第10話
奈々とプールに行く約束をした私は、去年まで着ていた水着を手に取って眺めていた。
まだ着ることはできるけれど、正直言って少し古く感じる。白地に花柄のデザインは可愛いけど、奈々と一緒にプールに行くとなると、もっと可愛い水着を着ていきたいな、とそんなことを考えていた。
その時、スマホが震え、画面を見ると奈々からメッセージが届いていた。
『せっかくプール行くし、新しい水着買いに行かない?』
奈々からの突然の提案に、私は驚きつつも嬉しくなった。まさに私も同じことを考えていたなんて、タイミングがぴったりで運命を感じてしまう。私はすぐにメッセージを打ち返す。
『私も買い替えようか悩んでたから行こう!』
『じゃあ、今日の午後にでも行こう!』
奈々はすぐに返信が帰ってきた。心が弾むような感覚に包まれ、私は急いで準備を始め、お洒落な服を選び、髪も整えながら、奈々と買い物することを想像すると胸がドキドキしてくる。
これまで何度も奈々と出かけているのに、最近は何故か特別な意味を感じてしまう。
しばらくすると奈々がうちに来て、一緒にショッピングモールへ向かう。奈々はいつものように明るい笑顔を浮かべていて、その姿を見ていると私まで自然と顔がほころんでしまう。モールの中は夏休みの買い物客で賑わっていて、賑やかな雰囲気が私たちをさらにワクワクさせてくれた。
「どのお店に行く?」
モールに到着し、奈々が私に尋ねる。モールの中は夏休みの買い物客で賑わっていて、その賑やかな雰囲気が私たちをさらにワクワクさせる。私は少し考えてから、一番近くにあった水着売り場に行くことを提案した。
私たちは並んで店内に入り、色とりどりの水着が目に飛び込んできた。明るい照明の下で、ピンクや青、黄色といった様々な色の水着が輝いている。奈々も楽しそうに水着を見て回り、すぐにいくつかの水着に目を奪われたようだった。
「ねえ、美咲、この水着とかどうかな?」
奈々が手に取ったのは淡いブルーのオフショルダービキニだった。フリルがついていて、奈々の可愛らしさを引き立てそうなデザインだと一目見て思った。まるで彼女のためにデザインされたかのようなその水着を見て私は思わず笑顔になる。
「すごい可愛くて奈々に似合いそうだね!」
私の言葉に奈々は嬉しそうに目を輝かせる。そして、「それじゃこれ試着してみようかな」と、さっそく試着室に向かった。
しばらくして奈々が試着を終えて出てくると、彼女によく似合っていて、思わず見とれてしまった。淡いブルーの生地が奈々の明るい肌に映えて、まるで雑誌のモデルみたいに見えた。
「どう?似合う?」
奈々が無邪気に尋ねてくる。その姿があまりにも可愛くて私は一瞬言葉を失った。心の中で何度も「可愛い」と叫びながらようやく声を出す。
「すごく……可愛いよ。奈々にぴったり」
私がそう言うと奈々は照れたように笑って「ありがとう、美咲」と返してくれた。彼女の笑顔は本当に素敵でその笑顔を自分だけが見ていると思うと何だか特別な気持ちになる。
「そしたら私はこの水着にしちゃおうかな。美咲は何かいいの見つかった?」
奈々の問いかけに、私は少し迷いながら、目星をつけていたシンプルなワンピースタイプの水着を手に取った。淡いピンク色で控えめなデザインが私らしいと思ったからだ。
「ん~私はこれにしようと思うんだけどどうかな?」
奈々はそれを見て少し首をかしげた。
「美咲、それも可愛いけど、もうちょっと冒険してみてもいいんじゃない?」
「冒険って…どんなの?」
私の問いかけに奈々は少し考えてから近くの棚から一着の水着を取り出した。それは黒色の少し大人びたビキニだった。普段の私なら選ばないような水着で少し戸惑ってしまった。
「例えば…こういうのとか?」
奈々が見せてくれたその水着に私は思わず目を見張った。シンプルながらもセクシーなデザインで、少し大人っぽい印象を与える。胸元には少しレースが施されていてさりげなくおしゃれな感じだ。
「え、それはちょっと…露出も多いし私には派手すぎるかな」
私がためらいながらそう言うと、奈々は笑いながら「大丈夫、大丈夫!美咲にはもっと自信を持っていいと思うよ」と言って、私を試着室に押し込んだ。
試着室で、私は奈々が選んでくれた黒いビキニを恐る恐る着てみた。鏡に映る自分の姿を見て、少し恥ずかしくなりながらもカーテンをそっと開けると、奈々が私を見てパッと笑顔を浮かべた。
「やっぱり似合ってるよ!」
奈々のその言葉に、私は顔が赤くなるのを感じた。自分では派手すぎるかなと思っていたけれど、奈々がそう言ってくれると少し安心する。
「本当に……?」
奈々は力強く頷いてくれた。
「うん!美咲、本当に似合ってる!いつもとは違う雰囲気で新鮮だよ」
その言葉に私は少しだけ自信を持てた気がした。
しかし、私自身この水着を着てプールに行くことを考えると、やっぱり少しためらってしまう。
「どうしても恥ずかしいならこっちのパレオ付きのとかは?」
そんな私の様子を見ていた奈々が、と露出の少ないパレオ付きの水着も選んでくれた。
「これなら丁度いいかも……」
私はその水着を手に取り、再び試着室に入った。パレオがあることで、少し安心感が増して気持ちが楽になった。再びカーテンを開けると、奈々が笑顔で迎えてくれた。
「それも可愛い!美咲にぴったりだね」
「ありがとう、奈々。」
その一言が心に染み渡るようで、思わず奈々の顔を見つめてしまった。
彼女の瞳が私をまっすぐ見つめているのがわかる。そんな奈々の優しさに触れるたびに、私は彼女への気持ちを抑えられなくなってしまいそうになる。
「それじゃあ、これで決定だね!」
奈々が元気よく言って、私たちはレジへ向かった。
水着を買い終えた私たちはその後、カフェで少し休憩を取りながら私たちはプールの日の計画を話し合った。
「今日買った水着着るのは、当日までのお楽しみだね」
奈々と過ごす時間はいつも楽しくて、あっという間に過ぎていく。彼女と一緒に過ごす時間が今まで以上に短く感じてしまう。
帰り道、奈々は「今日は本当に楽しかったね」と言って、私に笑顔を向けた。その笑顔を見ていると、私はやっぱり奈々が好きだと改めて思う。だけど、まだその気持ちを伝える勇気がない自分に少し歯がゆさを感じる。
次のプールの日、私は奈々にどんなふうに見えるのだろう。そんなことを考えながら、私は少しだけドキドキしていた。奈々との時間がもっと増えたらいいな、と心の中で願いながら、自分の家に帰った。
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