第5話
天井を見つめながら、私は静かに目を閉じた。奈々が隣にいるという事実だけで、心がざわつく。それが嬉しいのか、苦しいのか、よくわからなかった。
ただ、奈々が私に触れた瞬間から、胸の奥がずっと騒がしい。あんなにも親しい間柄なのに、奈々の存在が今夜はいつもよりも大きく感じられた。
「奈々は、本当に私のことをどう思ってるんだろう?」
ふとそんな疑問が頭に浮かぶ。奈々と私は、幼馴染であり、親友だ。長い時間を共に過ごし、どんな時でもお互いを支え合ってきた。でも、それだけじゃない。奈々と一緒にいると、心が温かくなる。
それだけでなく、最近はその温かさがどんどん強くなっているように感じる。
私が感じているこの気持ちは、きっと友達としての好きじゃない。もっと深くて、もっと特別な感情だ。奈々と一緒にいると、心が満たされる一方で、何かが締め付けられるような感覚もある。
奈々の笑顔が、自分に向けられているときだけでなく、他の誰かに向けられると嫉妬してしまう。こんな風に感じることが普通じゃないってわかっているけど止められない。
でも私が奈々に告白して、この関係が壊れてしまったら…? それが一番怖い。奈々が今まで通りに接してくれなくなったら、私はきっと耐えられないだろう。私たちの関係が変わってしまうのが怖くて、どうしても一歩を踏み出すことができない。
奈々に対して抱いているこの感情は、友達としての好きではなく、恋愛感情だと気づいてしまった今、どうすればいいのか分からない。
私がこの気持ちを伝えたら、奈々は驚くに違いない。今の関係が壊れてしまうかもしれない。これまで通りの関係でいられなくなるかもしれない。そんな不安が、私の心を押しつぶしそうになる。
でも、このまま黙っているのも辛い。私の気持ちが奈々に伝えることができないことが、こんなにも苦しいなんていままで考えもしなかった。
奈々の寝息が、静かな部屋に響いている。その音が、私の心を少しだけ和らげてくれるけど、それでも胸の奥にある重い感情は消えない。私は奈々が好きだ。でも、好きだって言えない。告白したい。でも、奈々がどう思うかが怖い。彼女が、私のことをどう思っているのかが分からないから。
もし私が告白して、奈々が「気持ち悪い」とか「友達でいられない」なんて言ったら……考えるだけで胸が張り裂けそうになる。
気づけば、私は静かに涙を流していた。目を閉じると、奈々の笑顔が浮かんで、涙が止まらなくなる。奈々が好きで、どうしようもないくらい好きで、その気持ちが私を泣かせているんだと分かる。
だけど、泣いたところで何も変わらない。奈々は私の友達で、きっとこれからも友達のままでいるべきなんだ。
「どうすればいいんだろう…」
そんなことを考えながら、私は涙を拭い、静かに息をつく。隣で眠る奈々に気づかれないように、そっと体を丸めて、心の中で自分の気持ちを抑え込む。でも、抑え込めば抑え込むほど、心の中のこの気持ちはどんどん膨らんでいくようだった。
私は奈々のことを想いながら、さらに自分自身のことを見つめ直す。この気持ちを伝えることで何が変わるのか、そして何を失うのかを考えれば考えるほど、奈々との未来がどんどん不確定なものに思えてくる。
奈々は私のことをどう思っているんだろう? 私のことをただの友達としてしか見ていないんじゃないか?
私は奈々と一緒に過ごした今日一日を思い返す。楽しくて幸せな時間だったけれど、その裏に隠れていた自分の本当の気持ちに気づいてしまったからこそ、今の私はこんなにも苦しい。奈々が好きだと気づいてしまった以上、これから奈々とどう接していけばいいのかが分からない。
だけど、告白しなければ、この苦しさからは逃れられないだろう。それでも、告白したら何が起こるのか、その結果を考えると、どうしても踏み出せない。このまま黙っていれば、奈々との関係は続くだろうけれど、それもまた私にとっては辛いことだ。
私は何度も頭の中で自問自答を繰り返す。「どうしたらいいんだろう?」その答えが見つかることはなく、ただ時間だけが過ぎていく。奈々との関係を壊したくない。でも、自分の気持ちに正直でいたい。この二つの感情がぶつかり合い、私の心はどんどん苦しさを増していく。
私はその答えを探すために、今すぐにでも奈々に気持ちを伝えたいと思う反面、怖くて踏み出せない自分がいる。このまま奈々と友達でいれば、今まで通りの関係が続くかもしれない。でも、それは本当の自分の気持ちを抑え込んでいることになる。
奈々が私を友達としてしか見ていないのなら、この気持ちを伝えるのは無意味なのかもしれない。だけど、伝えなければこの苦しさからは逃れられない。
私はそんな葛藤を抱えながら、静かに奈々の寝顔を見つめた。奈々の寝顔はとても穏やかで、その顔を見るだけで、少しだけ心が落ち着く。その落ち着きも束の間で、再び心の中に重い感情が押し寄せてくる。
結局、私はその答えを見つけることができないまま、眠りに落ちていった。奈々のことを想いながら、自分の気持ちに戸惑いながら、私は眠ることしかできなかった。
奈々のことが、好きだという気持ちを抱えたまま…。
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