第9話
期末テストが終わってから夏休みに入るまでの1週間、私は奈々とほとんど毎日のように一緒に過ごしていた。
放課後にカフェでお茶をしたり、一緒に買い物に行ったり、時にはお互いの家で遊ぶこともあった。
そんな日々の中で、奈々と一緒にいる時間がこんなにも幸せだと感じることが日に日に増えていった。
朝食を終え、リビングでくつろいでいると、スマートフォンが鳴った。画面には「奈々」の名前が表示されている。私の心臓が少しだけ早くなり思わず微笑んでしまう。
「おはよう、美咲!今日は何する?」
奈々の元気な声がスマホ越しに聞こえてきて、私の頬は自然と緩んでしまう。奈々の声を聞くだけで、こんなにも嬉しい気持ちになるなんて、自分でも驚いてしまう。
「おはよう、奈々。まだ特に予定はないけど……」
「じゃあ、今日は一緒に夏休みの宿題をやらない?結構たくさんあるし、早めに片付けちゃいたくてさ」
奈々の提案に、私は少し驚いた。普段、奈々が積極的に宿題をしようと言い出すことはほとんどないからだ。でも、奈々と一緒に過ごせるならそれでいいと思い、すぐに了承することにした。
「いいよ、どこでやる?」
「うちに来てよ!美咲の教え方、分かりやすいし」
奈々の言葉に、私は少し照れながらも「わかった、じゃあ準備してそっち行くね」と答えた。奈々と一緒に過ごす時間が増えることに、内心喜びを感じていた。
私は急いで身支度を整え、奈々の家に向かった。途中、先週の奈々との映画デートを思い出していた。あの日の奈々の無邪気な笑顔や、手を握ってきた行動が、今でも頭から離れない。
(あのときの奈々、何を考えてたんだろう……)
そんなことを考えていると、あっという間に奈々の家に着いてしまった。玄関のベルを押すと、すぐに奈々が出てきた。
「美咲、いらっしゃい!」
奈々はいつものように笑顔で私を迎え入れてくれる。その明るい笑顔を見るたびに、胸が温かくなってしまう。二人でリビングに向かうと、テーブルにはすでに奈々の宿題が広げられていた。
「早速始めようか」
と声をかけると、奈々は「うん、お願い!」と言って隣に座った。奈々の隣に座ると、ほんのりとした甘い香りが漂ってきて、それだけで心臓が跳ねてしまう。
宿題を始めると、私は奈々に教えるために丁寧に解説を始めた。奈々は真剣にノートを取っているけれど、時折集中が切れているのかぼんやりと窓の外を眺めている。
その無防備な姿に私はつい笑みを浮かべてしまう。
「奈々、ここは重要なところだから、しっかり覚えておいてね」
「うん…でも、なんか難しくて」
奈々は少し困ったような顔をする。そんな顔をする奈々もまた可愛らしくて、思わず微笑んでしまう。
「じゃあ、ここが終わったら少し休憩しようか」
私が提案すると、奈々は「ほんと!?じゃあ頑張る!」と嬉しそうに返事をし、再び集中し始めた。その姿を見ていると、どうしても目が離せなくなってしまう。奈々が頑張っている姿を見るだけで、私まで幸せな気持ちになる。
しばらくして、一段落ついたところで私は「休憩にしようか」と提案した。奈々は「やったー!」と言いながら、テーブルに突っ伏してリラックスする。
そんな奈々の姿に微笑ましさを感じつつ、私はお茶を淹れるためにキッチンへ向かった。
お茶を淹れ終えて戻ってくると、奈々はソファに座り、テレビをつけてリラックスしていた。私は彼女の隣に座り、お茶を差し出すと、奈々は「ありがとう、美咲」と笑顔で受け取ってくれた。
ふとその時、彼女の耳に私が誕生日に贈った星型のピアスが輝いているのが目に入った。
「奈々、そのピアス…つけてくれてたんだね」
私が思わず言うと、奈々は少し照れくさそうに笑った。
「ピアス開けてからひと月以上たったし、そろそろ付け替えられるかなって思って今朝つけてみたんだ」
その言葉を聞いて、私は心の中でじんわりと喜びを感じた。自分が選んだものを奈々が大切にしてくれているのが嬉しくてたまらなかった。
「そっか、もう付け替えても大丈夫なんだ……私も、奈々からもらったピアス、今つけてもいい?」
私がそう言いながら自分のカバンからもらったピアスを取り出すと、奈々はニッコリと笑いながら私の方に近づいてきた。
「じゃあ、私がつけてあげる!」
奈々の提案に少しドキドキしながらも、私は奈々の方に耳を向けた。彼女の指が優しく私の耳に触れると、ほんの少しの緊張と共に、心臓が跳ねるように感じた。彼女の手はとても温かくて、その温かさがじんわりと私の耳から伝わってくる。
「痛くない?」
奈々が心配そうに聞いてくれる。その声がまた優しくて、私は思わず幸せな気持ちに包まれた。
「うん、大丈夫」
奈々が慎重にピアスをつけてくれる間、私はただ彼女の顔を見つめていた。彼女の真剣な表情と優しい手つきに、なんだか心が落ち着くと同時に、ますます奈々のことが愛おしく感じられた。
「はい、できた!」
奈々が満足げに笑いながら手を離した。鏡を見ると、私の耳には奈々からプレゼントされたムーンストーンのついたピアスがついているのが見えた。
「どうかな?似合ってる?」
私が尋ねると、奈々は満面の笑みを浮かべながら「とっても!さすが私のプレゼント!美咲にぴったりだったね」と言ってくれた。その言葉に、私は少し恥ずかしさを感じて、それを隠すように奈々から離れ机に向かった。
「さて、休憩はこれくらいにして、勉強に戻ろうか」
私がそう言って教科書を開き直すと、奈々も笑いながら頷いて私の隣に座り、再び宿題に手を付け始めた。
宿題が終わり、奈々はふと顔を上げて「ねえ、美咲。夏休み、もっといろんなところに行きたいね」と言い出した。私はその言葉にうなずき、「うん、行きたい!どこに行こうか?」と答えた。
奈々は少し考えるようにして、「プールとかどう?」と提案した。
「プール?いいね!涼しくて楽しそうだし!」
私は奈々の提案に賛成し、二人でプールに行く約束をした。奈々が楽しそうにしているのを見ると、私まで嬉しくなってしまう。
「じゃあ、近いうちに行こうね!」
奈々が嬉しそうに言うと、私も「うん、楽しみだね」と笑顔で答えた。
その日の勉強会は終わり、私は奈々の家を後にした。帰り道、私は今日の奈々との時間を思い返しながら歩いていた。奈々の笑顔や言葉が頭から離れず、心が温かく満たされていく。
(もっと奈々と一緒にいたい…)
そんなことを考えながら、家路についた。夏休みはまだ始まったばかり。これからも奈々と一緒に楽しい時間を過ごしたいと私は願っていた。
きっと楽しい夏休みになるだろう。そんな期待に胸を膨らませながら、ゆっくりと歩みを進めていった。
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