第10話第 人気イラストレーター ミツコ②
太郎は、冷静な口調。
「出生率が低下し、人口も減少していくのは、わかり切っています」
「コロナ期のリモートワークも、今は昔のこと」
「人の流れも、東京一極集中傾向が続く」
「大都会は、結婚率はともかく、出生率が低いのは各国共通」
ミツコも、落ち着いて来た。
「地方は、子だくさんの家が多いようですね」
「特に農家が多い、それは聞いたことがあります」
太郎
「現代の都会に暮らす男としては、女性と暮らす理由が無い」
「食べる物は、コンビニでいつでも買える」
「女性も結婚して相手に縛られる生活は不自由、仕事の邪魔になる場合も多い」
「出産も、子供も面倒、そんな女性も多い」
山田恵美
「マッチングアプリで相手を探す人もいますが」
太郎は、否定的。
「都会に多く住む人の中には、それで恋愛して結婚する場合もある・・・程度かな」
「よほど結婚を望んでいる人と思うけど、実際には、主流になり得ない」
ミツコは嘆いた。
「男の人も女の人も結婚したがらない時代なんですね」
「確かに独身者も多いですし、自分が独身でも疎外感は無いかな」
「田舎だと恥ずかしいかもしれないけど、東京では、そんなことはない」
太郎は話題を変えた。
「性風俗も変化が見えています」
「江戸期にも、多少記録はありますが」
「大きな商家の奥様が、内緒で若い男娼を買う」
「最近は、男性ホストの性を女性が買う」
「それも高いから、女性自ら、別の男に身体を売る」
ミツコ
「AVに出る女の子も、メチャきれいですよね」
「女優さんより、きれいな子が多い」
「それと、どんどん増えているみたい」
山田恵美
「その風潮も、令和の恋愛の分析として必要ですね」
太郎
「特にホストがらみは、複雑ですね」
「ホスト遊びは、あくまでも遊びのはず」
「しかし、遊びにはまって、ホストの性が欲しくて借金漬け」
「その借金返済のために、身体を売る、売る以外に返済に結びつかない」
「ホストは極道と結びついている、その恐怖もある」
そこまで言って、少し笑った。
「難しく言い過ぎたかな」
ミツコは、微笑んだ。
「結論は、どうしましょう」
「私、わからなくなりました」
太郎は、また笑った。
「令和の全般的な傾向を言っただけです」
「個人間では、それほど変わらないと思います」
山田恵美が不安な顔を見せたのを横目に、太郎は追加した。
「人間の一生、結婚できるか,できないかを含めて、実は半分は運命で決まっているかもしれませんが」
(ミツコと山田恵美の目が、太郎の口元に集中した)
太郎は、落ち着いて続けた。
「残りの半分は、その人自身の問題と思います」
「つまり、自分に磨きをかけようとするか否か、それがとにかく肝心なところと思います」
「そうした心構えを持たなければ、人生も恋愛も、いたずらに空回りすることになる、そう考えます」
ミツコの目がパッと輝きを増した。
「うん、何か、安心しました」
太郎は、また笑った。
「古本屋です、誰かの言葉の受け売りです、池波正太郎だったかな、でも好きな言葉です」
山田恵美は、ほっと胸をなでおろしている。
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