第13話 珍しい鳥、とでも呼んでおこう
ところで鳥。巻き物を肩翼で手に取ると、一つ首肯。手を離した。巻き物は中空に浮かび自動的に広がりだした。これ解析したら自動伸長式トイレットペーパーが開発できる、きっと。しかしそれはお能登さまが広げていたものとは違う、なぜ分かるかといえば色が違っていたからである。鳥はフムフムと言わんばかりの首の動きだった。
「委細承知した。しかし、のっぴきならない事情があってな」
のっぴきならないのは鳥がしゃべっている方だろと指さしたらきっと負けなんだろうな、と思って堪えていると、
「その前にお能登殿、そちらの人間は一体?」
「手前が当地で賄われている指南役でございます」
お能登さまが鳥に解説。そうか。こんな林の中、しかも珍獣中の珍獣。嗜好品が人肉だったとしたら、格好の材料がいるわけだ。追従。お能登さまはこの鳥がしゃべれることを、その上、文字を読めると知っていたのだろう。そうでなければ巻き物を献上はしまい。巻き物に何が書かれてあったかは知れないが、無表記ならば差し出すはずはないから、何かが文字でなくても記号でも書かれてあったはずだから、それを認識できる能力があるのは間違いない。だから、それは翻ってもう本当に今さらながらお能登さまはいったい何者なのかを興味を持たざるを得ない。てっとり早くこの状況を飲み込むために巫女か霊能力者だと断定(仮)にしておこう。さらに付け加えるのなら、この鳥が人を食う生物ではないと了解しているから、こう落ち着き払って俺を紹介しているのだろう。まさに何が起きても知らんと言われたのはこういうことだったことか。またしても追記。ということは、この鳥は、お能登さまに巻き物を渡した誰それが何者かを知っている、または巻き物の表記の伝達――それがお願いなのか、要求なのか、単なるお知らせなのかは知れないが――がただのネットニュースではなく、ご自身に関わる内容でスルーできるものではないと事前前提的相互了解が共有されているということである。でなければ、「委細承知」なんて言葉にはならないからである。ようやく落ち着いた。そのおかげか、そのせいかお能登さまが紹介した俺ってのは一言に還元すれば執事または家政婦である、あるいは兼務か。お能登さまもお能登さまだ。一瞬で尊重されるレベルの役職内容をつらつらと言えたものだ。とはいえ紹介された以上、
「初めまして、羽場志朗です」
入学直後のクラスでの自己紹介級で頭を下げた、鳥に。
「よかろう。控えておれ」
渋い声で同席を認められ、さらには余計な口を挟まないよう命令をされた、鳥に。
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