことである。もちろんそれだけで見つかるとは思ってないし、お能登さまがしゃべる鳥と……

「お能登さま、もしかしてですけど、動物としゃべれますか?」

 車内で買っておいたお茶を嗜んでいたお能登さまはきょとんとして、

「志朗はしゃべれないのか?」

 逆に問われた。ということは明解。それならば手順が明らかになってくる。それをお能登さまに提示。お能登さまはふむふむと言った具合で、

「それを試してみよう」

 納得してしまった。

 ――ん? 俺はお能登さまの付添だったのだが、勝手に段取り決めて良かったのかな

 急に頭をもたげた。とはいえ、もう関わってしまった以上助言なりなんなりをしないと気持ち悪いのも確かだ。その前にランチのおいしい店を探すのが先決だった。

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