第8話 妙子②

深く長い「交情」となった。

妙子は、うれしくて泣いた。

「女の喜び」を、太郎で味わった。


スヤスヤと寝ている太郎のきれいな胸を撫でた。

「この子がいるから生きていける」

「別れてあげない」

「この子が結婚しても、いつでも、近くにいる」


妙子が、太郎に初めて会った時は、太郎が幼稚園児。

「私は女子高生、17歳」

「太郎ちゃんは、公園のブランコから落ちて、怪我して大泣き」

「メチャクチャに泣いて可愛かった」

「膝を消毒する時も怖がって・・・笑えた」

「泣き過ぎて、私の胸で寝ちゃった」


太郎が小学校に入り、女子大生になった妙子が専属の家庭教師になった。

「太郎ちゃんのお父さんと、私の父が知り合い」

「すぐにわかった、あの大泣きした子だって」

「太郎ちゃんは、頭も良くて、教えていて楽しかった」

「女の子にもモテたから、少し妬いたな」


妙子の手は、胸から下に伸びた。

「太郎ちゃんのお父さんからお願いされて、家政婦になった」

「太郎ちゃんのお母さんが、可哀想にガンで亡くなる前から」

「太郎ちゃんのお父さんは外交官だから、ほとんど日本にはいない」

「おじい様とおばあ様も、途中から、太郎ちゃんが中学2年の頃に施設に入って」

「私も太郎ちゃんが不憫だったし、十分過ぎるほどの、お金ももらったし」


「太郎ちゃんが、私にモジモジし始めたのは、15歳の時」

「私は・・・27歳か・・・」


「太郎ちゃん、苦しそうだった」

「懸命に前を抑えているし、勉強にならない」


「悪徳かなとか、オバサン過ぎるかなとか」

「私も不安だった」

「でも、私も抑えきれなかった」

「太郎ちゃんなら、欲しかったから」


妙子は、再び太郎を横抱きにした。

「まだ寝ているし・・・」

「顔、変わらないよ、幼稚園の頃から」

「でも、大学生の時に、歴史小説で文学賞取るし」

「恋愛ものでも人気作家、大ベストセラー出して今でも売れている」

「そのうえ、古書店もできて、不動産の敏腕経営者だ」

「こんな子を抱けるなんて、女冥利に尽きる」


妙子は、太郎を抱きながら、そのまま眠ってしまった。


小鳥の声が聞こえて来て、目覚めた。

「ん・・・」

妙子は胸に違和感。

すぐにわかった。

太郎に吸われていた。

意地悪したくなったので、押し付けた。


太郎がもがいた。(妙子は、面白くて仕方ない)

しばらく押し付けてから解放した。

「負けを認める?」

つけ加えた。

「泣き虫坊や」


太郎は何も言わなかった。

負けたのは、妙子だった。

太郎の若い身体に、結局、溺れて、蕩けた。


妙子は、あまりの快感で、立ちあがれない。

太郎は、着替えて出て行ってしまった。


妙子は、泣いた。

理屈ではない。

太郎が好きで、どうしようもないだけだった。

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