第23話 太郎の日常生活と災難

太郎は、締め切りには苦労しているが、金には苦労していない。

かつてのベストセラーの印税は今でも入るし、現在執筆中のエッセイの原稿料も入る。

そのうえ、久我不動産からの報酬も、かなりある。

銀行銀普通預金口座には、常に3億程度の残高がある。

(3億を越えれば自動的に定期預金にしている)

問題があるとすれば、久我古書店からの収入が(赤字ではないが)少ないこと。

しかし、太郎は生活に困っているわけではないので、全く気にしていない。


太郎は、洋服に金はかけない。

シンプルな服しか着ない。

何年も着ているセーター、ポロシャツ、Tシャツ、ジーンズ(リーバイスにこだわっている)が多い。

「ケチ」という感覚は持っていない。

「必要ない物は買わない」それだけなのである。


朝食は、ほとんど喫茶アラビカのモーニングセットA(500円)。(珈琲、サラダ、トースト)

たまにモーニングセットB(600円)(珈琲、サラダ、スクランブル、トースト)を頼む。


その後は、久我マンション群を散歩。

共有スペースの公園の整備状況を確認するための散歩である。

公園のベンチに座り、居住者が行きかう姿をそれとなく見る。

居住者が久我マンションに、何かブツブツ文句を言っていたら、すぐにメモし、対応する目的もある。


昼食は、中華妙春の日替わり定食(850円)

麻婆豆腐定食、天津飯定食、ラーメン餃子定食、肉玉野菜定食、中華丼定食、中華焼肉定食、中華焼きそば定食を出されるままに食べる。

夕食はたまに小料理屋「飛鳥」に入るが、久我マンション群の中のコンビニで弁当を買って食べる。(たまにビールを買うが、それでも千円に満たない)


午後は、久我古書店の店番。

アルバイトは使っていない。

本当は使いたいが、古書店の店番を任せられるほどの、知識を持つ人は滅多にいない。


夜の街には出かけない。

書きかけの小説もあるので、遊んでいる暇がない。



さて、そんな太郎の顏が厳しくなった。

喫茶アラビカで朝食を済ませ、久我マンション群の中央にある公園のベンチに座った時である。


立派なスーツを着た中年の男二人が、太郎の隣のベンチに座った。

そして、いきなり煙草を吸い始めたのである。

(久我マンション群の公共スペースでは禁煙)

(禁煙の看板も、各所に設置されている)

煙草を吸い、煙をまき散らしただけではない。

吸い終わった煙草をポイ捨てして、靴で踏み潰したのである。


それを見た太郎は、即座に立ちあがり、抗議した。

「ここのスペースは禁煙になっています」

「看板を見なかったのですか?」

「踏み潰した吸殻は拾って持ち帰ってください」


中年の男二人は、太郎をせせら笑った。

「何だと?この若造!」

「お前が拾えよ、おい!」

(吸殻を踏み潰した靴で、太郎のスニーカーを強く踏んだ)


太郎は、顏をさらに厳しくした。

「名刺をいただけますか?」

「しかるべき対応をあなた方の上司に求めます」

「あなたがたの一連の行動は、全て録画済みです」


中年の男二人が、フンと太郎を嘲笑った。

「名刺?見せてやるよ」

「いいか?驚くなよ」


太郎は、受け取った2枚の名刺を見て、その厳しい顔を、さらに厳しくしている。

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