第26話 ソフィー登場

太郎を「狙う」日本人女性たちにとって、目を疑う事態が発生した。

それは国会議員枝村志桜里事件が終わった、数日後のことだった。


久我古書店に、輝くブロンドの髪、透き通るような青い目、妖精のような愛らしい顔、しかも美乳、美尻、美脚まで完備した若いヨーロッパ系の女性が入って来たのである。


「太郎さん、いますか?」(美しい日本語だった)


太郎は、本当に、にこやかに(今まで見せたことのないような笑顔で)、椅子から立ち上がった。

(その声も弾んだ)


「ソフィー!」


そして「ソフィー」と呼ばれた美女は、太郎に突進。

そのまま、猛烈なハグ、当然のように、太郎の頬にキスをしている。


女子高生田中梨沙子は、目をおおった。

女子大生島倉結は、涙目になった。

図書館司書岡田葉子は、その口をポカンと開けたまま、固まった。

編集者西島洋子は唇をブルブル震わせて、声が出ない。


すると、久我不動産の太郎付き秘書伊藤彩音と、看護師山田美鈴が、「怒り顔」で、久我古書店に入って来た。


伊藤彩音は、声も機嫌が悪い。

「社長、説明願います」

「ほら、いつまでも抱き合わない!」


山田美鈴も同じようなもの。

「公衆の面前で何しているんです?」

「私というものが、ありながら」

(この言葉は余計らしく、全日本人女性から、睨まれている)


少し間があった。

太郎は、「ソフィー」の、お尻をポンポンと叩き、ソフィーはにっこりとハグを解除した。


太郎は説明した。

「ああ、みんなごめん」

「この人はソフィー」


(ただ、名前は全員知っている)

(説明を聞きたいのは、太郎との関係になるが、太郎は、結局もたついた)


太郎

「えーっとね・・・どう言ったらいいのか」

「まず、フランス人」

「親父の再婚相手マルグリットの娘さん」

「血統的には、ロレーヌ家の直系」

「だから、兄と妹かな」


図書館司書岡田葉子が、いち早く反応した。

「え・・・フランス王家に匹敵する家系ですよね」

「・・・ギーズ家でしたっけ」


太郎は頷いた。

「かのメアリー・スチュワートともつながっているから、現在のイギリス王室にも因縁が深い」

「フランス大使館に勤めることになって、日本に来た」

「当分は兄と妹で一緒に住む」


ソフィ―は、笑顔のまま、日本人女性を眺めている。

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